大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・203『常盤橋 ブリンダ可愛くなる』

2021-03-22 09:08:10 | 小説

魔法少女マヂカ・203

『常盤橋 ブリンダ可愛くなる』語り手:マヂカ    

 

 

 砂糖に群がる蟻の群れのようだ。

 気が付くのが早かったので、まだ数匹の黒い影が付き添いの侍従や武官にとりついたところ。

 取りつかれた武官は、突風に襲われ帽子を飛ばされたような感じだが、数秒の後には生きたまま体を引き裂かれるだろう。それほどに影たちは禍々しい。

 セイ!

 風切丸を引き抜くと、そのまま数匹の影をぶった切る。視野の端でブリンダが攻撃に移った姿をとらえる。

 いつものサーベルではないようだが、気にしている暇はない。

 行列周辺の影たちを蹴散らして、攻撃の矛先をこちらに向けさせなければならない。

 群がる蟻を一網打尽に始末することはできない、しいて言えば火炎放射で焼き殺すことだが、それをやれば砂糖の山まで焼いてしまうことになる。砂糖の山とは殿下の御行列だ。

 砂糖よりも気にかかるものがあることを示すのだ。

 ただ、砂糖のように甘くはない。こいつらをやっつけなければ砂糖に取り付けないことを思い知らせるだけでいい。

 打合せしたわけではないが、常盤橋の東と西から攻める。

 一撃で十数匹の影を切り倒す。

 斬撃をくらった影は針で突かれた風船のように霧消する。風船ならば破裂の音がうるさいだろうが、影なので音がしない。

 数撃食らわせたところでブリンダと交差し、彼女の得物が、いつものサーベルでも得意のコルトの二丁拳銃でもないことが分かる。

「ロッドか!?」

 思わず声に出る。

 ほんの刹那の間だけど聞こえてしまったのか、ブリンダの頬が一瞬で染まる。

「うっせー!」

 ロッドは魔法少女のデフォルトウェポンだ。

 たいてい先っぽに星だとかハートだかが付いていて、振り回すたびに星屑とかのエフェクトがついて、とてもファンタスティック。

 影が密集している間は、エフェクトは隠れて見えなかったが、行列の周辺を排除してみると、その柔軟剤のCMっぽいキラキラが、とても……笑わせてくれる。

 プ( ´艸`)

「わ、笑うな!」

「どうしたの、それぇ?」

「と、とっさにこれしか出てこなかったんだ(-_-;)」

「かっわいいよ(^▽^)/」

「か、かわいいゆうな!」

 セイ! とりゃあ! とおおお! とららら!

 掛け声まで可愛らしくなってきている。

 魔法少女のウェポンは、それに相応しいモーションや掛け声がある。

 ウェポンに合わない掛け声では、十分な働きができない。

 デフォルトのロッドやスティックは、可愛い系なので、クラスが上がると使いたがらない魔法少女が多い。

 合衆国建国以来250年の経歴を持つブリンダは、さすがにきまりが悪く、技にキレがなくなってきている。

 ゾワワワワワワ!

「ブリンダ、敵の数が増えたぞ!」

「く、くそ!」

「ロッドに合わせたアクションをしなきゃ、効果出ないぞ!」

 ……………。

 一瞬無言になったかと思うと、シュルシュルっと常盤橋上空百メートルほどのところに駆け上った。

 しゅぱーーー!

 めちゃくちゃ懐かしいお花のエフェクトを放射しながら旋回すると、フリフリミニスカートのコスに変わった。

 これがブリンダのデフォルトか!?

 感動した。

 てっきりアメコミヒロインのように、ピチピチのボディースーツの胸にSだかBだかのイニシャル付けて、赤いマントを翻しているかと思ったら、まるでセーラームーン、いや、ランドセルを背負わせたら星屑ウィッチメルルでも通りそうな可愛らしさだ!

「は、早打ちブリンダ! は、はっじっまっるよおおおおお(#^0^#)!!」

 パチパチパチ!

