お義父さん。
あなたが天国へ旅立って、2ヶ月が過ぎました。
四十九日も無事終わりました。
あなたはもう川を渡っていったのでしょうか?
お義父さん。
生前のあなたは、本当に物静かな方だった。
お酒だけが好きで、自宅の居間でお酒を
傾けながら広島カープの野球中継を
テレビで見る事が唯一の生きがいのような方だった。
そんなあなただったからか、それとも僕が意気地なし
だっただけなのか、まともにあなたとお話をした事は、
本当に数えられる程度だったような気がします。
しかも、その内容も天気の話とか、カープの話とか、
景気の話とか、どうでもいいような生産性のない
上っ面の雑談ばかりだった。
今思えば・・・と、最近思います。
まるで、お互い、何かを牽制しあっていたのかな?と。。。
お義父さん、憶えていますか?
僕が初めてあなたの前に現れた日のことを。
あれは12年前の冬の日曜日だった。
まだつき合いだして間もなかったあなたの娘さんと、
僕は午後からデートの約束をしていた。
家に迎えに来た僕は、玄関の前であなたとバッタリ遭遇した。
玄関に立つあなたが自分の彼女の父親だということは、
別に直感が働かなくてもすぐに分かりました。
「あ、初めまして・・・◯◯です」
僕はハッキリと自分の名前を言ったつもりだったが、
今思うと、その声は少し震えていたような気がします。
「お前が、◯◯か!?よくも、まぁ、平然と家に来れたのう!!帰れっ!!!」
・・・と言われるかと思っていました。
しかしあなたは、僕の名前を聞いたとたん、思いっきり相好を崩し、
「ああ、これは、どうも、どうも、いやぁ、はははは・・・」と、
言葉にならない声を出して、玄関から娘さんを大声で呼んでくださった。
あの時、僕は全身の力が抜けました(笑)
僕と彼女は、順風満帆につき合いはじめたわけではなかった。
あなたの娘は、別の場所にあった“幸せの扉”を開けようとしていたのに、
言わば、僕はその直前に無理矢理彼女の手を握ってその扉の前から
強引に彼女を奪ったようなものだった。
あの時、僕が初めてあなたの前に現れた時、お義父さん、あなたは
本当に心の中まで相好を崩して僕を歓迎してくれていたのでしょうか?
せっかく娘が幸せになれそうだったのに、それをぶち壊した男と玄関の前で
鉢合わせた時のあなたの本心。。。。
いつか、そのことを、僕は尋ねたかった。
それから9ヶ月後、僕はあなたの娘さんと結婚しました。
その間も、あなたは僕らが進める結婚式にも披露宴にも新居への引っ越しにも、
何もいっさい口出しはしなかった。
いつも家にお邪魔しても、「おお、いらっしゃい」と言うと、
すぐにお酒を片手にTVのプロ野球中継に目をやった。
やっぱり、嫌われてるのかな。。。。
実は、あの頃、僕はあなた対してそう思っていたんです。
あれは結婚して2ヶ月が過ぎた頃でした。
妻の実家で夕食をご馳走になっていた時のことです。
カープが勝ったのか、それとも単にお酒を呑み過ぎたのか、
今では分からないけど、なぜかあなたは上機嫌だった。
いつもとは別人のように饒舌で、昔の写真や古い雑貨を
頼んでもないのに色々と見せてくれた。
そして、あなたはある物を僕に譲ってくれたんです。
それがこの時計だった↑
「◯◯君は、腕時計が好きなんじゃろ?これをやるけん」と、
酔っぱらったまっ赤な顔で、あなたは僕にそう言った。
今だから言いますね。
あの時、僕は、本当は今にも泣き出しそうなほど嬉しかった。
あの時初めて、僕はお義父さんに、妻との結婚を許されたような気がしたんです。
いただいた腕時計は、間違っても高級な時計じゃなかった。
古い、何十年も前の手巻きの腕時計だった。
でも、そんなことはどうでもよかった。
あなたが、僕に何十年も大切にしていた腕時計を、嬉しそうな顔で僕に
譲ってくれたことが何よりも嬉しかったんです。
あまりの嬉しさに、僕は何度もあなたに礼を言い、そしてお義父さんと同じくらい
酒に酔っていた僕は、調子に乗って
「お義父さんに“もしも”の事があったら、お義父さんの腕時計は僕が全部いただきますね」と
思わず口走ってしまった。
