取調官の執拗な質問が続く
「奥さん、初めてクアトロに行ったのはいつごろですか」
「はい、友人に勧められて、確か昨年の夏の終わりだったと思います、その時の片品村産トウモロコシのペペロンチーニがとても美味しくて、それからはパスタはクアトロでなくてはだめになってしまいました」
「うむ、よくあるパターンのようですな、それで最近はどうなんです」
「はい、やっとトウモロコシのペペロンチーニが今年も食べられるようになって、それからサンマルツァーノのパスタも今の 内に食べなくてはと思い日曜に出かけてしまいました」
「パスタだけでは満足できなかったのかね」
「はい、売人のクアトロの父が小さな声で、これはイタリアでも手に入りづらいとか、もうあまり手持ちがないとかいうもので」
「それで、あの白い塊に手を出したというのかね」
「はい、それに口にしてみると、それはもう美味しくてとても気分がよくなってしまいました」
「そうか、テネリというデザートの魔力には勝てなかったという訳ですな」
「はい、そのとおりです、間違いありません」
遂に、前面自供をする容疑者Xであった。
水牛のミルクの乳固形分を凝縮させたリコッタチーズが問題の白い塊“テネリ”である。クアトロでは、これにハチミツかメイプルシロップで味付けをしてデザートとして秘かに販売されている。あなたも新たな犠牲者にならないように気をつけよう。