大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

くノ一その一今のうち・59『大和大納言秀長』

2023-06-15 11:43:28 | 小説3

くノ一その一今のうち

59『大和大納言秀長』 

 

 

 地味ですが秀吉の弟です(^_^;)。

 

 直垂のおじさんが頭を掻く。

『あ、ああ!?』

 えいちゃんが思い当たったのか、声を上げたかと思うと、カバンから顔だけ出した。

『「木村長門守」って映画を撮ったんですけど、誰かの台詞にありました「ご舎弟大和大納言様御在世でありせば徳川如きの侮りを受けることもあるまいに」って。秀長さんてお名前では出てこなかったので、すみません、直ぐには気づきませんでした。あ、わたし帝国キネマで、こちらの風魔そのさんの付き人をやっております、長瀬映子と申します』

「いえいえ、わたしこそ、東京で鈴木まあやの付き人をやっています(^_^;)」

『鈴木とは……あの鈴木ですか?』

「え、あ、はい、秀頼公のあとに分かれた御双家の一つです」

『そうですか、それはお世話になっております』

『豊国神社は太閤秀吉さんが祀られているんだと思っていました』

 えいちゃんが太閤秀吉の銅像に目をやる。

『兄の他に、わたしと甥の秀頼が祀られています』

『太閤さんと……ちょっと雰囲気が違いますねえ』

 女優志望だけあって、えいちゃんは貪欲に観察している。

『兄とは父親が違うのです。わたしは兄が家出した後、母が再婚して生まれたものですから。あ、家康さんの後妻に入った旭はすぐ下の妹です』

 そうだったんだ。

「ひとつお伺いしたいんですが」

『はい、なんでしょう?』

「実は……」

 ここに至ったいきさつをかいつまんで説明する。木下家と鈴木家が争っていることには顔を曇らせる秀長さんだが、面倒がらずに口下手なわたしの話を聞いてくださる。「ご舎弟大納言様御在世であれば徳川如きの侮りを受けることもあるまいに」という台詞がむべなるかなと思われる。

『この大阪城は、兄の大坂城を埋めて作られた徳川の城。それに、豊国神社はここに遷されて日も浅く、神社以外のことはよく分からないのですが、大阪の地理のことなら少しは分かります。その空堀の坂というのは、この城の空堀ではなく、兄の大坂城の空堀を指しているのではないでしょうか?』

「秀吉さんの大坂城……」

『はい、規模は、この四倍以上もあって、城の南の備えとして南の方に大規模な総構を築造しました』

「そうがまえ?」

『外堀のさらに外の構えです、そう、様式は空堀……たしか、今でも商店街の名前で残っています』

『あ、空堀商店街!』

 えいちゃんが思いつく。

「え、そんなのがあるの!?」

『はい、地下鉄の谷町六丁目です!』

「そっちだ! ありがとうございます!」

『いや、役に立ったのなら幸いです。これを持って行ってください、ここのお守りです』

「ありがとうございます!」

『あ、谷六なら、大手門を出て南です!』

「おっと」

 来た時同様、玉造口から森ノ宮に出ようとしたら反対方向を示される。

『キャー』

 踵を返すと、その勢いでえいちゃんがカバンから出てしまう。

 危うく、風にさらわれそうになったえいちゃんをクルクル丸めると、リレーのバトンのように握って空堀商店街を目指した!

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
  • 杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
  • えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
  • 豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

RE・かの世界この世界:128『灌木林を進む!』

2023-06-15 06:30:37 | 時かける少女

RE・

128『灌木林を進む!』テル  

 

 

 

 灌木林の獣道を進む。

 
 灌木とは言っても人の背丈の何倍もあって、その灌木たちはノンノンと葉を茂らせて薄暗い。

 おまけに低木の枝とか蔓とかも手で避けられる量ではないのでホルダーから取り出した鉈を振り回して道を拓かなければならない。

 えい!……えい!……せい!……それ!……

 いちいち掛け声をかけて鉈を振りかぶるが、タングリスはほとんど無言で道を切り開いていく。

「力を入れていては直ぐにバテるぞ」

「ああ、分かるんだけど、声をあげないと力が入らない……せい!」

「そうか、なら、わたしがペースを合わせよう。ひとまず汗を拭け」

「あ、そうだな」

 言われて気が付いた、顎の先から汗がしたたり落ちている。ざっくり拭いてから首にタオルを巻く。ほんとうなら腕まくりをしたいところだが、蔦や小枝で手を傷つけるので我慢する。