 思わず拍手してしまう。影たちも呆気にとられたのか、一瞬動きが停まって、中にはズッコケて川に落ちて消えてしまう者もいる。

「く、くそ、こっちだって恥ずかしいんだからねえええええ!」

 ええい、これでもくらえ! ブリンダスマアアアアアアッシュ!

 上空で旋回してロッドを振り回すと、幾千万のピンクのハートが降り注いで、あらかたの影たちを消滅させてしまい、残りの影たちは橋の東西へと逃げ散った。

 むろん、摂政殿下の行列は無事に被災地に向かっていく。

 この行列の中に霊感の強い侍従見習いの青年が居て「常盤橋に差し掛かると、桃色の童女が上空に現れ殿下の御行列を祝福する幻を見ました」と述懐し、その後優れた童話を世に出すことになったと知るのは、全てが終わって、元の令和の時代に戻ってからのことだった。

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 

 

 

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らいと古典『わたしの徒然草・51』

2021-03-22 06:34:30 | 自己紹介

わたしの然草・51
『万に、その道を知れる者は……』   



 徒然草 第五十一段

 亀山殿の御池に大井川の水をまかせられんとて、大井の土民に仰せて、水車を作らせられけり。多くの銭を給ひて、数日に営み出だして、掛けたりけるに、大方廻らざりければ、とかく直しけれども、終に廻らで、いたずらに立てりけり。
 さて、宇治の里人を召して、こしらへさせられければ、やすらかに結ひて参らせたりけるが、思ふように廻りて、水を汲み入るる事めでたかりけり。
 万に、その道を知れる者は、やんごとなきものなり。

 後嵯峨上皇が、嵯峨野に亀山殿を造営した時のこと。庭の池に大井川から水を引こうと計画して、大井の百姓を集め大井川に水車を作らせた。時間と金をかけたがうまくいかず、宇治の百姓たちにやらせたら、上手くいった。やっぱ、世の中、餅屋は餅屋だなあ!

 そういう話、というか、それだけの話であります。
 当時から、石垣は、比叡山麓の穴太(あのう) 水車は、宇治の百姓衆が上手いとされていました。で、宇治のオッサンらは上手い! プロは偉い!

 これだけでは話が続きません(*ノωノ)、面白くもありません。
で、ヘソマガリのわたしは、違う局面から話してみようと思います(^_^;)。

 プロは、自分の常識からしかものが考えられない。時として素人の閃きや直感の方がすぐれているという話ですね。
 世界中の軍艦には、固有の名前よりもデッカく番号が書かれていることが多いです。あれはアメリカ海軍が十九世紀に考案したものだそうです。それ以前の世界中の海軍というのは、プロの集団と決まっており、船の名前など、遠くからでも、そのカタチが判別できなければならないとされ、ボースン(水夫長)や、士官は、敵味方の区別無く、世界中の主だった主力艦艇のカタチと名前、おおよその性能は知っていました。まあ、そのころ大海軍を持っている国はしれたもので、主力艦艇と言っても、世界中で百ほどでしかありません。
 当時のアメリカの海軍は、世界的に見ても二流で、このことは、アメリカ海軍自身がよく知っていました。  
  そこで、バカでも自分の国の船ぐらいは一目で分かるようにしてやろうと、船の舳先に大きな数字を書いたのです。成り立ての水兵でも、その番号と手許のマニュアル本を見れば、たちどころに船の名前が分かるようにしたのですねえ。
 では、敵の船はどうしたかというと、小さな模型を作りました。それを見せて、水兵たちに覚えさせました。第二次大戦中、これをプラスチックで大量に作り、海軍の全艦艇に持たせてやりました。戦後、これが民間でも流行り、これがプラモデルの元になりました。
 火星ロケットを打ち上げるとき、火星まで行くことは簡単なのですが、探査衛星を火星に無事軟着陸させることが非常に難しかった。姿勢制御や速度調整など、当時のコンピューターでは困難なことが多く、また開発費もかさむ。そこでNASAは思い切ってヤワラカ頭の若者(一般公募者も入っていたような気がする)たちに任せました。
 若者達は、ハナから軟着陸を考えていませんでした。探査衛星が火星の地表近くまで来ると、衛星の周りにくっつけた風船が一斉に膨らみ、ショックを吸収するようにしました。地球で飛行機から投下実験するとものの見事に成功しました。それから研究も実績も上がって、先日は軟着陸させたカプセルから探査車を出して、着陸地点の色々な映像を送ることに成功していますね。

