陽の光を全身で感じながらも肌には優しい微風が舞う、そんな清々しい朝に、いつもどおり不動尊までお散歩にでかけました。山門を通って本堂に参拝、そのあと奥の院を回って大師堂にお参りする、これが毎日のコースです。
時々、護摩祈祷にお参りすることもあります。今週は、大般若経転読付の特別大護摩供を興味津々で拝見しました。転読とは、1600年前に玄奘三蔵がまとめた600巻からなる経典「大般若経」を、護摩修行に併せて8名の僧侶で分割して一斉に声をあげて読誦するものです。扇を広げるかのように経典をめくり、大きな声で経題を唱える転読の風景に目を見張りました。 さて、今週は四国八十八カ所遍路の旅(第三回)に行ってきました。第十二番札所の焼山寺から第十五番札所の国分寺までの4カ寺で、最初にお参りしたのは摩廬山焼山寺でした。標高800メートルの山の上にあって、前回お参りした第十一番札所藤井寺とは約13キロメートルの距離にあります。歩き遍路では、けわしい山道を登ったり下ったりしながら、健脚の人で4時間、普通の人で6時間ほどかかるようです。私にとっては、いずれ歩き遍路をしてみたい第一候補地です。
今回はバスでお寺の駐車場まで登り、その後はしばし遠くの山並みを眺めながら坂道を登っていきました。道々に様々な仏像が立ち並んでいて、山全体がお寺のようです。小さな石段を登ってやっと大師像と仁王門にご対面です。樹齢300年以上もある杉並木をさらに進むと、目の前に本堂が現れます。例によって、手を清め、本堂、大師堂の順にお参りし、先達さんの先導で般若心経を唱えます。
ご本尊は、寅年生まれの(私の)ご本尊と言われる虚空蔵菩薩です。その昔、この山里に大蛇が棲み村人たちを苦しめていたそうです。弘法大師が山に登ろうとすると、大蛇が火を放ち大師の行く手を遮ったけれども、大師はその火を止め大蛇を山の岩穴に閉じ込めてしまったのだとか。それが焼山寺のいわれのようでした。これを信じるか信じないか........。
次に向かったのは第十三番札所大栗山大日寺でした。こちらは結構交通量のある道路をはさんで大日寺と一宮神社が向かい合っています。昔は同じ境内にあったようですが、明治政府の神仏分離政策により神社が独立し、その別当寺だったお寺は大日寺と名前をかえて残ったのだそうです。政治と宗教の難しい時代を思わせます。
こちらのご本尊は十一面観世音菩薩ですが、本堂の片隅に真っ赤な仏像がお座りになっていました。「びんずるさん」というのだそうです。聞けば、酒癖が悪く、お釈迦さまから破門されたのだと。改心して破門を解いてもらう日を待っているのだそうです。お酒好きの私にとっては他人ごとではありません。(笑)
十四番札所・誠寿山常楽寺は、岩山の上にお寺が建っています。ご本尊は八十八カ寺で唯一の弥勒菩薩です。弥勒菩薩は、お釈迦さまが入滅して56億7千万年後にこの世に現れ人々を救済するのだそうです。とてつもなく息の長いお話しですが、これを信じるか信じないか........。
本堂と大師堂の間に、大きな櫟(いちい)の木が立っていて、よく見ると分れた太い幹の間に50センチほどの小さな大師像が鎮座していました。糖尿病や眼にご利益があるとのことでした。これを信じるか信じないか........。手を合わせてお参りをしました。お遍路をするようになって、こういう民間信仰のようなお話しについつい耳を傾けてしまいます。
この日最後のお寺は第十五番札所・薬王山国分寺でした。常楽寺からの1キロほどの路を歩いていると、何組かの歩きお遍路さんに出会いました。自然と「こんにちは」と声を掛け合います。みなさんそれぞれに思いを胸に歩いていらっしゃる。途中、運悪く雨が降り出しましたが、そのまま歩き続けました。ご本尊はあらゆる病気や苦しみを癒してくれると言われる薬師如来です。
帰阪途上のバスの中で、私は小林秀雄講演録CD「信ずることと考えること」をぼんやりと聞いていました。経験科学と人間の意識(精神)の在り様についてのお話しでした。先日目を通した中沢新一先生の講演録「ものとこころの統一へ」も、脳神経科学と人のこころの関係を考えながら、物質的な「ニューロ系」と非物質的な「こころ系」をつなぎ統一しているものはなにかを問うものでした。中沢先生はさらに、数字のゼロと仏教の「空」には共通性があると言います。「ゼロの概念に基づく「もの」と「こころ」の統一をめざす未知のサイエンス(学)は、人間に真の謙虚さを取り戻そうとする試みにほかならない」ともおっしゃっています。難しすぎて頭の中が整理できていませんが、いずれ自分なりの解が見つかるんでしょう。きっと。四国遍路の旅、次回から1泊2日の行程になります。
さて、きょうはめずらしく諏訪内晶子さんのCD「Crystal」を聴きながらのブログ更新となりました。実は昨夜、フェスティバルホールで開かれた日本ライトハウス盲導犬育成支援チャリティ・コンサート「ストラディヴァリウス コンサート2016」に出かけ、その余韻が残っているからです。ヴァイオリン、ビオラ、チェロのすべてがストラディヴァリウス製という贅沢な演奏会でした。奏者のお一人だった諏訪内晶子さんのヴァイオリンは、10年ほど前にずいぶん聴きましたが、最近は少し遠ざかっていました。改めて弦楽器の良さを再認識した、そんなコンサートでした。 明日は久しぶりに京都へお勉強に出かけます。そういえば先日、大学時代のクラブの先輩からお電話をいただきました。OB会の世話役をやってくれと。これも何かのご縁なんでしょう。当面、11月の宿泊懇親会と会合の準備からお手伝いをすることにしました。