「支那そば屋 龍」(高田)

          

 地下鉄グリーンライン高田駅からすぐのところにある「支那そば屋 龍(ろん)」です。私の家からは自転車で12~13分です。看板にも書いてありますが、「大井埠頭第8バースの名物屋台」だったんだそうです。

 メニューは醤油と塩、細麺と太麺、普通(550円)と中(620円)と大(690円)があり、この組み合わせ、選択です。

 数日前に醤油、細麺、中をいただいて、なんか懐かしい屋台の味だなあと好印象だったのですが、塩、太麺を食べているお客さんが多く、シマッた人気はそっちかということで再訪したものです。

 前回の中がかなり量が多かったので今回は普通で塩、太麺です。旨いです。脂の浮いた透明の塩スープは滋味深く、麺は縮れて少し平たい太麺、ツルツルでいい感じです。チャーシューも玉子も高水準。普通でも十分な量があります。この550円という低価格設定もうれしいです。最近は何だかんだで1000円に届きそうなラーメンが多い(好みの日吉大勝軒もそうなのですが)中では貴重です。550円でこの味、この量なんだと確認しながら味わいました。

 550円は滅茶苦茶に安い訳ではないですがコストパフォーマンスのよい食べ物はインフレしがちな値段感覚のモノサシをうまくリセット、調整してくれます。香川で一杯100円の美味しい讃岐うどんを食べた時、大阪・玉造の「ヒロちゃん」で美味しいたこ焼き、塩マヨ6個を200円(→今は8個!)で食べた時などこんなに美味しいのにこれが100円、これが200円と自分の脳ミソに記憶させるように食べます。

 おやじさんは佐野実のような厳つい顔付ですが常連さんと気さくに話しをしています。私は前回、ジロッと睨まれてドキッとしましたが「麺固くない?」との確認でした。

 常連さんとの話しを聞いていると「〇〇さんは毎日食べに来る」、「息子は30才近くでボクサーだが最近は試合をやっていない」ということが分かりました。

 20年以上も大井埠頭で愛されたというのが分かるオーソドックスですがしみじみ旨いラーメン屋、いい店です。



          

 うまく表現できないのですが醤油はまさに屋台の味です。ただ、酔っ払いを相手にした平凡な屋台ラーメンではなく本格的なラーメンです。塩もいいですが醤油もいいです。



          

 営業時間を8:00~15:00と書いている雑誌もあるのですが、今は11:30~15:00、18:00~23:00のようです。




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角田光代「八日目の蝉」

               

 日本にも面白い小説を書く現代作家が多くいるのは分かるのですが、あまり手を広げると時間が足りないので、奥田英朗、桐野夏生の新作はチェックしても、それ以外の作家は話題本をたまに手に取る程度です。

 角田光代もこれまで読んだことはありませんでしたが、今月末の映画公開前に「八日目の蝉」が最近取り上げられていて、すごくいいという書評を読みました。

 本当に面白いです。不倫相手の赤ちゃんを発作的に誘拐してしまい逃亡する女性、映画のポスターに「優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした。」とあります。

 この小説の肝は、誘拐犯、逃亡犯である希和子の赤ちゃんに対する切ない想いです。健やかに育ってほしい、幸せになってほしい、一緒にいて満たされる今の幸福な時間を失いたくない・・・初めての子育て、訳の分からない赤ん坊という生き物を育てる不安とこれまで味わったことのない至福感を経験している方であれば(そうでなくても)希和子に共感、感情移入できます。それが誘拐犯、他人の子供という通常はありえない設定で綴られていきます。

 希和子は逃げ通せるのか、愛しい子供との未来は・・・。

 緻密な人物描写で説得力がありグイグイ読ませます。角田光代もいいです。これは映画も観たくなりました。




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