りきる徒然草。

のんびり。ゆっくり。
「なるようになるさ」で生きてる男の徒然日記。

さよなら、ブルーコーポ横川。

2014-09-26 | Weblog
昨日、友人からこんなメールが届いた。

“今、ブルーコーポの前を通ったら、解体中だった”

ブルーコーポとは、ワタシが学生時代に暮らしていた広島のアパートの名前だ。
鉄筋コンクリートではあったが、ベランダもエレベーターもない、古いアパートだった。
正式なアパートの名前は、“ブルーコーポ横川”という。
その406号室に、ワタシは住んでいた。

初めての一人暮らし。初めての都会。
期待に胸が膨らんだが、やはり不安も大いにあったのだろう。
ブルーコーポ横川にはワタシだけでなく、同じ高校を卒業し、同じ大学に進学した同級生2人と一緒に入居した。
一人は5階に。ワタシともう一人は4階に。
そんなふうにして、ワタシたちは学生時代を過ごした。
ちなみにメールを寄越してくれた友人は、ブルーコーポ横川で一緒に暮らしていた同級生の一人である。

いろんな出来事が起こった。
いろんな人に出会った。
楽しいことも経験したし、悲しいことも経験した。
人間の優しさに触れることもあれば、人間の汚さを垣間見ることもあった。

人生で最も好奇心と行動力に溢れていた時期。
心も身体も今よりもずいぶん柔らかかった当時のワタシにとって、すべてが喜怒哀楽を刺激し、琴線に触れることばかりだった。
今のワタシの雛形はここで作られた・・・そう言っても過言ではないのかも知れない。

そんな場所が、今、失くなろうとしていた。

しかし、友人からメールが届いた段階では、実はワタシはまだ半信半疑だった。
というのも、そのメールは文章だけで、写真も何も添付されていなかったからだ。
別に、友人を信用していないわけではない。
ワタシたちが暮らしていた時点で、築10年は超えていたアパートだ。
今では優に築30年を過ぎてしまった建物がこれから先も半永久的に残るだなんて、さすがに思ってはいなかった。
でも、それでも、心のどこかで“ウソだろ?”と、その事実を認めたくないもう一人の自分がいたのかも知れない。
それはちょうど、誰かから身近な人の訃報を耳にした時の感覚に近かったような気がする。

今日の午後、友人から再びメールが届いた。
そのメールには、画像が添付されてあった。



幕で覆われているが、見覚えがある景色だった。
手前の白い壁の下がゴミ捨て場で、その奥が駐輪場。
そして、その向こうに狭く細長い、玄関があった。

20歳前後の頃のワタシは、毎日毎日、この場所を行ったり来たりしていたのだ。

・・・・そうか。
本当に取り壊されているのか・・・。

さようなら、ブルーコーポ横川。

●電子書籍wook「四〇六号室」
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コメント
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