大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・418『ミカサンパサランとネコメイド』

2023-06-27 11:24:59 | ノベル

・418

『ミカサンパサランとネコメイド』さくら   

 

 

 ここのとこ週に一回は学校休んでる。

 

 なんで休んでるかというと『宇宙戦艦三笠』ですわ。

 秋アニメなんで、放映までにはだいぶあるねんけど、放映が始まるまでに全編撮っておきたいというのが製作委員会の意向なんです。

 監督の宗武真さんは仕事が遅いのんで有名。

 監督の仕事は絵コンテ描くとこから始まるねんけど、これがなかなか書かれへん。

 ええ作品をつくるため、ええ加減なことはでけへんいうプロ根性やねんけど、ワンクール13回の放映で2回も総集編で誤魔化されては、テレビ局もスポンサーも、その代表組織の製作委員会もかなわんので、早めにスケジュールを組んでるとか。

 それで、現在のところ制作も順調で週に一回は東京に行って収録の仕事というわけです。

 

「出港用意! 碇揚げぇ!」

「各索放せ!」

「両舷前進微速! 150度ヨーソロ! 三笠出港!」

「三笠出港!」

「両舷前進元速! 赤黒無し! 航海長操艦!」

「航海長操艦! いただきました、両舷前進元速! 赤黒無し!」

「両舷前進元速! 赤黒無し!」

「「「ジャンジャン ジャンジャカジャンジャン ジャジャジャジャーン(軍艦マーチ)♪」」」

 

 ええと……別に収録風景やないんです(^_^;)

 リアル戦艦三笠のブリッジで出港ごっこをやってます。天音(酒井さくら)・樟葉(百武真鈴)・トシ(花園あやめ)ミカさん(吉永百合子)の四人で。

「ああ、やっぱり艦長の役ってカッコいいわよね!」

 吉永さんがいちばん無邪気。

「今のん、めっちゃハマってましたね!」

「そりゃそうよ、いつも男前の役やってるからね」

「いまの草薙熱子の声じゃなかったですか?」

「あやめも、いつかそういう役やりたいです」

「あはは、でも、やっぱり艦長は本人がやらなくちゃねえ」

 吉永さんが、ラッタルの下の凜太郎さんを冷やかす。

「勘弁してくださいよ、そんな露天艦橋でやるから、みんな見てますってば(;'∀')」

 ああ、たしかに、前の甲板どころか、三笠の外の公園にいてる人らも見てるしぃ。

 最初は「秋アニメ『宇宙戦艦三笠』よろしくお願いしまーす!」とアピールするつもりやったらしいけど、それは、さすがに凜太郎さん帰ってしまいそうやし、やめた。

 

 カンカンカンカン

 

 小気味よくラッタルを降りて艦内に。

「おお、ここだよここ!」

 真っ先に下りた吉永さんが指差したのは艦内神社。

「あ、もっと大きいのかと思ってた」

「そうだね、お地蔵さんくらいはあるかと思ってた」

 真鈴先輩とあやめさんが不足を言う。

「大きさって関係ないよ、浅草の御本尊は10センチあるかなしかの観音様だよ、ねえ、さくら?」

「ああ、うちは浄土真宗やさかい、よう分かりません」

「ええ、浄土真宗に観音様はいないの?」

「あ、もっぱら阿弥陀さんですよって(^_^;)」

「うん、でも、なかなか立派な神棚だ、みんなでお参りしよう!」

 神棚の下には、小振りやけど立派な賽銭箱があって、スタッフさんらもいっしょにお賽銭を上げてお参り。

「そこで問題です」

 凜太郎さんがふってくる。

「船のデッキは、上中下の甲板に分かれてるんだけど、ここは、その上中下のいずれの甲板でしょうか? 当たった人にはささやかだけど、すごい賞品が当たります!」

「「「中甲板!」」」

 女子三人の声が揃う。

「うう……残念、上甲板!」

「「「ええ!?」」」

 みんなで上を向く。

 上を向くと天井が見えるわけで、当然、その上にはさっきまで居った甲板がある。

「なんでだよ、凜太郎?」

 凜太郎さんを呼び捨てに出来るのは、やっぱりベテラン吉永百合子の貫録!

「あ、草薙熱子の声やめてもらえます、ちょっとオッカナイっす(;'∀')」

「ええ、おせーてくれないと、マコ泣いちゃうぞ」

 おお、これは『魔女っ子マコ』の声や!

「一番上のは最上甲板て言うんですよ」

「なんだと、上の上に最上とは、卑怯ではないか! 貴様、それでも男か!」

 おお、またもや草薙熱子!

「い、いや、そういうものなんっすよ。あ、景品はあげますから(^_^;)」

 ポケットから、なんやカイラシイもんを出した。

「「「あ、ミカさんのマスコット!?」」」

「あ、なんかホワホワしてて、手触りいいですねえ」

「気持ちいいわねぇ」

 真鈴さんあやめさんがスリスリする。

「ふつうのPVCのもあるんだけど、特別バージョン」

「いいなあ、これ……よし、ミカサンパサランと名付けよう!」

「あ、なんか怪しげでいいっすね!」

「わたしらのんは、ありませんのん?」

「鋭意制作中だって、だよね?」

 スタッフに振ると、ディレクターさんが指を七本立てた。

 

 次は、司令長官室。

 上甲板の一番後ろにあって、いちばん豪華な部屋。

 

