鳴かぬなら 信長転生記
ブン!
おお(@▲@;)!?
戦艦大和の主砲弾が鼻先を掠めたら、こんな感じ!
そんな衝撃と風圧が目の前を掠める!
パラパラ
風圧だけで、俺の前髪が十数本散った。
俺は生前の男の姿ではない。扶桑と呼ばれる転生世界に飛ばされて、それ以来女の姿容をしている。鶴姫の甲冑を身にまとっているが、頭は鉢金(鉄板を縫い付けた鉢巻き)を締めているだけで、こぼれた髪がハラヒラなびいて宙に舞う。ブスならともかく、妹の市以上の美少女、ショートにしたり、ツンツンのひっ詰めにしていては絵にならん。
戦術、戦略に関しては徹底した合理主義だが、その身と装いにかけては、少々不合理であろうとオシャレに徹する。
ブン! ブブン! ブン! ブブン! ブン!
立て続けに金棒が空を切って、その都度髪が散り、鎧の縅糸をささくれさせていく。
カシン! カシン!
本来の草薙の剣に戻ったアッチャンを縦横にふるってしのぎ、三度に一度は鬼の体を捉えるが、その肌は巌の如く、いかに日の本一の聖剣と言えども、渾身の力で正中を捉えなければ討ち取りがたい。
『儂を鬼の後ろに投げよ』
再び思金(おもいかね)が呟く。
「よし!」
勾玉に戻った思金を胸元から引きずり出す。
グキ!
勢い余って、思金を握った拳が自分のあごに当って目から火が出る。
セイ!
それでも勢いつけ、鬼の後ろを目がけて勾玉の思金を投げる!
おお!?
予想をはるかに超えた大魔神の姿になって、オイデオイデをする思金。
ウオオオオオオオオ!
吠えると同時に金棒を振り上げ突撃する鬼。
ブン!
え?
鬼の金棒は、大魔神に到達するはるか前で振り下ろされ、エフェクトだけは派手に描いて空振りになる。
ズン
消えたかと思うと、今度は鬼の右横に現れる大魔神。
しかし、その姿は、たった今までの1/10ほどでしかなく、それも、ポリゴンというか粒子が荒く、その縁は、ちょっとガビガビになっている。
ウオオオオオオオオ!
ブン!
ええ!?
鬼は、実際の距離の五倍向こうまで跳んで金棒を振り下ろした。
当然、金棒は空を切り、その勢いに振り回されて、鬼は空中ででんぐり返ってしまった!
『思金、なかなかやるわね』
剣のままで、アッチャンが褒める。
ブン! ブブン! ブン! ブン!
それからも、大魔神は大きくなったり小さくなったりして、鬼の周囲を飛び回る。
しかし、どうして鬼は、ここまでスカタンなんだ?
『片目が見えないからよ』
え……あ、そうか!
『分かったみたいね』
「遠くでは大きく、近くでは小さくなっているんで、鬼の奴遠近感が掴めないんだ!」
『それだけじゃないわ』
「なるほど、解像度も遠近逆にしている、間近で小さく現れた時に解像度が低いから、より遠くに感じるんだな」
『それ以外にも、アンチエイリアスもいじってるから、完全に混乱してる』
「ああ、あのガビガビはアンチエイリアスだったのか!?」
アンチエイリアスは、オブジェクトやテクスチャの縁をきれいに処理する技術だ。これが荒く表現されると遠くにあるように感じてしまう。
『感心してる場合じゃないわ、いくわよ!』
「おお!」
セイッ!!
ズバ!!
アッチャンの草薙の剣は、見事に鬼の背中を絶ち割った!
ギヤアッ!!
のけ反った鬼は、断末魔の声を上げ、本丸の地面をゴロゴロ転がる。
「トドメ!」
胸を一突きすると、今度は大きな赤ん坊のように丸まって、立ち割った背中がパックリ口を開けた。
「何か出てくるぞ!」
警戒して飛びのくと退くと同時に、鬼の背中からは人のようなものが這い出て、立ち上がることもできずに仰向けにひっくり返った。
その顔、その姿を見て息を呑んだ( ゚Д゚)!
そいつは、まごうかた無き桃太郎であった!
☆彡 主な登場人物
- 織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生 ニイ(三国志での偽名)
- 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
- 織田 市 信長の妹 シイ(三国志での偽名)
- 平手 美姫 信長のクラス担任
- 武田 信玄 同級生
- 上杉 謙信 同級生
- 古田 織部 茶華道部の眼鏡っ子 越後屋(三国志での偽名)
- 宮本 武蔵 孤高の剣聖
- 二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
- 雑賀 孫一 クラスメート
- 松平 元康 クラスメート 後の徳川家康
- リュドミラ 旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ 劉度(三国志での偽名)
- 今川 義元 学院生徒会長
- 坂本 乙女 学園生徒会長
- 曹茶姫 魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
- 諸葛茶孔明 漢の軍師兼丞相
- 大橋紅茶妃 呉の孫策妃 コウちゃん
- 孫権 呉王孫策の弟 大橋の義弟
- 天照大神 御山の御祭神 弟に素戔嗚 部下に思金神(オモイカネノカミ)