リンダ・ロンシュタット「ザ・ベリー・ベスト・オブ・リンダ・ロンシュタット」


 オーディオ雑誌「いい音を選ぶ」の「上質の音で聴く超・名盤100」というコーナーで紹介されているディスクを最近参考にしています。クラシック編、ジャズ編は成る程と思える選択なのですが、ロック編はうーん?という内容になっています。
 選者は6ページを使って25枚を紹介しているのですが、そのうち9枚がベスト盤というこういう企画としては面白くない選択です(始めの見開きの8枚のうち5枚がベストなので特にその印象が強い)。大好きなミュージシャンの複数ある名盤の中から1枚を選ぶのは難しいというのは分かりますが、ベスト盤連発は・・・それはないんじゃないかと思いました。

 とは言え、紹介されているベスト盤の中で懐かしくなって買ったリンダ・ロンシュタットのベスト盤を聴いてびっくりです。
 それぞれの楽器がくっきりと浮かび上がったクリアな演奏、細かなニュアンスも捉えた飛び跳ねるような音響です。以前、アーノンクールのベートーベンを聴いた際にこれまで弦と金管の大きな音に隠れていた木管も含めて全ての楽器が前面に出てきて、こういう音楽だったんだと驚いた印象に近いです。
 モトは1970年代の録音が多いのですが、最近の録音といっても通じるような高音質です。

 (デジタル)リマスターについては、技術的にどういうことが行われているのかは不知なのですが、いずれにしても以前は雑音が取り除かれた程度の印象しかなかったのですが、ビートルズの「イエロー・サブマリン・ソングトラック」のリマスター盤から、それぞれの楽器の音が磨き上げられ、音の重ね方について新たに整理された再創造だということが理解できるようになりました。特に原典がモノ録音や不十分なステレオ期の演奏だとブラッシュアップすることによる聞こえ方はまるで違うので、新譜を出すに近い芸術的なセンス、判断が必要となります。
 ボブ・ディランのように現役で頑張っている人だと(技術的な難しさは除いて)権利・許認可の点では比較的作業しやすいのでしょうが、そうではない多くの昔の録音をいかに本質的な音楽の改変なしに生まれ変わらせるのか、ファンの要請も含めて難しい問題を抱えているとは思いますが、愛好者にはプラスは多いので、どんどん過去の音楽を現代に甦らせ、我々の耳を楽しませてもらいたいと思います。

 まだまだデジタルリマスターの成果が出揃っていないので一体どこまで出来るのかよく分からないのですが、個人的にはこれまで何度も何度も聴いたアルバムなんだけど、今のCDの音はもう少しなんとかなるのかなあと思える音質の愛聴盤のデジタルリマスターを希望します。

 個人的にはとりあえず3枚、ピンク・フロイド「ザ・ウォール」、スティービー・ニックス「ベラ・ドンナ」、ブルース・スプリングスティーン「ザ・リバー」です。

 音響のことばかり書きましたが、リンダ・ロンシュタットのストレートなロック・カントリー・ポップの歌唱が大好きです。最近の方にはディズニーアニメのアラジンの主題歌「サムウェア・アウト・ゼア」でお馴染みかもしれませんが、私には「マッド・ラブ」が大好きなアルバムでした。

 始めに雑誌の選択は野暮だと書きましたが、ベスト盤だからこそのリマスターで生まれかわった優秀なディスクばかりなのかもしれません。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )