旅に出ると生活が不規則になるから便秘しやすくなる。亭主のほうは下痢しやすくなるというから食事か水の関係なのかもしれない。
キャンパーには以前からエプソムソルトという瞬下剤を常備してあるが、6週間のヨーロッパ旅行の間に使い果たしてしまった。
タヴィラに落ち着いて毎朝1000回の縄跳びをして、運動もしているが排便困難は解消しない。
とうとういつも行っているコンチネントのスーパーの隣にある薬局へ行った。若い女性がいたのでコンスティペーション(便秘)の薬をと言ったところ、ハイこれをどうぞとすぐ渡してくれた。
3日たっても状態は解消されない。薬の箱には確かにコンスティペーションと書いてあるが、薬の内容物にパラセタモル(鎮痛、解熱剤)がはいっている。
とうとうたまりかねて、英語の話せるタヴィラの町中の薬局へ行った。
買った薬を見せてこれはラクサティヴ(下剤)かと聞いたところ、老婦人の薬剤師は気の毒そうにコンスティペーションはポルトガル語ではインフルエンザ、風邪のことだ。この薬は鎮痛、解熱剤だといわれてガックリ。
同時にやっぱり・・・・、効かないわけが判った。本物の下剤を買って店を出る時、若い女性の薬剤師二人が現れ、笑いをこらえるのに苦労している様子だった。
12月半ば、南国の夕暮れはつるべ落としと言われるくらい早い。日が暮れるのは5時半から6時の間、英国の12月といえば午後3時くらいから暗くなり、雨の日など一日中暗い。
夕食の準備に取り掛かった7時頃はとっぷり日が暮れて、キャンプサイトのあちこちに設置された街灯がなければあたりは真っ暗になる。キャンパー近くのブラックスポッツは石ころと煉瓦がごろごろしていて昼間でも危ないのに、水を汲みに行ってもらった亭主が ドサッ・ギャーと叫んだ。一瞬のうちにスリッパで駆け付けた私は四肢を伸ばして転がっている亭主に、どこか骨折したところは?と聞くと鼻を・・・鼻を・・・という。暗闇でも鼻や顎から出血しているのが判りキャンパーの中に引き返して大きなタオルを濡らして顔や手に当てて出血を止める処置をした。
この日新しいフランスのキャンパーが来て電源からケーブルを曳いた、そのケーブルに足を引っかけ転倒したもので、駆けつけてきた周りのキャンパーのフランス人3組とオランダ人男性はせっせと世話してくれた。オランダ人は鼻と顎の出血が止まらないなら自分がフランス人の自家用車に乗って病院へ連れて行くと大張り切り。
引っかけたケーブルの持ち主のフランス人夫妻は大謝りで翌日も顔を合わせる度に謝っていた。周りのフランス人たちはしっかりと救護セットを持ってきて、消毒やバンドエイドをくれる。今時珍しい赤チンを貸してくれて、手やひざにべたべた塗り付けたが顔だけは亭主の拒否でやめた。
顔からスライドして倒れたそうで本人は鼻が取れてしまったと思ったそう。鼻血と鼻の中央2センチの切り傷、顎の1.5センチの切り傷からの出血が激しく起き上がった亭主は衣類も血にまみれた。もう何年もアスピリンをのんでいる亭主はほんの小さな切り傷でも出血がなかなか止まらない。両手の平も切り傷で出血が収まった夜、全部の衣類を水に浸し、血を洗い流した後洗濯機で洗うことにした。
血が収まってみると意外と小さな傷だったのだとあきれるほど、日本人なら顎か頬に傷ができるところ、鼻の大きいイギリス人ならこそ鼻から落ちるのだと変なところで感心していた。