「人間は図体が大きくてたいへんだねぇ(^^」

 ポチのやつが喜んでいる。

 ポチは1/12フィギュア程度の大きさしかない。枝や葉っぱの隙間をスイスイと飛んでいける。

「ポチの基準で道というのは、こういうのも入るんだ」

「獣道だから仕方ないよ」

 言うことはもっともだ。獣道でないところは下草がハンパでは無くて鉈を振り回しても進めるものではない。

 

 ブイーーーーーン!!

 

 突如、斜め後ろで派手な音がした。

「これだとラクチンであろう(^▽^)/」

 ヒルデがチェ-ンソーを使いだした。

「姫、それはいけません」

「どうしてだ?」

「音が大きすぎます、ヤマタに気取られてしまいます」

「気取られて、姿を現してくれたら勝負が早くなるのではないか?」

「こちらから仕掛けるのと、相手から奇襲をかけられるのでは勝率が全然違います」

「そんなものなのか?」

「はい、地味ですがコツコツとお願いします」

「ヒルデのツィンテールをぶん回せばいいじゃないか。いつだったかのプレパラート戦のときなんか大活躍だった」

「か、髪が汚れるだろ! 葉っぱとか湿ってるし、訳の分からん虫とかもいるし、そんなの付いたらあとの手入れが大変だ」

「口ではなく手を動かして!」

 タングリスのこめかみに青筋が浮く。ポチの力では鉈は振り回せないので、これはヒルデ一人に言ったのと同じである。

「ンモーーー」

 クリーチャーとの戦いでは大人びた口で冷静に戦闘指揮もできるヒルデだが、お姫様然とした我儘が出てくる。自分より年下のロキやケイトが居ないこととタングリスというおもり役がいるからこそのことなんだろう。

「ほら、しっかりやれー! フレーフレー! ヒ・ル・デ!」

「ポチも手を動かせ! タングリスも言っただろーがあ!」

「動かしてるもん、ヒルデ応援するのに手を振ってるよ(^▽^)/」

「叩き落すぞお!」

「おっかなーーーい(^△^;)」

「姫!」

「うい」

「ポチも、しっかり進路を警戒しろ」

「らじゃー('◇')ゞ……まだ百メートルも進んでないよ、まだ五キロはあるみたい」

「いつまでかかるか分からんなあ」

 みんなの手が止まってしまった。

「ブロンズフラッシュを使ってみる」

 わたしはスキルを使うことにした。スキルはHPとMPを馬鹿みたいに必要とするが、回復系アイテムもふんだんにある。

「試してもらおうか……」

 わたしは「ブロンズフラーーッシュ!」と詠唱しながら勇者の剣を振った。

 ブリュン!

 ザザっと頼もしい音がして、枝やら木の葉やらが盛大に舞い散った。

 半径三メートルほどの灌木がきれいに薙ぎ払われた。しかし、たったの三メートルでしかない。もう少しいけると思ったのだが。

「ダメだ、我々の進路を暴露するだけだ」

 そうだろう、百回使って六百メートルほどは進めるが、同時に幅三メートルの空白を灌木林に付けてしまい、我々の存在を暴露してしまう。

「わかった、わたしがやろう……」

 ヒルデが俄然大人びた口調になって、ツィンテールのリボンを解いた。

「いくぞ……スプラッシュテール!」

 ザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザク!

 解かれたテールが数百の枝切ばさみになり人一人が通れるほどのトンネルを灌木林の中に穿って行ったのだった。

 最初からやればいいのにと思ったが呑み込んだ。

 

☆ ステータス

 HP:13000 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーヒール(ケイト) シルバースプラッシュ(テル) スプラッシュテール(ヒルデ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル (寺井光子)   二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼馴染 ペギーにケイトに変えられた
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ラーテの搭乗員 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ラーテの搭乗員 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 1/12サイズで人化している
 ペギー         異世界の万屋

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする