大好きなクラシック音楽、本、美味しいお店、旅行などの記録です。
休日はソファの上でリラックス!
「ミカド」(奥沢)

マイナー出版社から発行されている「自由が丘の贈り物」というお店紹介本に作家のよしもとばななが「最強のカツカレー」というエッセイを寄せていて、そこで紹介されていた「ミカド」です。
「この人生であと何回あのカツカレーが食べられるかしら?と思うと切なくなるし、あんなすてきなものがあるなんて、この世は捨てたものじゃない、まだまだ生きていこう!と私は単純に思うのです。」とあります。
奥沢駅で降りて、南北に走る自由通を自由が丘とは逆の方向へ4~5分歩くと「とんかつミカド」の看板が見えてきます。
この店で素晴らしかったものが3つありました。
一つ目はご主人の気持ちいい接客です。ふくよかなよく通る声で迎えてくれます。カウンターに座ろうとすると、空いているからどうぞとテーブルを勧めてくれました。調理は息子さんらしき人に任せているようで、店内を動き回って常連風のお客さんに声を掛けています。とても居心地がいい。
二つ目は、自家製マヨネーズの味の良さです。私はオールジャンルの定食でミニサラダは不要で、トマト、レタスを義務で口に運んでいるだけですが(因みにハンバーガーのトマト、レタスも不要。とびきりハンバーガーを出したモスバーガーのセンスの良さには惚れ直しました)、大袈裟ですが生まれて初めて美味しくいただいた外食のミニサラダでした。
それは自家製マヨネーズが激ウマだからです。写真の右上にも写っていますが、ケースにどろっとした黄色いマヨネーズが入っていてそれをたっぷり混ぜました。甘くて爽やかな風味のあるものです。いつもは主食の前に片付けてしまうミニサラダを最後まで交互に食べました。
三つ目は、もちろんカツカレーです。品書きを見ると、ランチメニューの冒頭にロースかつ定食(1300円)があります。そしてお目当てのカツカレーにはヒレとロースがあり、いずれも910円です。ロースの方を注文しました。
カレーのルーは甘めのキーマカレー(通常固形)をスープ状にしたようなもの、カツは薄めの肉をさくっと揚げていて口の中で溶けるような感じです。ルー、カツ、ご飯を一緒に口にすると軽快な食感が楽しめました。
カレー単独、カツ単独であればそれほど印象に残らないかもしれませんが、セットで引き立つ食事なんだと思います。
カツカレーといえば、キッチン南海、ココイチ、ゴーゴーカレーなどで提供されるジャンクな勢いのあるものをイメージしますが、ここミカドのカツカレーはちょっと違うクリスピーな美味しさがあります。それにしてもあの自家製マヨネーズ、クセになりそうです。
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司馬遼太郎「関ヶ原」
2014年11月14日 / 本

日本にあるお城のほとんどは昭和の戦争までに焼け落ちて戦後再建したものばかり、当時の天守閣が残るいわゆる現存天守で有名なものは14~15程度、その中でも特に価値が高く国宝とされているのは、姫路城、犬山城、松本城、彦根城の4つ。そんなことを今年になってから知り、その中でも犬山城は天守からの木曽川などの眺めが絶景で外国人にも大人気と読みました。
今年の夏休みに愛知県犬山市にある犬山城に行くことを会社の人に話したところ、だったら岐阜城にも行った方がいい、ロープウエイで簡単に登れるけどあれは凄いよと聞きました。
国宝のお城では姫路城の経験があり、中の作りが当時のまま観光用の構造ではないので、階段が狭くて急だったことを覚えています。犬山城も姫路城に比べると小さいのですが、同じように木の階段が狭く急でやっぱりこれだなという感じでした。そして天守からの木曽川の眺めです。これは素晴らしい。大人気も納得です。
