ねこ訴え病院へ行く

今朝、外に出た私を追ってきて、猫は訴えた。
「にゃあおわん」
ここしばらく、ねこは口の辺りに何か異常があるらしく、調子が悪かった。
魚の骨が刺さったのだろうと様子を見ていたけれど、一向に元に戻る気配もなく、昨日は家族と猫を病院に連れて行こうと相談していた矢先であった。
その前にも何度かねこに向かって、調子が良くないなら病院へ行くかと話しかけていたから、きっと何かを感じていたのだろうとも思う。
我が家にはキャリーバッグなるものはないので、ぼろきれを入れた頑丈そうな大き目の段ボール箱にねこを入れ、自動車の中で暴れないようにしっかりとガムテープで蓋をして病院へ向かう。
自動車のエンジン音と振動、そして真っ暗な段ボール箱の中で不安気に鳴くねこをなだめるために、ずっと話し掛けた。
病院に着き、診察室に入って蓋を開けると怯えるねこの顔がある。
獣医は、粗目の洗濯ネットにねこを入れて診察開始。
意外に落ち着いているねこは、観念している様子だ。
奥歯の歯槽膿漏、まだ根っこがしっかりとしていて簡単に抜けそうもなく、高齢のために麻酔をするとショック死する可能性が高いので、消炎剤に抗生剤と栄養剤を注射して様子をみることになる。
診察室でも、帰りのダンボールの中でもおとなしいねこ。
家に着いて箱から出すと、ねこはほっとした様子で家族に囲まれ、芝の上に座っている。
怖い思いをさせた私を微塵も恨んでいるようではなく、むしろ感謝しているのか、庭を掃除する私の後をずっと追いかけてついて来ていた。
薬が効いてからは、歯槽膿漏の部分の厭わしさが薄れたようで、暖かく気持ちの良い芝の上で眠り込んでいる姿にほっとする。
良かった、これで炎症が治まればなおさらいいのけれど、１４歳のねこだから、完全な健康体でいられる時期ではないのだ。
私もねこも、確実に忍び寄る老いと向き合って、自分の体と付き合って行かなくてはならない。
私も歯の調子が思わしくない、ねこの気持ちは痛いほど分かるつもりであるよ。