 今は、世界中の自動車に付いていますが、衝突したときにダッシュボードから風船が瞬時に出てきて、ショックを吸収する仕掛けは「車はぶつかるもの」という素人の発想から生まれたものだそうです。

 学校は、システムや規則の博物館であると言われます。
 わたしがヒヨッコのころ、女生徒たちは体育の時間は下着同然のピチピチの短パンでありました。たまに体育の授業前に女生徒を呼び出し、その格好で職員室に入ってこられると目のやり場に困ったものであります。
 むろん、女生徒たちからも不満が出ていました。
「せめて、体育祭の時ぐらいは、ジャージの下を穿かせて欲しい」
 至極真っ当な要求が出てきました。わたしは、その生徒の声を代弁して体育科の主任に掛け合いに行ったことがあります。
「他教科のことに口だしするな」
 それが答えでした(^_^;)。世紀末を境に、この下着同然の短パンはハーフパンツに替わりました。

 宿泊学習というものが流行ったことがありますね。春の連休前に新入生を一泊で遠くに連れて行き、生徒としての規律などを覚えさせる。さらには、新しい学校への帰属意識を高め、愛校精神の涵養を図ろうというアナクロな精神主義でありました。
 この行事、下見や、会議、準備のため三月から、学校の三分の一以上の教師が、延べ数千時間の仕事の時間をとられるのであります。で、思い通りの実績はあがりません。
 ベテランのコワモテの担任のクラスは、これで締まります。しかし、わたしのようなハンチクな担任だと、この行事で生徒に乗り越えられてしまい、その後の学級経営は非常にむつかしくなります。簡単に言えば「うちの担任は、この程度」と、瀬踏みされてしまうのですね(;^_^A。
 職員会議で毎年、この宿泊行事の廃止を訴えてきました。
「教育効果というものは、すぐには表れない。若い人はすぐに手を抜くことばかり考える」と叱られました。
四年がかりで組織票を固め、やっと廃止にこぎつけましたが、ベテランのコワモテからは睨まれました。
「大橋、ようもやってくれたのう……」
 我々、ハンチクな担任達は、その代わり、しつこいほどに面談、懇談、家庭訪問をくり返すことにしました。これはという生徒の家には四月一日から、夜討ち朝駆けの家庭訪問。そうやって生徒本人や保護者と人間的な関係を作ってしまうのです。いじめられそうな子がいると、ボスクラスの何人かと、廊下やトイレ、階段の踊り場でナニゲニ声を掛けておく。
「あいつ、人間関係ヘタでなあ、なんか気に食わんことあるかもしれんけど、よろしゅう頼むわ。おまえやからこそ声かけてん」
 これで、いじめの芽を摘んできました。
 これらは全て、自分の技量に自信のないハンチク教師だから思いついたことです。

 今回は、珍しく兼好のオッチャンに逆らってみました。ま、たまにはいいでしょう(^_^;)。


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真凡プレジデント・29《都立二の丸高校訪問・2》

2021-03-22 06:10:51 | 小説3

レジデント・29

《都立二の丸高校訪問・2》  

 

 

 

 二の丸高校の凄いところは設備だけじゃなかった。

 

 民放のアナウンサーのようにイカシた生徒会長は、各種生徒会の会議が行われる部屋を案内してくれる。

 ハードというか施設は単純に目に飛び込んでくるので「ウワーー」とか「スゴイ!」とかダイレクトに感動できるんだけど、組織の運営や風通しの良さなどは部屋を見ただけでは分からない。

「こんな具合です」

 なんと、会長がスマホを操作すると、モニターやら電子黒板に会議の様子が出てくる。それも二分程度に編集されていて、とても分かりやすい。

 

「え、もう卒業式のことやってるんですか?」

 

