大友克洋「AKIRA」(全6冊)

          

 トレッサ横浜に入っているディープなサブカルチャー風書店の「ヴィレッジバンガード」で「我々の原点」、「ここで働きたいのならこれを読んで出直しな」みたいな手書きポップで紹介されていたので読んでみました。大友克洋は何十年も前に「童夢」を読んで感動した覚えがありますが、この「AKIRA」が代表作のようです。

 念の為、まず第1巻だけ購入して読み始めましたが、すぐに残りの5冊を近隣の書店やアマゾンで掻き集めることになりました。

 ストーリーをうまく説明するのは難しく面倒なので省略します。非常に精緻で緊迫感あふれる作画に魅了されます。前半に提示された謎が少しずつ明らかになっていく展開はこの手の近未来型作品に共通しています。丁寧に読み込んでも結局、壮大な構想をまとめきれなくなって全てが解き明かされるわけでもないのは経験上、何となく分かっているので、深読みはせずにさっさとページを捲ります。上質なCG映画を観ているような楽しさがあります。

 鉄雄はどうなってしまったのか、AKIRAとは何者か、この作品はどこに向かうのか。同じようにA4版の大型漫画として売られている「風の谷のナウシカ」とどうしても比較したくなるのですが、物語の深さでは風の谷のナウシカが勝ります。しかし、作画の面ではナウシカにも匹敵する質の高さを誇ります。後半にもう少しプロットの捻り、深さがあれば、この絵も随分生きたと思います。若干の物足りなさはあります。

 それでも本来マンガは絵です。マンガでここまで出来ることを示せたのは凄いことです。

 1982年にスタートして、最終話は1990年。10年近くこのSFマンガに取り組んで、新しい世界観あるいはマンガの可能性を広げてみせた先駆者としての役割は歴史的です。

 いずれにしても手にとってからあっという間です。夢中になるノンストップマンガに出会えました。


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