想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

カメの焚き火

2009-03-17 14:07:09 | Weblog

  数十年間、住む人はおろか手入れをする人もいなかった
  この谷間の森で、木々は上へ上へと伸び太い幹は少ない。
  ひょろひょろと伸び、上の方で枝を広げている。
  大風が年じゅう吹いているから、枝もなべて細い。

  ところがその根っこときたら、地上の姿からは想像も
  つかないほど深くじょうぶで太いのであった。
  間伐した丸太は積み上げて乾かすが、根の処理は
  粗大ごみ同然で始末におえない感じである。
  ではそれをどうしているか? 
  


  カメは火を扱うのも、うまい。
  あちこちに根が放置してあるが、考えあってのことだ。
  土が雨に流され根がしだいに乾き燃えやすくなるまで2,3年は
  かかる。太い部分をあらかじめ割っておき、ほどよい長さに
  してから熾きている火へ放り込む。
  根は、延々と燃える。

  カメは燃え尽きるまで火を監視し、後始末をする。
  ていねいである。
  辛抱強いのである。

  だが、それだけではないところがカメのカメたるゆえんである。
  カメは森の生き物や彼女と話しているらしい。
  じっとして、一服やりながら、頭上でさえずる鳥や地を這う
  ねずみたちの声。カメを避けて先を急ぐ蛇もちょっと止まり
  雪解け水が音をたてるせせらぎとともに、生きるものの音を
  聴いているのである。

  彼女の声はもちろん一番大きく聴こえているらしい。


      (森の魔女シマコ女王、しのび足)
コメント
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