 化学実験室を会議場にしているのは三年生の学年会議だ。

 理由は三年生の教室から一番近い特別教室で、集まりやすいから。それに、会議に寄って部屋を固定しておくと――今日の会議はどこだっけ?――ということが起こらない。

「間際になって決めるといい結論が出ません。三年生は秋以降は忙しいですからね、むろん決定はもっと後なんですけど、今は、いろんな学校の卒業式を見て研究というところです」

「やっぱ、薬品とか使って?」

 なつきがスカタンを言う。

「ハハ、映像が薬品と言えないこともないかなあ、とにかく、いろんなのを見てもらって化学変化させるというか、雰囲気づくりですね。映像は二三分で、あとは十分ほどフリートーキングです。繰り返しているうちになんとはなしの空気ができます。昼休み放課後に関わらず、会議はニ十分以内を目標にやってます」

「よっぽど議長さんとかが、しっかりしているんですね」

「う~ん、普通の生徒だと思いますよ。事前の問題整理と資料作りがしっかりしていれば、案外スムースにいくもんです。くたびれそうになったらトピックというか、関係ない話を投げ込むんです」

「関係ない話?」

「たとえば、化学教室の椅子にはなんで背もたれがないか……とか」

 

 言われて、化学教室の椅子を見渡す。

 当たり前すぎて疑問にも思わなかったけど、言われてみればそうだ。

「なんでだろう……あ、そうだ。背もたれのない椅子だったら、寝かせて集めれば小テーブルになりますよね。文化祭の時なんかに重宝する!」

 なつきのスカタンも、会長はにこやかに受け止める。

「それ、いいかもしれませんね! 椅子は椅子って固定観念でないところがいいですよ、メモっておこう……」

「正解ですか?」

「ハハ、正解は、実験に失敗して火が出たり爆発が起こっても、すぐに逃げられるように背もたれが無いんです」

「え、そなの?」

 好奇心旺盛ななつきは、さっそく試してみる。

「なるほど、コンマ何秒か速くなるかも!」

 生徒会長は、飽きさせないことがコンセプトのようだ。

「今日は、こんな話題を投げかけてみたんです」

 そう言ったのは、その日の昼休みにクラブ部長会議が行われた社会科教室だ。

「これです」

「「あ!?」」

 なんとモニターにはわたしの写真が……どういうシャッターチャンスなんだろう、フイと振り返ったところで顔が見えない。

「そちらの学校は伝統的な制服だし、その、こんなにステキな会長さんだから、ちょっとネタに使わせてもらいました。事後承認みたいで申し訳ないです(^_^;)」

「で、どんなクイズにしたんですか!?」

「いや、ただ、視察に来られるってことだけを伝えただけです。毎日、同じ制服と顔だけですから、みんな喜ぶんですよ」

 むつかしく言うと肖像権とかの問題なのかもしれないけど、ほとんど後姿。ま、いっか。

「それで、何人かの生徒が一目お目にかかりたいって、階段降りたところで待ってるんですけど、よろしいですか?」

「え、えーーーー」

 

 プロポーションとかは、お姉ちゃんといっしょだから……でも、ルックスは振り返っただけで変質者もトーンダウンしてしまうくらいのご面相なんだ。気が引ける、顔が赤くなってくる~!

「決めてかかるのは良くないよ」

 なつきにズンズン押されて、指定の階段下へ……。

 

 二の丸の皆さんの反応は……次回に(;^_^)

 

☆ 主な登場人物

  •  田中 真凡(生徒会長)  ブスでも美人でもなく、人の印象に残らないことを密かに気にしている高校二年生
  •  福島 みずき(副会長)  真凡たちの一組とは反対の位置にある六組
  •  橘 なつき(会計)     入学以来の友だち、勉強は苦手だが真凡のことは大好き 
  •  北白川 綾乃(書記)   モテカワ美少女の同級生 
  •  田中 美樹         真凡の姉、東大卒で美人の誉れも高き女子アナだったが三月で退職、家でゴロゴロしている。
  •  柳沢 琢磨         対立候補だった ちょっとサイコパス 
  •  橘 健二           なつきの弟
  •  藤田先生          定年間近の生徒会顧問
  •  中谷先生          若い生徒会顧問
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