続いて岐阜城に向かいました。鵜飼で有名な長良川沿いにある稲葉山の山頂にあるお城で以前は稲葉山城と称されていたそうです。ロープウエイに乗るのですが、険しい急峻で難攻不落の名城と言われていたのも分かるけど、どうやって資材を運び上げたんだろう、そもそもこんな所にお城を構えて配下のもろもろとどうやって関係を持っていたのかなど呆れるような感じもしました。
ここは戦後の再建建造物なので、お城の中に入るとビルの中そのものです。近代的な階段とそのぐるりに記念品が飾られていて、あまりにもお城の雰囲気とは違います。これはちょっとです。内装はもう少し工夫できたんじゃないかと思いますが、岐阜城をこんなに高いお山の上に築いたことが驚きであり価値なのだと思います。
この城を建立したのが斎藤道三、娘を織田信長に嫁がせました。斎藤道三が歴史上の重要人物であることはなんとなく知っていたのですが、戦国モノにこれまでほとんど興味がなかったのでパスしてきました。場内のパネルで、道三は僧侶から油商人になり、最後は大名にまで出世したという経歴を読んで興味を持ちました。
そして手に取ったのが司馬遼太郎の「国盗り物語」(全4巻)です。サラリーマンの教科書ともいえる司馬遼太郎の有名小説については、私もこれまでいろいろとチャレンジはしたのですが、どうしても興味が持続しなくて100ページ以上読んだことはないと思います。
国盗り物語を読み進めたのは、何といってもあの岐阜城が建つ稲葉山の崖をロープウエイから見たからです。岐阜城の険しさに困惑する登場人物に共感できるのですんなり物語の中に入れます。やはり現場を知っていると地理・歴史は理解しやすいです。
初めて司馬遼太郎の作品を読了して、すぐに「関ヶ原」です。時間の流れからいうと、「国盗り物語」、「新太閤記」、「関ヶ原」なのですが、豊臣秀吉に関しては、私でもある程度の知識はあり、一方で関ヶ原の決戦についてはほとんど知らないこともあって、秀吉飛ばして関ヶ原です。
天下分け目の大決戦が行われた関ヶ原がどこにあるか調べると愛知県の大垣市から琵琶湖に向かう途中です。西に向かう新幹線で進行右側の窓際席に座り、名古屋を出発して暫く、名古屋市や大垣市の街並みが続くのですが、田園風景に変わってからすぐに関ヶ原クリニックという看板の後、大きな関ヶ原病院が見えます。その向こうにJR関ヶ原駅があり、そのちょっと先が、石田三成の陣地、小西行長の陣地、決戦地などがあるようです。ああここが関ヶ原なんだと眺めるのですが、そこは、東海道新幹線でずっと窓に広がる風景と同じで、日本の田舎の風景です。
豊臣秀吉亡き後の徳川家康と石田三成の覇権争い。慶長5年9月15日の決戦に向けて徐々に盛り上がっていく。物語は本当に面白くて一読の価値あり(今更ですが)ということで省略させてもらいますが、数多の人物像を丁寧に描き分けるところはトルストイの「戦争と平和」を、歴史上本当にこんなことがあったの?という驚きではコリンズ&ラピエールの「パリは燃えているか?」を彷彿とさせます。これぞ本を読む喜びです。「関ヶ原」、「戦争と平和」、「パリは燃えているか?」はいずれも戦争ものですが、こういう極限状態に人間の真の姿が現れるのかもしれません。
要所要所に史実を織り込みながら、最終的には作者のフィクション、歴史小説です。徳川家康の度量の大きさをじっくりと示し、肝心な局面での石田三成の不器用さ、力量不足を痛切に指摘しながらも、最後は三成の義に殉ずる姿の美しさを称えているように読めます。
多様な人間模様、大名達の狡賢いしたたかさ、どう転ぶか分からない運命。ここらへんの匙加減が絶妙でした。続きが読みたくなり、次は、大阪冬の陣・夏の陣を描いた「城塞」です。
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