「おお、アニメといっしょ!」

「今日は、特別に座ってもいいそうだ」

 凜太郎さんが、通せんぼのゲートを開けてくれる。

「ああ、ここだ、この席だ!」

 真鈴先輩が真ん中の席をスリスリする。

「え、なになに?」

「天音がマッパで召喚されて、生尻のまま落ちてきた席!」

「ああ、ここかあ」

「なになに、ここにさくらの生尻がぁ?」

「ちゃいます、天音ですよ、百合子さん!」

 なんか、自分のお尻触られてるみたいにゾクゾク。

「ええ、ここで、みんなに紹介する乗組員が登場しま~す」

「「「ええ?」」」

 スリスリもゾクゾクも止めて、ドアに注目。

 

「「「「しつれいしま~~す(^▽^)」」」」

 

 声が揃ったかと思うと、猫耳を付けた四人のメイドさんたちが入ってきた。

「ピレウスまでの航海の間、皆さんの世話をさせていただきます。ネコメイドのシロメで~す」

「クロメで~す」

「チャメで~す」

「ミケメで~す」

「「「「よろしくおねがいしま~す、ニャン!」」」」

 

 そろいのネコポーズで決めた四人は、6話から登場するネコメイドの声をやる声優さんたちだ。

 なんか、若いと言うか幼い感じがする……と思ったら。

 

 全員、中学三年生だって!

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校二年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 
  • 声優の人たち      花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎  
  • さくらの周辺の人たち  ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん)
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RE・かの世界この世界:140『パラノキアの化物船』

2023-06-27 06:24:55 | 時かける少女

RE・

140『パラノキアの化物船』テル  

 

 

 体が夜を欲している。

 

 R18的な言い回しだが、そんな意味ではない。

 ヘルムの守護神ヤマタが活動を停止して地上から光が無くなった。

 そのピンチヒッターに世界樹ユグドラシルの三神の一人ヴェルサンディが現れたのだが、いかんせんヴェルサンディは現在の時間を司る女神。過去の時間を司るウルズ、未来の時間を司るスクルドの三神が揃わなければ時間は動かない。

 我々は世界樹の島ユグドラシルを目指して船出した。ウルズ、ヴェルサンディの二神を起こすためだ。

 当直を終えてキャビンに戻るのだが、なんせ二百トンのフェリーボート。田舎駅の待合室ほどでしかないキャビンはカーテンを閉めても真っ暗にはならない。アイマスクなどもしてみるのだが、体が夜とは認識しないのだ。露出した手足だけではなく、服を通しても光は感じるようで、熟睡することができない。

 エンジンがうるさいから!

 ケイトは言う。たしかにマーメイド号のエンジンはうるさいし振動もハンパではないが、四号のそれと比べるといい勝負だ。それでも四号の狭い車内で睡眠はとれた。

「おい、次の次の当直だろ、そろそろ起きておけよ」

 ケイトの肩を揺さぶる。

 キャビンに戻ったら、次の次を起こすことになっている。起こしておかないと交代の時にブリッジが無人になる時間ができてしまうためだ。

 ……ところが、ケイトは起きない。

 あれほど「熟睡できない!」と文句を言っていたが、疲労のレベルが高くなると自然に眠れるのだろう。これが子どもの健康さだ。他の者を起こしてもまずい、時間になったら起こしてやればいい、どうせ微睡む程度の眠りしか得られないのだからな……。

 

 そろそろ起こそうかと体を捻ると、スピーカーからタングリスの声がした。

『テル、ちょっとブリッジまで来てくれ』

 わたしが眠れないでいるのはお見通しのようだ、ケイトをそのままにしてブリッジに向かった。

 

 ブリッジへのラッタルに足を掛けたところで気づいた。左舷十時の方角に見覚えのある船が見えるのだ。

 パラノキアの巡洋艦……

 シュネーヴィットヘンを襲ってきた巡洋艦……撃沈したはずなのに。

 一人では判断できない、一気にブリッジに向かった。

「同型艦か?」

「これで覗いてみろ」

 タングリスの双眼鏡で覗いてみる。あちこち傷だらけだが、傾きもせずに走っている。そうだ、あの巡洋艦は艦首がぶっ千切れて、砲塔が吹き飛んでしまったはずだ。そんな艦が浮いているはずがない。

 それとも幽霊船か……あきらかに五海里ほど彼方の海を白波を蹴立てて進んでいる。

 やはり、同型艦?

 しかし、洋上を航行中だったら、時間が止まった時に静止してしまって動けないはずだ。

「艦ナンバーを見てくれ、煤けて定かではないが83……8B……」

「8Bなんてありえないだろ」

「でなければ88……88なら、あの艦だ」

「まさか……幽霊船?」

「いや、化物船だ、クリーチャーと融合してしまったんだ」

「クリーチャーと?」

「パラノキアは、クリーチャーとの共存を謳っている。沈没したところで時間が止まってしまって、クリーチャーに憑りつかれてしまったんだろう、クリーチャーは時間が停まっても活動できるからな。まだ憑りつかれて間が無いんだ、修復と変態の真っ最中といったところだな」

「逃げを打つしか手が無いな」

「面舵三十度……逃げるぞ……」

 タングリスは、そろりと舵輪を回した……。

 

☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーヒール(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル (寺井光子)   二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼馴染 ペギーにケイトに変えられた
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 小さいが人化している
 ペギー         荒れ地の万屋

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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