説明不足が心地よい。主人公の女と男の関係がこんなにも見えてこないことにイライラさせられる。しかし、そのうちそんなことどうでもいいや、と思う。なんでも分ると安心する人がいる。そんな人をあざ笑うがごとく、なんの説明もないまま話はどんどん先に進む。
今週見た芝居はいずれも説明がくどい。というか、説明過多の芝居多すぎ。別に説明なんてなくても分るものはわかるし、分らないものはわからんやろ、と居直っても . . . 本文を読む
とても端正に作られた作品。美術が素晴らしい。この6畳の部屋から2人は一歩も出ない。少女たちはこの閉ざされた空間の中で息を潜めている。ずっと閉まることなく、最後まで開かれたままの窓。(最後で閉められ、シルエットで桜が映るのがいい)彼女はそこから見える外の世界を憧憬する。そして、そこにいた男性に恋をする。
病のため床から出ることなく暮らす妹(堺のぞみ)と、彼女の身の回りの世話をする姉(余地見空香 . . . 本文を読む
豊川悦司がオファーを受けた映画だから、どうでもいいような動物映画ではないだろう、と思って、見た。本木克英監督は前作『ゲゲゲの鬼太郎』でコケてしまったが、もともと隠れた佳作『てなもんや商社』でそのキャリアをスタートした人で、僕はいつかこの人は凄い映画を作ってくれると期待している。松竹の社員監督出身だが、気骨のある職人である。自分の考えをしっかり持って作品に取り組んでいる。
今回、このどうでもい . . . 本文を読む
2つのソロと3人によるダンスで構成された『HIDDEN PLACE』と題された作品を見ながら、指先の動きまで含めて、とても繊細で美しいことに感心した。なめらかで優雅なそのダンスはとても心地よい。大きな動きを中心にした「情景Ⅰ」は最初の舞台の端から端まで白いベールが続く場面から圧倒される。小さな動きをメーンにする「情景Ⅱ」、そして、3人3様のそれぞれのダンスを見守ることになる「情景Ⅲ」まで、30分 . . . 本文を読む
解離性人格障害を扱った作品だとわかるまでが結構長い。そして、そこがこの作品の魅力なのである。だいたいオープニングの導入部からしてとても長い。いつまでたっても芝居は始まらない。
客入れから前説まで、作、演出のはしぐちしんさんが自らする。さらには、その後には、この劇場のオーナーである関川佑一さんとのトークショーがあるのだ。最近、小劇場ではアフタートークばやりだが、ビフォアトークなんて聞いた事がな . . . 本文を読む
『欲望の翼』『恋する惑星』の頃のウォン・カーウァイが戻ってきた。何を今さら、と思わないでもないが、もう一度あの瑞々しい映像とシンプルなドラマが甦ることに感慨が湧かないわけでもない。
あれから10年以上の歳月が経つ。正直言うと、今こういう映画を見てもなんだか照れてしまう。いい年した大人が、こんな可愛い恋に悩むなんて、なんだか乗れない。恋に苦しみ、涙する。300日の旅の末に、初めてキスする。なん . . . 本文を読む
30年前の父と母の恋を息子が追体験していく。ダムの底に沈んだ今はもうない村の記憶とともに。とても叙情的な内容なのだが、それが感傷に流されるだけで、それ以上の何かを提示し切れていない。
これは一体何を描こうとした芝居なのだろうか?そんな突っ込みを入れたくなるくらいにここには何もない。テーマとかメッセージとかが必要だと言ってるのではない。そんなものなくてもいい。だが、作者の思いは伝えて欲しい。そ . . . 本文を読む
死んでしまう直前に人はその体から離れて、自分が生きていた世界を彷徨う。もちろんその姿は生きている人間には見えない。18歳の少年が主人公だ。彼は成績優秀で、親からも期待されている。しかし、彼は今まで本当の自分を一切出すことなく生きてきた。母の言うまま、これまで「いい子」できた。
そんな彼が初めて自分の意思で行動しようとした。家を出てロンドンに行く。自分のしたい生き方をする。その前日、彼は殺され . . . 本文を読む
これは凄い小説だ。馳星周の数ある作品の中でも一等凄い。こういうなんでもないドラマを通して(この状況を「なんでもない」と書いてしまう僕も凄いが)世界の深淵をしっかり見せてしまう。そんぽ切り口の見事さ。ドキドキさせられる5編である。
和解することのない父と息子の人生の終わりを描く『ちりちりと』。母と娘の悪夢の日々を描く『みゃあ、みゃあ、みゃあ』。この2編はコインの裏表である。どちらも老いた父、母 . . . 本文を読む
35歳。派遣社員。不備のあるクレジットカード申込利用者に電話をして、確認をとる。そんな仕事をしている。10数年前、恋人を寝取り行方をくらましていた姉の名前を利用者リストにみつける。なんとなく、姉に連絡をとる。
再会、和解、家族の再生。どうでもいいようなたいしたことがない、そんな小説である。話はとてもささやかだ。しかし、ここにある痛みは、こんなにも小さいからこそ胸に響く。
35年間生きてき . . . 本文を読む
小学校のクラス会。その流れで、とあるバーに集う5人の男女。28年振りの再会。今、40歳。それぞれ、人生なかばに達して、あの頃感じていた未来と現実とのギャップに戸惑いながら生きている。こんなはずではなかったと思う。しかし、半分諦めている部分もある。人生なんてこんなもの、なんてふうに。もうそれくらいの事を言ってもいいような年になってしまったということだ。
今日出席するはずだった同窓生が、ここに合 . . . 本文を読む
昨年公開された澤井信一郎監督の『蒼き狼』と比較するのは意味のないことだろうが、こんなにも接近した時期に同じ題材の映画が作られてしまうと、どうしてもその違いを指摘したくなるのが人情というものだろう。
ほとんど同じ話なのにこんなにも出来に差があるのは、彼我の力の差ではない。澤井監督が思うままに撮ったならあれはもっと凄い映画になっていたはずなのだ。今更そんな事を言っても詮無いことだがなんだか悔しい . . . 本文を読む
映画を見て久々に本気になってしまった。そこそこ面白い映画はたくさんある。それどころかかなり面白いものも多いし、感動したり、楽しめたりすることはよくある。でも、本気になってしまうことは稀だ。一瞬も見逃さない。この映画と自分は闘っている。そんな気分にさせられることはめったにない。
自分とその映画がシンクロし、反発し、そして対決する。そういう映画に出逢うと大袈裟ではなく、生きていることを実感させら . . . 本文を読む
いつも人は不安を抱えて生きている。何かが足りないと思う。自分の身近にいる人がわからないと思う。
自分の知らないところで彼(彼女)が何をしているのか、とんでもない秘密があるのではないか、なんて怖れる。しかし、そのパンドラの箱を開けてしまったなら、取り返しのないことになってしまうことも多い。 見なければよかった、知らなければよかったなんて思う。そんな気分を描く短編連作である。開けなければよかった . . . 本文を読む
くだらない中年のオヤジが、いつの間にか素敵な少年に戻っていく。リドリー・スコットが『それでも生きる子供たちへ』に続いて同じパターンの映画を作る。(もちろん内容はまるで違うが)それって一体どういう心境の変化だろうか。こういう癒し系なんてあまりに彼らしくない気もする。
少年時代を過ごしたプロブァンスの自然の中に戻り、周囲の人たちの優しさに触れ、都会での生活の中でささくれだった心が癒されていく。こ . . . 本文を読む