The ghost of a flea
この絵の醸し出す雰囲気は、私の記憶の奥深くにくい込んでいる何かだ。
幼児期に見た、裸電球に照らされた薄暗い木の天井、冷たくて重い木綿の布団、薄暗い部屋の隅に蠢く鼠、あるいは得体の知れないもの。
神様が見えると言われた、数珠に連なる玉の一つの覗き穴を必死に凝視して、その奥へ行きたいと願った切ない気持ち。
そうだ、これに似た感覚をもたらすのもをしっている、ギレルモ・デル・トロ監督の映画「パンズ・ラビリンス」だ。
とても美しい映像で作られたこの映画は、牧神パンがなんとも怪異な造形で表現され、すでにここからダークファンタジーの様相を前面に出してきている。
あまりにも痛く暗い内容と、神経をヒリヒリと刺激するような映像だったので、最後まで見ることができていない。
しかし、それだからこそ見たところの映像はくっきりと私に入り込んで、思いがけないときにフラッシュバックされることがある。
ブレイクの、魂の奥を探るようなこれらの作品に、どうしようもなく惹かれ続ける。
それが、美しく癒しをもたらすものもあれば、鬱屈とした闇を露呈させるものも、ふり幅はとても広い。
なかなかブレイクだけの展覧会が催されることはないと思うのだけれど、あまり広すぎない会場で、できれば、東京ステーションギャラリーなどで企画して欲しいものだ。
数年前、ジャン・フォートリエ展があり、とても見たかったのだが、どうしても都合がつかなく悔やまれた。
展覧会は、その絵の雰囲気に即した会場で催すべきだと思っている。
それはとても大事なことだ。
ただ並べ展示するなど、その作品敬意も愛情も持ち合わせてない無粋な輩のすることではないだろうか。
このところの私は、ブレイクに倣いインナーワールドへの趣向が増してきたように思う。