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球体関節人形
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ハンス・ベルメールは、20世紀ドイツ出身のアーティスト。
そのポルノ的作風に、眉根を寄せる方々も多かろう。
しかし、人間の持つ貪欲かつ醜悪な性的趣向を煽情するために、彼は作品を作り続けたわけではないはずだ。
完璧なまでのバランス感覚で吟味された線と丁寧な仕上げにこだわった人形たちからは、邪念の入り込む余地など見られない。
むしろ、徹底的にエロスを暴き視覚化して曝け出し、畳み掛けることによって、見るものの邪な考えを糾弾していくように思える。
彼はニヒリストに陥ることのない、深い愛のあるアイロニストなのかもしれない。
20世紀前半の狂気の時代、ナチズムを真っ向から否定することのできたものは少なかった。
ある意味、彼の愛という内なる狂気があったからこそ、時代に流されないでいられたともいえよう。
いま、経済という欲望のリミッターを外す麻薬によって、世界各地で人のモラルの低下が著しい。
この時代、ベルメールの作品のアイロニーは、通じるのであろうか。
ニヒリストの自分には、最早手遅れの気がしてならない。
なお、ここに挙げた彼の作品は、非常にソフトなものである。
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