大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

かの世界この世界:175『オノコロジマ』

2021-03-12 09:28:16 | 小説5

かの世界この世界:175

『オノコロジマ』語り手:テル(光子)    

 

 

 取り返した時は二間に満たないアメノヌホコだったけど……

 

「待ってくれ、ニケンというのはなんだ?」

 ヒルデがのっけから聞いてくる。

 そうか、ヒルデは北欧神だから、日本の尺貫法で言っては理解できない。

「一間は1・8メートルのことよ。あ、まだまだ伸てる!」

「おお!」

 イザナギ・イザナミが二人で手に取ったアメノヌホコは、みるみるうちに伸びて、はるか下方のカオスに下りていく。

「見えなくなったぞ」

「目を凝らせば見えてくると思う、このカオスにも上下の区別が出てきたし、上の方から空気が澄んできている」

 ズボ

「なにかに突き刺さったな……ヌホコが、あんなにしなってるぞ」

 突き刺さった先は、まだ見えてこないけど、ヌホコのしなり方で粘度の高い液体のように感じられる。

「似ているぞ」

「え、なにに?」

「ブァルキリアの祭りで、ドラゴンの玉子で巨大なオムレツを作ったことがあるんだ。トール元帥が張り切ってな、ミョルニュルのハンマーを巨大なオタマに変えてかき混ぜたんだ、あの時の感じに似ている」

「あ、そう言えば『中二病でも恋がしたい』の六花のお姉ちゃんの小鳥遊十花の武器はオタマだよ!」

「それは、きっとトール元帥の反映だな。そうか、あの姉はカミングアウトしたトール元帥だったのか!?」

「でも、凸守早苗(でこもりさなえ)のツインテールはミョルニルハンマーとか言って振り回していなかった?」

「あれは、中二病の幻想だろ、姉を相手にして勝ったことは無いはずだぞ」

「そうだった?」

「そうだ、だいいち、六花は牛乳が大の苦手だろ。十花に負けて瓶牛乳を無理やり飲まされて死にかけていたぞ」

「ああ、あったあった。丹生谷森夏にも飲まされて、盛大に吐き出していたなあ」

「ヴァルキリアの人間で牛乳が飲めないやつなんていないからな」

「ちょっとそこ、静かにしてもらえませんか、気が散って集中できない」

 イザナミに怒られる。

 ちょっと盛り上がり過ぎた(^_^;)

 ピチョ

 やがて、ヌホコの先から雫が落ちる音がした。

 すると、下界の霞はヌホコを中心にみるみるうちに晴れ渡っていき、広大な海の真ん中に雫が落ちて島になったのが分かった。

「なんの島だろう?」

 スマホで調べると『オノコロジマ』と出てきた。

「実在の島か?」

「……いろいろ説があるみたいね……淡路島の横っちょの沼島とか播磨灘の家島とか……博多湾の能古島という説もある」

「近畿エリアと九州エリアか……そう言えば、日本の天皇家の始まりは近畿と九州に分かれていると聞いたぞ」

「あ、それは邪馬台国」

「え、邪馬台国が大和朝廷になったのじゃないのか?」

「ちょっと、静かに!!」

 また、イザナミに叱られる。

「おい、あの二人、素っ裸になって島に下りていくぞ!」

「あ、お邪魔しちゃ悪いかなあ(#'∀'#)」

「イヒヒ、この先、どんなフラグが立ってんのかなあ(^#▽#^)」

「なんか、いやらしいよ」

「イザナギ・イザナミって、おなじとこから生まれてるから、ひょっとして兄妹!? え、妹系のエロゲだったりするのか!? これは、たしかめなくっちゃ!」

「ちょ、ヒルデ、じゃましちゃ……」

 金髪のスケベ女は涎を垂らしながらオノコロジマに下りていく、なんだか、妹系ラブコメのヒロインのようになってダイブしていく。

「待ってくだされ、ブリリン氏!」

 あ、わたしもキモオタ女っぽくなって追いかけてしまう……

 

☆ 主な登場人物

―― この世界 ――

  •  寺井光子  二年生   この長い物語の主人公
  •  二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば逆に光子の命が無い
  •   中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
  •   志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

―― かの世界 ――

  •   テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
  •  ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
  •  ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
  •  タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
  •  タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
  •  ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
  •  ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
  •  ペギー         荒れ地の万屋
  •  イザナギ        始まりの男神
  •  イザナミ        始まりの女神 

 

 

