最初はかなりおもしろかった。小説自体はいつものよしもとばななで、なんの新味もないのだが、この優しさが好きだ。だから新しいことなんか何もいらない。いつも同じ話を、同じ語り口で見せてくれたならいい。そうすると、落ち着く。そんなふうに思いながら読んでいたのだが。
父親を事故で亡くした(と、言ってもただの事故ではなく愛人との心中である。しかも、無理心中)女性と、彼女の母親の話である。事故の後、傷心の彼女は実家から出て、ひとり暮らしを始める。大好きな下北沢で狭い部屋を借りて新しいスタートを切る。なのに、そこに母親が転がりこんで来て、2人での暮らしが始まる。そこにひとりの青年が現れる、というのもいつもの定番で、もちろん彼女は彼と恋に落ちる。だが、どうしても彼と距離をとってしまう。父親の死について彼が気になっていたことを話してくれたのが、出会いのきっかけで、どうしても、父親の面影が邪魔をする。
心地よいリズムに乗せられて読んでいたのだが、だんだん、なんだかそれが鼻についてくる。「新しいことなんかいらない」とさっき断言したばかりのくせに、このマンネリが徐々に居心地悪くなるのはなぜだ? お決まりの展開に胡坐をかいて、なんかただのルーティーンワークみたいになってくる。父親のバンド仲間の山崎さんと寝てしまう話なんか、なんとも言い難い。先に書いた爽やかな青年である新谷くんとの話なんかも、まるでとってつけたような展開になる。嘘くさいのだ。いかにも「よしもとばなな」やってます、って感じ。
最初はあんなに面白かったのに、なぜこうなるのだろうか。それはあまりに世界が小さく閉じられてしまうからなのだろう。これは予め決められた自分の世界から1歩も出ない小説なのだ。よしもとばななは、ここでセルフパロディーを書こうとしているわけではない。真面目に書いているはずだ。だが、あまりにキャパシティーが狭すぎる。破綻してもいいから、もう少し冒険をして欲しい。
父親を事故で亡くした(と、言ってもただの事故ではなく愛人との心中である。しかも、無理心中)女性と、彼女の母親の話である。事故の後、傷心の彼女は実家から出て、ひとり暮らしを始める。大好きな下北沢で狭い部屋を借りて新しいスタートを切る。なのに、そこに母親が転がりこんで来て、2人での暮らしが始まる。そこにひとりの青年が現れる、というのもいつもの定番で、もちろん彼女は彼と恋に落ちる。だが、どうしても彼と距離をとってしまう。父親の死について彼が気になっていたことを話してくれたのが、出会いのきっかけで、どうしても、父親の面影が邪魔をする。
心地よいリズムに乗せられて読んでいたのだが、だんだん、なんだかそれが鼻についてくる。「新しいことなんかいらない」とさっき断言したばかりのくせに、このマンネリが徐々に居心地悪くなるのはなぜだ? お決まりの展開に胡坐をかいて、なんかただのルーティーンワークみたいになってくる。父親のバンド仲間の山崎さんと寝てしまう話なんか、なんとも言い難い。先に書いた爽やかな青年である新谷くんとの話なんかも、まるでとってつけたような展開になる。嘘くさいのだ。いかにも「よしもとばなな」やってます、って感じ。
最初はあんなに面白かったのに、なぜこうなるのだろうか。それはあまりに世界が小さく閉じられてしまうからなのだろう。これは予め決められた自分の世界から1歩も出ない小説なのだ。よしもとばななは、ここでセルフパロディーを書こうとしているわけではない。真面目に書いているはずだ。だが、あまりにキャパシティーが狭すぎる。破綻してもいいから、もう少し冒険をして欲しい。