1年前の今日、僕はでっかいケーキを予約していた。
妻のバースデーケーキだった。
子どもたちのバースデーケーキは、もう数えきれないほど買ってきたが、
妻の誕生日にバースデーケーキを買ったことなど、一度もなかったのだ。
それは、9月21日が誕生日の妻への僕なりのサプライズのつもりだった。
だが、同じ日。
そのサプライズを吹き飛ばす、本当のサプライズが、僕と妻に起こって
しまった。
長い闘病生活の末、祖母が亡くなったのだ。
本来ならば、仕事帰りにケーキ屋に寄って帰宅の時に披露するはずだった
そのバースデーケーキを、僕は永眠した祖母が待つ病院へ駆けつける前に
取りに行った。
もうケーキのサプライズどころではなかったので、病院へ直行した後、
いったん帰宅した真昼間の自宅で、仕方なくケーキを購入したことを
正直に告げ、渡した。
僕は祖母の外孫だったので喪主でも何でもなかったのだが、年齢的にも血縁的
にも最も動きやすい存在だったためか、まるで葬儀委員長のような立場になっ
てしまい、祖母が亡くなってからは途方もない慌ただしさの中で過ごずことに
なってしまった。
3日3晩、葬祭場に泊り込み、無事、祖母を天国に送った後、久しぶりに自宅
に帰った。
やっと、ゆっくりできる。
やっと、祖母を1人の孫として偲ばれる。
そして、やっと、妻の誕生日をお祝いできる。
そう思いながら帰った。
疲れた時には、甘いものが欲しくなる。
僕は何も考えずに、ケーキが食べたい旨を妻に伝えた。
しかし、ケーキは、すでになかった。
すべて食べた、とのことだった。妻と娘と息子の3人で。
しかも、初日に・・・。
今年。
祖母が亡くなって1年目の今日。
祖母の1周忌が執り行われ、僕と妻も出席した。
誕生日に喪服を着させて、1日のその大半を過ごさせてしまうことを申し訳
なく感じた僕は、今朝、祖母の家に向かう時に、妻にそのことを詫びた。
すると、妻は首を横に振りながら、昨夜見た夢のことを語りはじめた。
夢の中に、祖母が出てきたそうだ。
夢自体は他愛もないものだったらしいが、まだ元気だった頃の祖母と会話を交わ
したらしい。
両親でも孫でも曾孫でもなく、孫の嫁の中にだけ出てくるとは・・・。
生前の祖母は妻を可愛がってくれていた。まるで本当の孫のように。
妻も本当に血のつながっているかのように祖母を大切にしてくれていた。
やはり、祖母も自分の命日が妻の誕生日と同じ日になってしまったことを、申し
訳なく思っていたのだろうか・・・。
何はともあれ、妻は今日、誕生日を迎えた。
24時間だけ同い年だったが、また1歳年上になってしまった。
だから、再び今日から、僕は妻に対して敬語になる(ウソ)
今年は、ケーキは買わなかった。
またどこかで時間をみつけて、家族で食事に行ければいい・・・と妻が言った
ので、その言葉に甘えた(笑)
まぁ、何もないのでは悪いので、最後に妻が昔から贔屓にしているこのバンドの
この歌を。
誕生日、おめでとう。
・・・しかし、この歌、別れの歌じゃないの?・・・(-_-;)
スターダストレビュー「今夜だけきっと」