大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE滅鬼の刃・19『我が街のことからを孫の目から』

2021-03-20 09:44:06 | エッセー

RE エッセーノベル    

18・『我が街のことからを孫の目から』   

 

 

 忘れているようなので、わたしが続きを書きます。

 

 年の割に……というと機嫌の悪くなるお祖父ちゃんなのですが、続きを書くのを忘れた、あるいは忘れたふりをしています。

 風呂上がりに話をすると、栞にとっての河内はどうなんだい?

 と、遠まわしに聞いてきます。

 これは「続きはお前が書け」ということだなあと筆を執ります。

 

「すごい家を見つけた!」

 小学校のころ、お医者さんから帰ってきたお祖父ちゃんが、興奮して言いました。

 今どきのタレントさんには興味のないお祖父ちゃんですが、まるで、憧れのアイドルに出会ったように頬を染めていました。

「え、なになに?」

 二人だけの家族なので、こういう時の感動は共有する習慣があります。

「司馬遼太郎の家を見つけた!」

 え?

 一瞬分かりませんが、コミックのネタにもなっている幕末物の小説をあげてくれてピンときました。

 司馬遼太郎さんは、大阪を代表する歴史小説家です。府知事や大阪市長よりも有名なのは小学生のわたしでも分かりました。

 わたしの好きなアニメに『ガールズアンドパンツァー』があります。

 主役は大洗女子学園の西住みほたち五人の戦車道部なんですが、競争相手に知波単学園の戦車道部があります。

 学園の戦車は日本の旧陸軍の戦車です。

 部長は西絹代という黒髪きりりの美少女なのですが、部員に小柄で眼鏡っこの福田がいます。

 ガルパンのキャラの中で、めずらしく下の名前が設定されていません。

 この福田は、戦時中戦車兵であった司馬遼太郎さんを被らせていると思っています。

 直近の映画版では、猪突猛進の突撃を諫めて、知波単学園に勝機をもたらします。

 司馬遼太郎さんの本名は福田定一です。そして丸眼鏡をかけた小柄な小隊長でした。

「その福田定一と表札にあるんや!」

「でも、同姓同名とか……」

 小学生の割には奇跡めいたことは信じない子なので、そう返しました。

「いっしょに書いてある奥さんの名前は『みどり』や!」

 奥さんの名前までは知りませんでしたけど、検索したら、お祖父ちゃんの言う通り『福田みどり』でした。

 お祖父ちゃんの興奮がうつって、自転車で見に行くと、その通りの表札が掛かっていました。

 とっくに司馬さんは亡くなって、お家を発見した前後に奥さんのみどりさんも亡くなって、お家は身内の方が相続されたようです。

 他にも今東光のお寺とか、書道家の榊莫山さんとか……それは、お祖父ちゃんも書いていますよね。

 ぼんやりテレビを見ていたら、バラエティー番組で河内弁の特集……というよりは、オモチャにしていました。

 河内は柄が悪いとか乱暴とかを前面に押し出した内容です。

「おい、われ!」とか「おんどりゃあ」とか「いてもたろか」とか乱暴な言葉やエピソードを満載して出演者が面白がっていました。

 正直、不快でした。

「おい、われ!」とか「おんどりゃあ」とか「いてもたろか」……こんな言葉は使いません。

 中高生なんか、どうかすると標準語をしゃべっています。アクセントは大阪弁で、文字に起こしたら標準語という子もいます。

「河内弁て、あんななの?」

 あんまりなんで、お祖父ちゃんに聞きました。

「本当の河内弁は……たとえば『夕べ』のことは『ゆんべ』という具合に濁音の前には『ん』が入る。それから『お尻』のことは『ケツ』の他に『おいど』ともいう。主に女の人やなあ……それから『だぢづでど』の発音が『らりるれろ』になることが多いなあ」