もちろんジョークのつもりだったし、その場にいた妻や義母も、僕のその言葉に明るい声で
笑った。
だけど、それがまさか、こんなに早く現実になるだなんて。。。。。。
葬儀の日、僕はあなたから譲ってもらった腕時計をして葬儀に出席しました。
数十年も前の時計のはずなのに、あの日、あの腕時計は、1秒たりとも止まったり
遅れたりしませんでしたよ。
そしてこの前の日曜日、家に行った時、お義父さんの腕時計が仕舞ってあった引き出しを
開けさせていただきました。
ものすごい数のアンティークの腕時計がありました。
正直、驚きました。
お義母さんが、「約束じゃけぇ、好きなのを持って帰りんさい」と少し寂しげに言われたのが、
今でも鼓膜に焼き付いています。
僕は、数多の腕時計の中から、2ついただくことにしました。
ひとつは SEIKOの、たぶん50年ほど前の小さな腕時計。
もうひとつは、しっかりとした男らしいデザインの腕時計。
ただし、両方ともベルトが劣化していたので、昨日、新しいベルトに交換しました。
それが一番上の写真です。
どうです?お義父さん。
見違えるようになったでしょう(笑)
革ベルトは、服とのコーディネイトが難しいし、どちらかというと、季節的には
秋冬にする方が似合うと思うので、出番はもう少し先になりそうです。
だから夏が終わって、長袖の季節になったら、いっぱい使わせてもらいますね。
欲を言えばキリがないけど、こんなに早くさよならするのならば、
もっともっと、あなたと話をしておけばよかった。
親子として、男同士として、夫同士として、そして同じ“愛娘”を持つ親として。。。
それだけが、今でも悔やんでも悔やみきれません。
今、僕が言える事はただひとつだけ。
お義父さん、ありがとう。
前にも書いたけど、天国からあなたの最愛のお義母さんや、可愛くて仕方がなかった孫たちを、
これからも見守ってください。
僕らも、時間があれば空を見上げますから。。。。
じゃあ、お義父さん、また。。。。
あなたが天国へ旅立って、2ヶ月が過ぎました。
四十九日も無事終わりました。
あなたはもう川を渡っていったのでしょうか?
お義父さん。
生前のあなたは、本当に物静かな方だった。
お酒だけが好きで、自宅の居間でお酒を
傾けながら広島カープの野球中継を
テレビで見る事が唯一の生きがいのような方だった。
そんなあなただったからか、それとも僕が意気地なし
だっただけなのか、まともにあなたとお話をした事は、
本当に数えられる程度だったような気がします。
しかも、その内容も天気の話とか、カープの話とか、
景気の話とか、どうでもいいような生産性のない
上っ面の雑談ばかりだった。
今思えば・・・と、最近思います。
まるで、お互い、何かを牽制しあっていたのかな?と。。。
お義父さん、憶えていますか?
僕が初めてあなたの前に現れた日のことを。
あれは12年前の冬の日曜日だった。
まだつき合いだして間もなかったあなたの娘さんと、
僕は午後からデートの約束をしていた。
家に迎えに来た僕は、玄関の前であなたとバッタリ遭遇した。
玄関に立つあなたが自分の彼女の父親だということは、
別に直感が働かなくてもすぐに分かりました。
「あ、初めまして・・・◯◯です」
僕はハッキリと自分の名前を言ったつもりだったが、
今思うと、その声は少し震えていたような気がします。
「お前が、◯◯か!?よくも、まぁ、平然と家に来れたのう!!帰れっ!!!」
・・・と言われるかと思っていました。
しかしあなたは、僕の名前を聞いたとたん、思いっきり相好を崩し、
「ああ、これは、どうも、どうも、いやぁ、はははは・・・」と、
言葉にならない声を出して、玄関から娘さんを大声で呼んでくださった。
あの時、僕は全身の力が抜けました(笑)
僕と彼女は、順風満帆につき合いはじめたわけではなかった。
あなたの娘は、別の場所にあった“幸せの扉”を開けようとしていたのに、
言わば、僕はその直前に無理矢理彼女の手を握ってその扉の前から
強引に彼女を奪ったようなものだった。
あの時、僕が初めてあなたの前に現れた時、お義父さん、あなたは
本当に心の中まで相好を崩して僕を歓迎してくれていたのでしょうか?
