大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

かの世界この世界:176『国生み 事始め』

2021-03-18 09:23:10 | 小説5

かの世界この世界:176

『国生み 事始め』語り手:テル(光子)    

 

 

 カオスの霧はアメノヌホコが貫いていたところだけトンネル状に薄くなっている。

 それを頼りに、ヒルデと二人イザナギ・イザナミ男女神の後をつけ、螺旋を描いてダイブしていく。

「イテ!」

 ヒルデがなにかに接触した、わたしは反射的に、それを避けて、螺旋の半径を大きくする。

「気をつけろ、いつの間にか、ぶっとい柱になっているぞ!」

 ヌホコの貫いた空間が実態を備えて太い柱になっている。

 ヒルデとわたしのダイブに合わせて、柱に文字が現れる。ダイブに合わせて青と赤の文字が走って、まるで床屋の看板を慕って舞飛ぶ虫になったような感じ。

「AMENOMIHASHIRA……」「アメノミハシラ……」

 それはアメノミハシラと読めた。

「なんだ、アメノミハシラとは?」

「たしか……」

 最初に浮かんだのは、FF14に出てくるディープダンジョンの名前だ。

 いや、オノコロジマに聳える柱だから……あ……思いついて、自分でも恥ずかしくなるくらい真っ赤になってきた。

「なにを赤くなってる?」

「いや、ちょっと……ここからはR18だよ」

「R18? ルート18? 国道18号線のことか、国道なら天下御免の公道ではないか、なんの遠慮がいる」

「ヒルデ、あんた、分かってボケてる?」

「ハハ、R指定! 面白いじゃないか、急ぐぞ!」

 ビュン!

「あ、待て、ヒルデええええええ!」

 

 二人でダイブしているわずかの間に、オノコロジマは小さいながら緑豊かな小島に成長し、アメノミハシラは、その中央に聳え立つ巨木のようになっていた。

「隠れて見ていよう」

「う、うん」

 ヒルデと薮の中に飛び込んで、週刊誌の記者のように覗き……いや、観察を続ける。

 素っ裸の二人は、不思議そうに自分と相手の体を見ている。体は大人だけど、その関心は初めていっしょにお風呂に入った幼稚園児のようだ。

「なにか、作りがちがうなあ」

「そうねえ……」

「俺のは、ちょっと余ったみたいで、変なのがぶら下がって……」

「わたしのは、なにか足りなかったみたいで、凹んで穴が開いてるわ」

「その分、イザナミの胸は二つも膨らんでるぞ」

「ああ……でも、そのぶら下がってるものは、なんか次元が違うと思うなあ」

「ほんとうに無いのか? ちょっと位置がずれてるだけとか」

「どうかなあ……ちょっと見てくれる、イザナギ?」

「あ、ああ……なんかすごい(#'∀'#)」

「な、なに赤くなってんの(#^_^#)!?」

「ちょっと頭冷やす、散歩してくる」

「そ、そう、じゃ、わたしも」

 男女神は、それぞれ反対の方向に歩き出した。

「反対側で出くわすわよ、わたしたちも移動しよう!」

「そうだな!」

 男女神はアメノミハシラを巡って反対方向から回る形になって、出くわした反対側で声を掛け合った。

「いやーー、マジいい男じゃない(^▽^)/」

 最初に声をかけたのはイザナミ。どうも、初対面だというシチュエーションで雰囲気を盛り上げるつもりのようだ。

「あ、ああ、きみもなかなか、か、可愛いじゃないか」

「そお(#^▽^#)、じゃ、じゃあ、さっそくやっちゃう!?」

「や、やっちゃうって(#^_^#)?」

「あたしの足りないとこに、あんたの余ってるとこを挿れんのよ!」

「お、おう……」

「さあ、来て!」

「う、うん!」

 ガバ!

 男女神の国生みが始まった!