「らりるれろ?」

「うん、たとえば『淀川の水』は『よろがわのみる』、『仏壇の修繕』は『ぶつらんのしゅうれん』とかな」

「へえ……」

 テレビでは、そんなことは言ってなかった。

「まあ、テレビは面白かったらなんでもありやからなあ」

「えと、なにか当たってるようなことは?」

「そうやなあ……声が大きい!」

「え、そうなの?」

「二人以上の大阪の人間が東京で電車に乗るとな、なんでか、周りから人が居らんようになる……」

 この時のお祖父ちゃんの目は、ちょっと寂し気。きっと、昔の実体験なんだと思います。

 じっさい、お祖父ちゃんはお喋りだし、声も大きいですから。

 高校生の目から見た『河内』を書いてみようかと思ったんですが、また今度にします。

 あ、産経新聞のコラムにこんなのがありました。

「来ない」というのを関西弁ではどう言うのか。

 けーへん きーひん こーへん

 けーへんは大阪、 きーひんは京都 こーへんは神戸 と分類してありました。

 生まれて十七年の感覚では、三つとも使います。

 使い分けにルールはありません、気分次第です。

 多分、もともとは地域性があったんでしょうが、いつのまにか混ざってしまって、汎関西弁という感じになってるんだと思います。

 大人の判断基準て体験に基づいたものでしょうから、古いと思います。

 本当に若者の関西文化を知りたかったら、学校の先生にでもなってください。

 では、またお目にかかります。

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らいと古典『わたしの徒然草50 女の鬼に成りたるを……』

2021-03-20 08:13:00 | 自己紹介

わたしの然草・50
『女の鬼に成りたるを……』   

 

 


 応長の比、伊勢国より、女の鬼に成りたるをゐて上りたりといふ事ありて、その比廿日ばかり、日ごとに、京・白川の人、鬼見にとて出で惑ふ。「昨日は西園寺に参りたりし」、「今日は院へ参るべし」、「ただ今はそこそこに」など言ひ合へり。まさしく見たりといふ人もなく、虚言と云ふ人もなし。上下、ただ鬼の事のみ言ひ止まず。(後略)

 応長(おうちょう)は、日本の元号の一つ。延慶の後、正和の前。1311年の期間を指します。
 本題から外れますが、「しょうわ」という年号は二つあります。「昭和」と、この「正和」です。
 ある、と、言い切りながら、この段を書くまでは知りませんでした。かりそめにも日本史を教えていたのに知らないとは情けない話ですが。
 まあしかし、「大化」から「令和」まで二百五十以上も年号があり、この「正和」は一年余りしかなかったですから(n*´ω`*n)。と、言い訳。

 話は、この応長の年に伊勢の国から女の鬼が連れてこられ、都中の評判になったが、誰もその姿を見たことがないという、今で言えば都市伝説のような話です。
 

 女性の都市伝説と言うと『口裂け女』と『トイレの花子さん』でしょうか。

 おそらく、男についての都市伝説もあるのでしょうが、不勉強なオッサンなので思い浮かびません。

『口裂け女』は地域や時期によってローカルな違いはあるのでしょうが、おおよそは以下の通りだと思います。

 夕方、人気の少ない道を歩いていると、後ろから人が付いてきます。チラ見すると、マスクをした若い女が付かず離れずで、着いてくるのです。

 そして、人通りが途絶えると「もしもし」と声をかけてきます。

「はい?」

 振り返ると、女は「わたしキレイ?」と聞いてきて、それから、ゆっくりとマスクを外します。

 女の口は耳元まで裂けていたああああああああああ!

 キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!