せっかく娘が幸せになれそうだったのに、それをぶち壊した男と玄関の前で
鉢合わせた時のあなたの本心。。。。
いつか、そのことを、僕は尋ねたかった。
それから9ヶ月後、僕はあなたの娘さんと結婚しました。
その間も、あなたは僕らが進める結婚式にも披露宴にも新居への引っ越しにも、
何もいっさい口出しはしなかった。
いつも家にお邪魔しても、「おお、いらっしゃい」と言うと、
すぐにお酒を片手にTVのプロ野球中継に目をやった。
やっぱり、嫌われてるのかな。。。。
実は、あの頃、僕はあなた対してそう思っていたんです。
あれは結婚して2ヶ月が過ぎた頃でした。
妻の実家で夕食をご馳走になっていた時のことです。
カープが勝ったのか、それとも単にお酒を呑み過ぎたのか、
今では分からないけど、なぜかあなたは上機嫌だった。
いつもとは別人のように饒舌で、昔の写真や古い雑貨を
頼んでもないのに色々と見せてくれた。
そして、あなたはある物を僕に譲ってくれたんです。
それがこの時計だった↑
「◯◯君は、腕時計が好きなんじゃろ?これをやるけん」と、
酔っぱらったまっ赤な顔で、あなたは僕にそう言った。
今だから言いますね。
あの時、僕は、本当は今にも泣き出しそうなほど嬉しかった。
あの時初めて、僕はお義父さんに、妻との結婚を許されたような気がしたんです。
いただいた腕時計は、間違っても高級な時計じゃなかった。
古い、何十年も前の手巻きの腕時計だった。
でも、そんなことはどうでもよかった。
あなたが、僕に何十年も大切にしていた腕時計を、嬉しそうな顔で僕に
譲ってくれたことが何よりも嬉しかったんです。
あまりの嬉しさに、僕は何度もあなたに礼を言い、そしてお義父さんと同じくらい
酒に酔っていた僕は、調子に乗って
「お義父さんに“もしも”の事があったら、お義父さんの腕時計は僕が全部いただきますね」と
思わず口走ってしまった。
もちろんジョークのつもりだったし、その場にいた妻や義母も、僕のその言葉に明るい声で
笑った。
だけど、それがまさか、こんなに早く現実になるだなんて。。。。。。
葬儀の日、僕はあなたから譲ってもらった腕時計をして葬儀に出席しました。
数十年も前の時計のはずなのに、あの日、あの腕時計は、1秒たりとも止まったり
遅れたりしませんでしたよ。
そしてこの前の日曜日、家に行った時、お義父さんの腕時計が仕舞ってあった引き出しを
開けさせていただきました。
ものすごい数のアンティークの腕時計がありました。
正直、驚きました。
お義母さんが、「約束じゃけぇ、好きなのを持って帰りんさい」と少し寂しげに言われたのが、
今でも鼓膜に焼き付いています。
僕は、数多の腕時計の中から、2ついただくことにしました。
ひとつは SEIKOの、たぶん50年ほど前の小さな腕時計。
もうひとつは、しっかりとした男らしいデザインの腕時計。
ただし、両方ともベルトが劣化していたので、昨日、新しいベルトに交換しました。
それが一番上の写真です。
どうです?お義父さん。
見違えるようになったでしょう(笑)
革ベルトは、服とのコーディネイトが難しいし、どちらかというと、季節的には
秋冬にする方が似合うと思うので、出番はもう少し先になりそうです。
だから夏が終わって、長袖の季節になったら、いっぱい使わせてもらいますね。
欲を言えばキリがないけど、こんなに早くさよならするのならば、
もっともっと、あなたと話をしておけばよかった。
親子として、男同士として、夫同士として、そして同じ“愛娘”を持つ親として。。。
それだけが、今でも悔やんでも悔やみきれません。
今、僕が言える事はただひとつだけ。
お義父さん、ありがとう。
前にも書いたけど、天国からあなたの最愛のお義母さんや、可愛くて仕方がなかった孫たちを、
これからも見守ってください。
僕らも、時間があれば空を見上げますから。。。。
じゃあ、お義父さん、また。。。。