心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

65歳の夏

2015-08-15 22:24:44 | Weblog

 おととい、孫君を連れて近所の公園に行きました。彼らがボール遊びをしているのを日陰のベンチに座って眺めながら、ツクツクボウシの鳴き声を聞いて、ふと思いました。この夏ゼミの鳴き声を、田舎の離れのひんやりした座敷の上でお昼寝をしながら聞いた記憶があります。夏休みの昼下がり、お勉強をしながら聞いたことがあります。お盆に、和尚さんの読経の中で聞いたことがあります。友人と木陰のベンチで聞いたことがあります。何年、何十年経っても夏ゼミの鳴き声は同じです。変わっていくのは私だけ?そんな時空間の中に私が独り佇んでいます。
 今夏、65歳になります。世間ではお年寄りの部類に入りそうですが、こういう幼稚なブログを綴っているうちは、そうでもないのでしょう。戦争体験こそないけれども、高度経済成長とともに反発したり同調したりして生きてきた世代です。
 この夏は、12日からお盆休みをいただいています。ゴンタ爺さんのお世話があって、今年も遠出は控えました。早朝と夕方のお散歩に時間をかけてお供します。それでもあれやこれやと日頃できないことをしているうちに日にちが経っていきます。まずは、先週に引き続いて、自宅にある残り3台のPCをWindows10にアップグレードしました。1台3時間ほどかかりました。オーディオ専用機として再利用している旧型のミニノートも難なく作業が終わりました。デフォルトの状態でハイレゾ音源(FLAC)再生が可能になったようなので、音質も以前に比べてさらに良くなったように思います。
 そしてきのうは、気分転換を兼ねて淡路島に鱧料理を食べに出かけました。その帰りに「あわじ花さじき」に立ち寄りました。北海道の富良野に比べると小さなものですが、それでも夏の花が咲き、遠くで牛が草を食む、そんな長閑な風景を家内と一緒にしばし眺めていました。瀬戸内海の向こうの雲の下には、ぼんやりと大阪の街が霞んで見えます。私の日常の姿を外側から眺めていると、硬直した脳みそが心地よく溶けていくような、そんな気分になりました。
 そうそう、お休みの初日12日には、梅田・阪神百貨店恒例の「中古&廃盤レコード・CDセール」に出かけてきました。催事場の一画には、骨董展や古書ノ市もやっていて、シニア世代を中心におおぜいのお客で賑わっていました。レコードの方は、1枚数万円もするレアものから350円の廉価盤まで多種多様。ジャズもあればクラシックやロックなど幅広のジャンルが勢ぞろいでした。その日手にしたのは、内田光子の「モーツアルト/ソナタ第15番、第18番」など数点。1983年10月の録音で、当時ロンドンで活躍していた内田さんは、毎週火曜日にモーツアルト・ソナタを弾いていたといいます。そんな時代の作品です。なるほど、長い演奏生活のなかで徐々に完成度を増していく演奏家の息遣いのようなものを感じました。
 この日は、古書ノ市ものぞきました。といっても京都下鴨納涼古本まつりに行く予定なので、こちらはさらっと覗く予定でしたが、ご婦人が手にされていた1冊の本が気になりました。生誕百年記念展「小林秀雄 美を求める心」です。この本、十数年前、全国各地で開催された小林秀雄展に併せて出版されたもので、ご婦人が本棚に戻すのを待って手にしました。小林秀雄が評論の対象とした絵画や骨董などの作品を彼の論評と併せて紹介してあります。世阿弥の能「当麻」について書いた作品に登場する「美しい花がある。花の美しさという様なものはない」という言葉も添えてありました。心に留めたい言葉です。
 さて、お気楽な休日もあと僅か。明日の日曜日は、京都下鴨納涼古本まつりを覗いてきましょう。ツクツクボウシが鳴く糺の森で、静かに選書を楽しみます。そして夜は、京都五山の送り火があります。

コメント