 というお話です。

 コロナで、町中マスクに満ちていて、黄昏時の待ちいく女の人を目にして『口裂け女』と連想するのは、まあ、若くても40歳以上の人ではないでしょうか。

 十年ほど前のスポーツ新聞の一面に『お忍びのトモチン』というような見出しが躍っていました。

 女子高生だったと思うのですが、街を歩いているとマスクをしてお忍びのともちんこと、AKBの板野友美に出くわしたのです。

「キャー、ともちん!」

「ともちんだ!」

 あっという間にファンに取り巻かれ、その場に居合わせたカメラマンが写真を撮って、あくる日の一面に載りました。

 実は、このともちんは、顔の上半分のメイクと髪をいじることで、いろんなタレントさんに化けて楽しんでおられるザワチンとおっしゃる女性で、YouTubeで、その変装のプロセスを載せて好評を得た方でありました。

 一部を隠すことによって、隠された部分に人間は想像力をたくましくしてしまいます。

 わたしも、世間様に恭順の意を示すために、外出時、特にスーパーやコンビニに入る時には、先の総理大臣閣下から頂戴したマスクを着用いたします。

 散歩の途中、ドラッグストアに立ち寄りました。

 若いころからの花粉症は、かなりマシになったのですが、目のかゆみだけが残りました。

 そこで、目薬とかの花粉症対策の薬を思い立ったのです。

 初めてのドラッグストアなので、商品の配置が分かりません。

「すみません、花粉症の……」

 陳列棚を整理していた女店員さんにこえをかけました。

「は、はひ!?」

 と振り返った女店員さんは、まるで口裂け女に出くわしたように驚かれました。

 ああ、ひどくなってるんだ(;'∀')……と凹みました。

 花粉症のせいで、ひどいときは日に数千回目をこすります。

 それが目の周辺のニキビを悪化させ、目の周辺のニキビだけが、この歳になっても残っています。

 いつか、目の周辺は黒ずんできて、光の当たり具合によってはゾンビのように見えます。

 それに加えて顔のあちこちに浮かび始めたシミと相まって、それでも、人と接するときは、それなりに笑顔を心がけているので、昼間にゾンビに出会ったような反応をされることはありませんでした。

 散歩の途中だったので、キャップを被り、鼻から下は恩賜のマスク。

 際立つ、目の周辺のゾンビ面。

 〆て3400円なりの薬を買って、洗顔するたびに塗りこめております。

 ひょっとしたら、ドラッグストア周辺では『マスクのゾンビ男』という都市伝説が生まれかけているかもしれません(;^_^A

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真凡プレジデント・27《とりあえず》

2021-03-20 06:05:30 | 小説3

レジデント・27

《とりあえず》   

 

 

 

 生徒会役員と言うのは、意外に露出は少ない。

 

 選挙の立会演説は年に二回。だだっ広い体育館でやるってこともあるんだけど、ステージは遠いし照明が点いてるわけじゃないから顔なんか分かりづらい。

 本気で立会演説やるなら、ステージのスクリーンに候補者のバストアップのライブ映像映すぐらいの事やらなきゃね。アメリカの大統領選挙とかでやってるやつ。

 卒業式や入学式、同じく体育館。だだっ広い上に生徒会役員なんて、完全にエキストラ。その他大勢、NPC、モブにすぎない。

 体育祭の挨拶。体育館以上にだだっ広いグラウンド、それも、校長先生はじめPTA会長、実行委員長、体育科からの諸注意なんかに埋もれてしまって、生徒会役員なんか意識の外。

 まして、うちの学校は迅速な行事運営を目指しているので、行事の実質的な運営は実行委員会に任されて、執行部の出る幕はほとんどない。

 前にも言ったけど、役員は会長、副会長、書記、会計だけで、各種委員会の委員長職がない。

 保健とか風紀とか文化部とか体育部とかの長が無いんだ。

 立候補者を募るのが難しい、分かるでしょ、今回も藤田先生が――候補者がいない――と、中庭で頭抱えていたでしょ。

 で、行事の度毎に実行委員会を作った方が小回りが利く上に短期集中できる。

 そういうことで、二十一世紀に入ったころから今の四役体制になっている。

 

 まあ、部活に等しいくらいの規模と質になっている。

 

 でも、そういうもんだから、プレジデントという響きに立候補を決心したんだし、なつきたちも役員が足りないよ~と言ったら、気楽になってくれたりもした。

 わたしは現実主義なので、そういう生徒会を、いますぐどうこうしようとは思っていない。

 でも、このままでいいとも思っていない。

 

「ほんとうに周るのか?」

 

 体育祭業務の報告に職員室を訪れると藤田先生が、ちょっと真顔で聞いてきた。

「はい、他校の様子ってネットなんかの情報だけじゃ分かりませんから。ま、行ったからって、すぐうちの学校に取り入れられるというものじゃないでしょうけど、来年以降の生徒会が考える資料になればと思ってます」

「そうか、実は四校ほどOKの返事をもらってるんだけど、行ってみるかい?」

「はい、ぜひ!」

「そうか、決まったら報告してくれ。あ、それと、これは俺からの慰労だ」

「あ、ありがとうございます」

 食堂と購買共通のチケットをいただいた。チケットだけど、けっこうな金額がある感じ。

「あ、気にしないでくれ、体育祭で使おうと思って使い残したものだから」

「はい、遠慮なくいただきます」

 

 フェリペ女学院(私学)  修学院高校(私学)  二の丸高校(都立)  神楽坂高校(都立)

 チケットは綴りのまま三千円分あった。

 

「週末に一校ずつ……う~ん、期末テストになっちゃうわね」

 聡明な副会長福島みずきが腕を組んだ。

「これからも、周れる学校増えそうだしね……」

「とりあえず、二人一組で周る体制にしようか」

 綾乃が指針を示す。いい呼吸だ。

「じゃ、とりあえずフェリペと二の丸だね」

「えと、交通費とか、どうなるのかな? これからも周るとしたら、ちょっと負担かも」

 なつきが心配する。心配は真面目に考えている証拠だ。

「それは、先生に掛け合ってくる、じゃ、この週末からやるってことでいいよね?」

「うん、じゃ、フェリペはわたしと綾乃で」

「地味な取り組みだけど、ま、よろしくお願いします」

「じゃ、質問やら観察のポイントを確認しよっか」

「そいじゃ、ジュースとおつまみ買ってくるじょー!」

「なつき、これ、藤田先生からもらったチケット」

「おう、ちょっと贅沢できるかも~(*´∀`*)」

 かわいいスキップが遠のいていった。

 

「しかし、真凡も考えるようになったんだ」

 食卓を挟んでお姉ちゃん。

「え、なにが?」

「自分の露出を意識するなんてさ」

「え、ああ……」

 沢庵を咀嚼しながら考える……お茶を飲むときには結論が出ている。

「わたしは、どうやったってダメだろうけど、生徒会役員という記号は見えてなきゃダメなんだよ。例えていうと交差点の信号機」

「信号機?」

「うん、信号機は目立つようにしとかなきゃ意味ないでしょ、赤・青・黄色のシグナルはさ。でも、信号機がどんなだったかは覚えてないでしょ、電球だったかLEDだったか、ボディーは黒だったか白だったかシロと緑のゼブラだったかとかさ」

「面白いね、真凡は(^▽^)」

 それだけ言うと、お姉ちゃんは、わたしよりも陽気な音を立てて沢庵を咀嚼した。

 間違ったこと……言ってないよね?

 

☆ 主な登場人物

  •  田中 真凡(生徒会長)  ブスでも美人でもなく、人の印象に残らないことを密かに気にしている高校二年生
  •  福島 みずき(副会長)  真凡たちの一組とは反対の位置にある六組
  •  橘 なつき(会計)     入学以来の友だち、勉強は苦手だが真凡のことは大好き 
  •  北白川 綾乃(書記)   モテカワ美少女の同級生 
  •  田中 美樹         真凡の姉、東大卒で美人の誉れも高き女子アナだったが三月で退職、家でゴロゴロしている。
  •  柳沢 琢磨         対立候補だった ちょっとサイコパス 
  •  橘 健二           なつきの弟
  •  藤田先生          定年間近の生徒会顧問
  •  中谷先生          若い生徒会顧問

 

 

 

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