 ゴクリ……

 ヒルデと二人、薮の中で固唾を呑んで見守った(n*´ω`*n)。

 

☆ 主な登場人物

―― この世界 ――

  •  寺井光子  二年生   この長い物語の主人公
  •  二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば逆に光子の命が無い
  •   中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
  •   志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

―― かの世界 ――

  •   テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
  •  ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
  •  ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
  •  タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
  •  タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
  •  ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
  •  ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
  •  ペギー         荒れ地の万屋
  •  イザナギ        始まりの男神
  •  イザナミ        始まりの女神 

 

 

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らいと古典『わたしの徒然草49 少年老いやすく……』

2021-03-18 05:56:40 | 自己紹介

わたしの然草・49
『少年老いやすく……』    

 



徒然草 第四十九段

 老来りて、始めて道を行ぜんと待つことなかれ。古き墳、多くはこれ少年の人なり。はからざるに病を受けて、忽ちにこの世を去らんとする時にこそ、始めて、過ぎぬる方の誤れる事は知らるなれ。誤りといふは、他の事にあらず、速やかにすべき事を緩くし、緩くすべき事を急ぎて、過ぎにし事の悔しきなり。その時悔ゆとも、かひあらんや。(後略)

「少年老い易く学成り難し 一寸の光陰軽んずべからず」
 前半はこれと同意ですね。人生はあっと言う間で、なかなか事をなし難い、だからちょっとした時間も無駄にしてはいけないぞ。さっさとやらなければならないことをグダグダやってんじゃねえぞ。

 後半は、ゆっくりやってりゃいいものを、急いでやって失敗すんじゃねえぞってな内容です。

 人が大人になるまでに、折に触れて言われることですね。

 たいていは、格言通りには無しえずに、自分の子どもや生徒やらの若い世代に、自分の事は棚に上げて忠告しては煙たがられます。

 ピラミッドの中の落書きにも「今の若いもんは……」という年寄りの繰り言があるんだそうです。

 いつの時代も、人間とは、世代を超えて、そういうアホらしさがあるもので、それが人間の可愛らしいところだと思います。兼好も、全体を通して読むと、そういう可愛らしさを愛でているようにも思えます。

 まあ、兼好も世間のオッサンと違わないということですね。この四十九段は、教訓めいて、あまり面白くありません。

 少し見るところがあると思えるのは「古き墳、多くはこれ少年の人なり。はからざるに病を受けて、忽ちにこの世を去らんとする時にこそ、始めて、過ぎぬる方の誤れる事は知らるなれ」のところでしょうか、当時の日本人は十人生まれて五十歳まで生きられるのは一割か二割、半分以上は成人するまでに死んでいます。

 わたしはゴジラと同い年です。統計的に見ると、同世代の一割ちょっとが鬼籍に入っています。

 指を折って見ると五人の同級生が亡くなっています。前後三年くらいの幅で数えると、二十人ほどになるでしょうか。分母は「親しい」の括り方にもよるのですが、二百人ほどです。事故死は一人だけで、残りは病死、心臓疾患と癌とが半々というところです。心臓も癌も患っている時間が長く、どの友人知人も、家族込みで大変でした。下世話な話ですが、年金支給前に亡くなると、残されたご遺族(ご遺族も、たいてい知った仲です)の大変さを思うと胸が塞がります。

 兼好さんは、付き合いの多い人ですから縁故の九割が亡くなっていたでしょう。そして、その多くが成人前に亡くなっていることでしょう。

 その死者の数の多さは、戦争で大勢の友人知人を亡くした親たちの世代と同じだと思います。

 生きているうちに、親たちの世代から、もうちょっと話を聞いておけばよかったと、ちょっと思います。

 

 

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真凡プレジデント・25《ここは駅前交差点》

2021-03-18 05:55:52 | 小説3

レジデント・25

《ここは駅前交差点》   

 

 

 わたしは、ままり物怖じしない子だ。

 特別にブスと言うわけでもなく、とりたてていい女と言うわけでもない。

 シルエットはお姉ちゃんに似ていて、ま、プロポーションはまあまあ。

 下校中に、怪しげな足音が付いてきたことがある。

 寂し気な通りに入ったとたんに足音は急接近、これはヤバイ!

