クアトロウは中華料理が好きだ。中華料理といってもラーメン店以外の中華料理店のことだ。クアトロウは中華料理店の料理とワインを合わせたいと常々思っているが、中々成功しない。というよりも、中華料理店でワインを置いている店は少ない。やはり中華料理では紹興酒である。この紹興酒は中華料理には実によく合う。クアトロウも中華料理の濃厚な味付けには紹興酒だと実際思っている。たまに、中華料理店でワインを置いてあっても、チリやアルゼンチンのカベルネと相場が決まっている。クアトロウはそこが不満だった。ワインと中華の歩み寄りを妨げる選択に思われる。「紹興酒にしておけば良いのに、ワインを飲むならこってりとした味のワインにしておきなよ」といった店主の声が聞こえそうなのだ。「ワインにうちの料理を合わせようとは思っていないよ」と云っているようにも聞こえる。
クアトロウは中華料理店のワインに期待しないでいたある日、若手シェフによる中華料理店でジンファンデルを置いてあるのを見つけた。これは面白いかもと思ったクアトロウは試してみた。ジンファンデルの濃厚な果実味とスパイスを程よく使った中華は絶妙だった。新たな可能性を見つけたクアトロウは久々に満足である。