朝からうす曇り、10時近くにサイトを出て一時間足らずで次の目的地ボールスタッド(Ballstad)に着いた。キャンプサイトと言うよりパブの裏の空き地と言うのがふさわしい小さなサイト。パブのオーナーが日曜日の午後まで帰ってこないというので、隣に長期滞在しているノルゥエー人夫妻(旦那のほうはこのパブの大工仕事を請け負っているらしい。)が言ってくれた。
このサイトは桟橋がかかったフィヨルドのほとりで、魚釣りにいいかも知れない。着いたのがまだ午前中だったから、入り江の対岸まで散歩に行った。このあたりの家はきれいな高級住宅地が多く彼らの前庭が素晴らしい。いろいろ手を加えて夏の花も満開、目を楽しませてくれる。
道端のやや大きめの池の真ん中に飛び出している岩の上にかもめの赤ちゃんが2羽何となく途方にくれている。親のかもめは私たちが危害を加えるのを恐れて低空飛行で頭の上を飛び回って鳴き叫んでいる。この雛は真っ白な親とは比べ物にならないような不細工な汚れた毛糸の塊みたいで、これぞ醜いかもめの子と言う感じ、この毛玉は石ころやごみの多い海岸の中では完全な保護色でほとんど見分けがつかない。
まだ泳げも歩きも十分でないこの雛たちがどうやって池の真ん中にいるのかが判らない。たぶん親が嘴に加えて連れてきたものだろう。帰りに通った時はいなかった。
北欧で往々に見られるのがこの郵便箱、一つのストリートの全部の家の郵便受けらしい。
郵便屋さんがいちいち各家の玄関まで行かなくてもいいようになっている。これは特に雪の多い冬には良いだろう。
ちょうど干潮時、橋の上から見る海中は水がきれいで海草や、ひとでなどよく見える。こんな北の海岸できれいな彩の海中生物がいるのだと初めて知った。
道路は入り江の先端で行き止まり、そのあたりに似合わない大きな造船場があり、この地域の人達は結構裕福なのだろうと思った。たらの頭を干した干し木が並んでいる。これだけたらが少なくなってしまえば漁師も生活に困るだろう。
後ほどこの頭を何にするのか聞いたところ、乾燥した頭は粉砕粉にして食品に混ぜたり養殖魚のえさにしたりするそうだ。これぞ完全にリサイクル。
午後満潮時に桟橋の上で魚釣り、私が白身魚(ローカル名 トシュキュ)を5匹も釣り上げたのに亭主は一匹もかからないとぼやいていたら、急に3匹の鯖がいっぺんにかかって大喜び、焼き鯖一匹半、しめ鯖一匹半で今日もニコニコ。
オー(A)からキャンプサイトのあるモスケネスを通って次の町(村?)はレイネ(Reine).ここはロフォーテンでも一番美しい場所と言われロフォーテンの観光案内ブローシャーや、ポスターになっている。ここはフィヨルドの中に小さな岩山が寄り集まっていて、水際に建てられた漁師のカラフルな家と小さな島(岩)を結ぶ4つの橋から成っている。
この写真は観光ブローシャの写真と同じ場所から撮った物で、観光バスが停まる町はずれの物見台の辺りは観光客でいっぱいだった。
上空撮影の絵葉書だとこの町(村)のドラマティックな様子がよく判る。只通り過ぎただけではたくさんの橋を通ったと思うだけに過ぎない。
6年前にここを通った時は、写真を撮れるような駐車場が見つからなかったせいもあり本当に只通り過ぎただけだった。ノルゥエー政府も観光業に力を入れてきているらしい。特にこのロフォーテンのたら漁が不振のおりならこそ。
レイネを通り過ぎて険しい山すそのフィヨルドの側を走っているときに見つけた2つ並んだ橋は、この先の海岸にキャンプ場があったのを思い出した。
キャンプサイトに落着いて、ちょうど干潮時、すぐに砂浜の一部に現れている岩をめぐってウインクル(しおだめ)を袋いっぱい取った。6年前に来た時も採ってゆでて食べたのを思い出したからで、この貝は私が子供の頃の輪島や舳倉島を思い出させる。そして亭主も戦時中、日曜日の特別おやつには一パイント(550cc)のウインクルを買ってもらったとのことだった。
サイト周囲の岡は散歩にちょうどよい場所で、野の花が咲き乱れている。ここは真夜中の太陽が見られる場所だがこの日夕方から厚い雲に覆われて太陽は顔を出せなかった。けれど夜中の12時でも雨の夜であろうとも明るさは変わらず、野外の写真が写せる。