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中くらいの人の夏が終わった

2013-07-24 23:51:39 | 随想たち
根っからのスポーツマンとは言いがたいが、そこそこに恵まれた体躯のおかげで、中くらいの人は二つの夢を見られた。
一つは、大きな大会に走り幅跳びの選手として出場できたこと。
二つ目は、部活動でも大きな大会に出場し、プレーが出来たこと。
両方とも、そこで夢破れたが、個人技とチームプレーの二つの世界で得がたい経験を積めた。

中学生になり入った運動部の練習は、中くらいの人の貧弱な体力には相当きついものがあったようだ。
しかし、中くらいの人は、自分の意思で歯を食いしばり休むことなく練習に参加する。
大きな体という資産だけで、どうにか乗り切った観は否めないけれど、時間が経つごとにスポーツマンらしく成長する様は、見ていて感心するものだった。
初めての厳しい夏の練習を超えて、二年生になる頃には、陸上競技に頭角を現すようになり、狭い地域だが競技会に出場できるまでになる。
そうすると欲が出るもので、自主的なトレーニングを行いながら、来年の夢を描くのだ。
三年生では、地域の走り幅跳びで一位という躍進を遂げるも、大舞台では体調不良などの不運もあって、自ら掲げた目標に及ばず、彼の一つの夏が終わった。
ついで、部活動では、チームメイトと共に大会への切符をやっとの思いで手にし大会に臨むも、力尽きてしまう。
またもう一つの夏が終わったのだ。
これも、掲げていた目標に届かなかったので、彼の悔しさは限界に達し、無念と懸けていたものが終わった喪失感が彼を襲い、止め処ない涙をこぼさせた。
傍らで見ている者は、その、いかにも青春然とした清い涙に、胸を打たれずにはいられない。
まだ日も浅いから、すっかり立ち直ってはいないけれど、友人達に支えられて気持ちの整理をつけるだろう。

たかだか二年半のことだが、中学校のこの部活動というもの、人間形成においてやっておくべきことなのかもしれない。
辛いこと、いやなこと、面倒なこと、それらと面と向かい逃げずに立ち向かうことで、自分の心も持っていき方を掴むことが出来るようになろう。
運動部ならば、体力もつく。
自分には、部活動の経験がないので、中くらいの人を見ながら部活動についていろいろと考えることがあったのだ。
ただ、部活動が土日も組み込まれていると、体力回復や気持ちの切り替えなどする余裕がないところに、いささかの不満と疑問が残る。
社会人になれば、否応無に時間に追いまくられてしまう場合が多いのだから、中学生のときぐらい予定に追われない生活をすることも必要だと思うのだ。

ともかくも、中くらいの人の夏は終わった。
この夏が彼に及ぼした影響は計り知れない。
終生、忘れがたい夏であることは間違いないといえよう。







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