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らいと古典『わたしの徒然草44 あやしき竹の編戸』

2021-03-12 06:52:34 | 自己紹介

わたしの然草・44
『第四十四段 あやしき竹の編戸』   

 



徒然草 第四十四段

 あやしの竹の編戸の内より、いと若き男の、月影に色あひさだかならねど、つややかなる狩衣に濃き指貫、いとゆゑづきたるさまにて、ささやかなる童ひとりを具して、遥かなる田の中の細道を、稲葉の露にそぼちつつ分け行くほど、笛をえならず吹きすさびたる、あはれと聞き知るべき人もあらじと思ふに、行かん方しらまほしくて、見送りつつ行けば、笛を吹き止みて、山のきはに惣門のある内に入りぬ。榻に立てたる車の見ゆるも、都よりは目止まる心地して、下人に問へば、「しかしかの宮のおはします比にて、御仏事など候ふにや」と言ふ。
 御堂の方に法師ども参りたり。夜寒の風に誘はれくるそらだきものの匂ひも、身に沁む心地す。寝殿より御堂の廊に通ふ女房の追風用意など、人目もなき山里ともいはず、心遣ひしたり。
 心のままに茂れる秋の野らは、置き余る露に埋もれて、虫の音かごとがましく、遣水の音のどやかなり。都の空よりは雲の往来も速き心地して、月の晴れ曇る事定め難し。

 兼好の、あくなき人間への興味の現れた段であります。

 粗末な家から、月夜に少年のお付きの者を一人連れただけのイケメン、ハイソサエティーなアンちゃんが現れた。「笛をえならず吹きすさびたる」なんて、二重否定でヨイショしたくなるほど上手い笛を吹く。
 田んぼの中の一本道をユルユル行くのを思わず付いていってしまった。
 すると、山際のお屋敷に入っていった。下働きのオッチャンに聞いてみると、なんだか偉い人の法事で、皇族の方もおいでだそうだ。あのイケメンアンちゃんは、何者だろう? アンちゃんが出てきた粗末な家の住人も気になる。書いてはいないが、兼好は、女性だろうとふんでいる。と、わたしはにらんだ。
 月夜の田舎道、女の家から、法事へ直行。なかなかのアンちゃんだとにらんだのでしょう。

「それって、ストーカーやで!」

 兼好のオッチャンの人間好きには、読んでいて、時にそんな思いがします。
 生没年ははっきりしませんが、どうやら七十歳ぐらいまでご存命であったようです。晩年のことは、よく分かりませんが、おそらく足腰のしっかりしている間はこうだったのではないでしょうか。

 わたしも、いつシルバーシートからお誘いがあるか楽しみにしている。

 わたしに、シルバーシートを勧めてくれるのは、昼下がりの、乗車率八十パーセントほどの電車。程よく空いていたのでシルバーシートに座ってしまった女学生(この表現は幅が広い、中学生から大学生まで含む)に、こう声をかけられる。
「気がつかなくって……どうぞ」
 少し含羞のある、笑顔で声をかけてもらいたい。趣味的にはAKB48のタカミナみたいな子がいい。何事にも一生懸命、ソツはないが、大きなところでドスンと抜けて、人に無茶ブリなんかしてしまう。
「いや、こう見えても、還暦までには半年あるんですよ」
 きっと七十過ぎのわたしは、そう見栄を張ると思います。

 

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真凡プレジデント・19《なんの仕事するの?》

2021-03-12 06:38:57 | 小説3

プレジデント・19

《なんの仕事するの?》 

 

 

 うちの生徒会執行部には各種委員長のポストが無い。

 体育委員長とか風紀委員長とかのね。

 学級委員会はあるんだけど、昔のように生徒会と結びついた活動では無くなっていて、各委員会で役員を互選で選び独立した活動をしている。

 組織的には各種委員会というのは生徒会の手足みたいなものだから、うちの生徒会は頭だけしかないタコのようなものと言える。

 

 理由はいろいろあるんだけど、その方が、先生たちは仕事がやり易いし、生徒会の選挙のたびに九人も候補者を集めるのも大変。でしょ? 今度の選挙でも藤田先生苦労してもんね。

