いばら姫
19世紀後半のイギリスに花開いたラファエル前派、バーン・ジョーンズの時代。
神話や物語をモチーフに、ロマンチックで装飾的な絵を精緻な筆遣いで描きあげた。
しっとりとしながら華麗で硬質な絵肌は、無色透明な樹脂に閉じ込められたバラの花のよう。
色褪せることも枯れることもないが、手で触れることはもちろんできない、永遠の平行線が横たわるのだ。
彼は、次々と枯れない薔薇を作り出す。
それは、ステンドグラスやタペストリー、タイルの絵柄やジュエリーデザイン、舞台衣装などと幅広く、いたるところに枯れない薔薇を咲かせた。
樹脂に守られた枯れない薔薇だけれど、甘くそれでいて涼やかな芳香を放っているように感じるのは錯覚か。
バーン・ジョーンズは、その秘密の製法を持って、地下深く眠りについている。
そこには、熱くない太陽が輝いて、秘密の製法で作られた花々が、微かに香りを放っているのだろう。
あたかも、シルバーグレーのローブを纏ったバーン・ジョーンズの手から、ほろりほろりと生まれ出でるかのように。
黄金の階段