大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 125『鬼かしま決戦・1』

2023-06-06 09:20:15 | ノベル2

ら 信長転生記

125『鬼かしま決戦・1信長 

 

 

 鬼ヶ島とは鬼貸間。

 漢字表記なら一目瞭然だが、ネオンサインは片仮名で『オニカシマ』、実に紛らわしい。

 

 確かに、廊下の他は無数の貸間が続いているだけだ。

 浦島太郎たちが夢中になった『漁師さま用貸間』、アッチャンとオモイカネが危うく取り込まれそうになった『単身神さま用貸し神社』、その他にも『お姫さま用』『王子さま用』『お百姓さま用』『職人さま用』『町人さま用』『冒険者さま用』『魔導士さま用』『錬金術師さま用』『司祭さま用』『NPCさま用』などの貸間が続き、中には『  さま用』と、まだ入居者の属性を絞り込めていない貸間も続いている。

 その貸間群は平面上だけではなく、階段や武者走(戦闘用キャッツウォーク)によって、別の曲輪に繋がり。巨大な三次元ラビリンスを構成している。

 大半の貸間は空き部屋のようで、人の気配がなく。まだ、出来て間がない感じの城内は建材や塗装のにおいが初々しい。

 それでも、曲輪を進むにつれて気配が増してくる。

 しかし、それは部屋では無くて、曲輪の結節点。城門の枡形や櫓、武者溜に蟠っている。

 なるほど。

 城内のラビリンスで迷わせ、憔悴させたあとで一気に返り討ちにしようという腹なのだ。

 

 こういう城攻めは得意ではない。

 

 やるとしたら時間をかけた兵糧攻めを主とした攻城戦だ。

 ただし時間がかかる。

 稲葉山城や小谷城はともかく、石山本願寺は十年もかかった。やっと手に落ちたところで本能寺だ。俺は本願寺の跡に大坂城を建てるつもりだったが、縄張りの絵図面も出来ぬうちに死んでしまい、サルめが、俺のアイデアと遺産を引き継いで天下を取ってしまいおった。

 今度の戦いは、あくまでも御山のアマテラスから素戔嗚(すさのお)が化身した桃太郎をどうにかしろという依頼だ。

 この依頼をこなすことで、茶姫の処遇、いや、茶姫が幸せになる道を聞き出すことだ。

 茶姫は、転生学院で心身の傷を癒している。

 早晩、その傷も癒える。

 傷が癒えれば茶姫の心は三国志に戻るだろう。グズグズしてはおれん。

 茶姫の救済は、我が妹、市の宿願でもあるのだからな。

『敵の数は、およそ二千じゃ』

 勾玉の思金(おもいかね)が胸元で囁く。

「なにか策はあるか?」

 天照大神のブレーンだ、ただ敵の数を言うだけではないだろ。草薙剣のあっちゃんも耳を傾ける。

『草薙剣があるじゃろ』

『え、わたし!?』

『断じて行えば鬼神もこれを避ける』

 なんだか神風特攻隊みたいなことを言う。

『二千と言っても、全速で駆けて行けば相手をするのは二十と言ったところじゃ、遮二無二駆ければ、それにも隙ができる。桶狭間を思い出せ、熱田大神も正念場と心得て力を発揮してくれ』

『仕方が無いわねえ……』

 え?

 腰の草薙剣から光が伸びて、目の前でボディースーツに拳銃を構えた女性コマンドになった。

 瞳とお揃いのパープルの髪は、ウルフヘアで、いかにも精かんだ!

『あ、ただ名前の語呂で作ったアバターだからね、本体は剣、頑張るのは信長! いくぞ!』

 思わず「少佐!」と呼びそうになる。

『このアバターは熱子(あつこ)と呼び捨てにしてくれ』

「承知!」

 石垣や櫓の死角を拾い、あるいは敵の注意をそらして本丸を仰ぐ石垣の陰に至る。

『敵の気配は大半が浦島太郎じゃ』

「思金もそう見たか、熱子は?」

『あの引きこもり、取り込まれてしまっている』

『気に入った様子じゃったからの』

「本丸を固めている兵は1000を超えるぞ、浦島太郎は600しか居ないだろう」

『なかなか、奴の引きこもりも根が深いようじゃ』

 増殖したか、あるいは、600の浦島太郎の陰に隠れて、より業の深い奴がいたか……だとしたら、奴の引きこもりは600年どころではない。

『熱子、おまえは、このまま搦手から侵入してかき回してくれ』

「熱子一人でだいじょうぶか?」

『勢いで作ったアバター、実体は無いのよ。ほら……』

 熱子が伸ばした手は俺の胸を突き抜けてしまった。

『草薙剣そのものが天照大神のアバターみたいなものだけど、これには力が籠められている。励みなさい』

「お、おう」

 次の瞬間、熱子は空を飛んで搦手の門をすり抜けた。

 浦島太郎たちの狼狽える声が上がって、俺と思金は隙を探るべく本丸の正面方向に向かって走った。

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ)

  

 

 

コメント
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