 無分別な痴漢や変質者だったら、ここで後ろから抱き付くとか押し倒すとかしてくる。

 痛い目や怖い目に合うのは、わたしだってごめんだ。

 だから、クルリと振り返る――あ、忘れ物思い出した!――みたいな感じでね。

 どうせ襲われるんだったら、正面から向き合って爪の一つも立ててやって、犯人の顔ぐらい憶えてやろうと思った。

 そういう土壇場には、思わぬ勇気が出てくると言うか、変な選択をしてしまう。こんど、生徒会選挙に出て会長に当選してしまったような。

 クルリ!

 するとね、風船に穴が開いたみたいに、そいつのやる気はしぼんでしまう。

 プシュウ……てな効果音が、これほど似つかわしい場面は無いと思った。

 わたしは、そういう気持ちを萎えさせてしまうほどの雰囲気を身にまとっているらしい。

 

 そして、その変質者と数日後に出くわしたと考えてみて。

 

 あの期待を裏切った女だと思ったら、なにがしかリアクションあるでしょ。あ、こいつか……というような。

 それが、まるで無関心。歩行者が速度制限の標識なんか気にしないように、ただのオブジェクトくらいにしか受け止めていない。

 そういう目に遭った時に、お姉ちゃんの妹への関心にブーストがかかるのは、これまでのことでも分かってもらえると思う。

 小学校でも中学校でも、担任の先生は夏休み前までわたしの顔を覚えられなかった。

 中一のとき、部活に入ろうと入部届を持って職員室に行った時のこと。

「すみません、入部届にハンコが欲しいんですけど」

「あ、担任の先生に押してもらって……」

「あの、わたし、先生のクラスの田中真凡……」

「え……?」

 この程度の事は日常茶飯事で、日常茶飯事なんだけど、姉はいちいち笑ってくれる。

 たいてい笑っておしまいなんだけど、ときどき、遠慮なく介入してくる。

 変質者の時は、放送局まで呼び出され、ディレクターと放送作家に引き合わされて「もっかい、みんなに話してちょうだい(^▽^)/」ということになった。

 むろん、きっぱり断ったけどね。

 今度の生徒会や学校の事は、その時と同じくらいに関心を持ってしまっている。

 絶賛失業中で、他にやることもないので、ちょっとしつこい。

 

「たった今、東西方向の信号が青になって、歩行者の人たちが渡りはじめました。こうやって見ておりましても。下校時間のピークだと思うのですが、ご覧ください、交差点を渡る人たちの半分以上が定年は超えたであろうと思われる方々ばかりです。昭和の高度経済成長を支えてこられたみなさんの足どりはしっかりしています。おそらくはまだ現職であったり定年後もお仕事を続けておられるのでしょう、高齢化社会は、まだまだ盤石であるように思われます。下校途中の高校生や学生さんたちは、こころなしか登校時よりもイキイキしているように思えますが、ご年配の方々のオーラは、その高校生学生さんのそれを凌いでいるのかもしれません。見上げる空は梅雨に入ってドンヨリと……」

 四時から、もう三十分も駅前交差点に立って、マイク片手に交差点の実況をやっている。

 少し離れたところにキャップにグラサンのお姉ちゃんがニヤニヤ。

 

 これ、体育祭のアナウンスの練習なんだって!

 

 でもって、いつの間にか、交差点の向こうには、なつきを始め生徒会の面々が。

 ニヤニヤしないでよね!

 むっちゃ恥ずかしんだからさ!

 

☆ 主な登場人物

  •  田中 真凡(生徒会長)   ブスでも美人でもなく、人の印象に残らないことを密かに気にしている高校二年生
  •  福島 みずき(副会長)   真凡たちの一組とは反対の位置にある六組
  •  橘 なつき(会計)     入学以来の友だち、勉強は苦手だが真凡のことは大好き 
  •  北白川 綾乃(書記)    モテカワ美少女の同級生 
  •  田中 美樹         真凡の姉、東大卒で美人の誉れも高き女子アナだったが三月で退職、家でゴロゴロしている。
  •  柳沢 琢磨         対立候補だった ちょっとサイコパス 
  •  橘 健二           なつきの弟
  •  藤田先生          定年間近の生徒会顧問
  •  中谷先生          若い生徒会顧問

 

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