 でも、頭だけの生徒会って、意欲のある生徒には魅力がないので、逆に候補者が集まりにくいって悩ましさもあったりする。

 今回に限って言えば、急に書記と会計の子が辞退して、代わりになつきと綾乃が入ってくれたのは、その身軽さがあったからとも言える。

 身軽って言うと、お互いを下の名前で呼ぶことにした。

 なつき(橘 なつき)は元からそう呼んでるし、なつきは性格的にも下の名前で呼びやすいネコ的な感じなので、すぐに馴染む。

 あやの(北白川 綾乃)は、ちょっと苦労。なんたって、学校一番の美人で才女、どうしても「北白川さん」になってしまう。それで、彼女は「北白川さん」と呼ばれたら返事をしない作戦に出て、福島さん……おっと、みずきのアイデアと相まって二日で定着させた。

 みずき(福島 みずき)は、全員分の『下の名前バッジ』を作って、生徒会室に居る間は四人とも胸に付けることにした。

 このバッジ、単に下の名前が書いてあるだけじゃなくて、それぞれの似顔絵と役職名が英語で書いてある。日本語の役職名だと硬いイメージなんだけど、英語にすると、ちょっとオシャレ(^▽^)/。

 そのうち、生徒会室を出ても外すのを忘れて、付けたまま廊下を歩いたり職員室に行ったりして、ちょっと好評だったりする。

 あ、そうそう、肝心の生徒会の仕事だよ。

 

「で、生徒会って、なんの仕事するの?」

 

 なつきがアッケラカーンと質問したのは、つまり、そういう背景があったから。

「今でも制度上は各種委員会は生徒会の一部なんだよ。だから時々は各種委員会にも出るし、予算とかは生徒会費から出てるのもあるから季節的には忙しい」

「まずは予算委員会を開かなくちゃ」

「あー、森かけとか桜で総理大臣イジメる委員会!?」

 こういう発想の飛び方は、いかにもなつきで、綾乃もみずきもコロコロと笑っている。

「クラブ予算よ。総額八十万の予算をいかに振り分けるか、なつきの仕事だよ」

「ゲホゲホ、わたしの仕事( ゚Д゚)!?」

「大丈夫よ、みんなも居るし、先生たちがリードしてくれるし」

 綾乃がやさしくなつきの手をとる。ネコ系のなつきは、これだけで穏やかになる。

「ゴロニャ~ン(n*´ω`*n)」

「体育祭が迫ってるから、そっちの方にも出なきゃならないわ」

 みずきが生徒手帳の予定表を繰りながら呟く。

「まあ、例年通りだと、開会の挨拶と各種賞状の作成というところね」

 昔、体育祭は秋に行われていたので文化祭と並んで、前期執行部の締めくくりの仕事になっていて、けっこう忙しかったらしい。六月に行われるようになって、実質生徒会が間に合わなくなって、開会の挨拶と賞状の作成と言う名誉的な仕事が残った。

「これって、なんだか立憲君主国の王様みたいね」

「って、真凡は女王様!?」

「じゃ、なつきはプリンセス!」

「コスプレとかしちゃおっかな~(*^▽^*)」

「いまさら行事の主導権を取るのは無理だけど、もう少し生徒会が前に出るようなことができないかなあ」

 なつきが混ぜっ返すのを、みずきと綾乃が静めてくれる。

「そうだね、少しでも盛り上がれるようななにかをね」

「そりゃ、やっぱコスプレっしょ!」

「まあ、なつきの意見も考慮して、今月中には結論ね」

「会長からは、なにかない?」

 真凡と言わずに役職で振ってくるみずき、やっぱ、心得てる。

「わたしはね、週に一遍くらいのペースでよその学校を調べに行きたいの、研究しなきゃ提言もできないしね」

「調べるとは、どういう風によ?」

「あらかじめポイントを絞って見学を申し入れるの、漫然と出向いてもなにも見えてこないだろうし」

「座布団持参だね、ドーナツ型置いてる学校なんて、そうそうないと思うよ」

「そ、そうね(^_^;)」

 その時、グラウンドの方からキャンキャンと犬の鳴く声が聞こえてきた……。

 

☆ 主な登場人物

  •  田中 真凡    ブスでも美人でもなく、人の印象に残らないことを密かに気にしている高校二年生
  •  田中 美樹    真凡の姉、東大卒で美人の誉れも高き女子アナだったが三月で退職、家でゴロゴロしている。
  •  柳沢 琢磨    対立候補だった ちょっとサイコパス
  •  北白川 綾乃   モテカワ美少女の同級生 書記
  •  橘 なつき    入学以来の友だち、勉強は苦手だが真凡のことは大好き 会計
  •  橘 健二      なつきの弟
  •  福島 みずき   生徒会副会長
  •  藤田先生     定年間近の生徒会顧問
  •  中谷先生     若い生徒会顧問

 

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