大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 128『鬼かしま決戦・4』

2023-06-25 10:45:24 | ノベル2

ら 信長転生記

128『鬼かしま決戦・4信長 

 

 

 一息つくと、うなだれたまま桃太郎は語り始めた。

 

「バケツ谷で鬼をやっつけた。鶴ちゃん(桃太郎は、まだ俺のことを鶴姫だと思っている)にはずいぶん世話になって、お礼を言わなきゃって、ずっと思ってた」

「ああ、ずいぶんなお礼だったがな」

「鬼になってしまったからなぁ……」

「なんで、桃太郎が鬼になるんだ」

「バケツ谷のあと、鬼たちの宝物を持って帰って、爺ちゃん婆ちゃんに渡したんだ」

「ああ、その宝物を元手に村のインフラを整えたんだな、田畑も村の家々も立派になっていたぞ」

「鶴ちゃん、村には行ってみたのか?」

「ああ、爺さん婆さん、村の者たち、みんな困っていたぞ」

「なにか気づかなかったか?」

「うん?」

――おお――

――あ、そう言えば――

 勾玉の思金と草薙の剣のアッチャンが声に出しそうになるのを、胸と柄を押えて制止する。

 ここは、俺ひとりで相手にしなければややこしくなる。

「村に子供や若い者の姿が見えなかったか……?」

 俺を出迎えたのは桃拾いのジジババとオッサンオバハンばかりだったぞ。

「村が豊かになると、若い奴らはよそに行っちまう。昔は、一家で三人四人と子供がいたが、晩婚化が進んで出生率も、やっと1.2だ。これじゃ、50年もすれば人が居なくなっちまう」

「しかし、金太郎と浦島太郎がいたぞ。というか、おまえ金太郎の首を切ってしまっただろ!?」

「あいつは金太郎飴だ、切れば、いくらでも新しい金太郎が出てくる、進歩も成長もしないバカだ」

「浦島太郎は?」

「あれは、竜宮城とか言ってるけど、ようはよそに行って、行った先で引きこもっていたバカだ」

「容赦ないな、おまえ(-_-;)」

「容赦なくなんかないぞ! ちゃんとオニカシマに収容して鍛え直すとこだ」

「みんな逃げちまったけどな」

「鶴ちゃんが暴れるからだ」

「おまえは、なんで鬼になって村を荒らした。田んぼなんか青田刈りされてメチャクチャだったぞ」

「そこだよ!」

 グッと顔を押し付けてくる、間近で見ると、こんなに暑苦しい顔も無い。

「な、なんだ(;'∀')」

「やっぱり、桃太郎とかあてにしないで、自分の村は自分で守るって気概が必要なんだ。いつまでも桃太郎に頼っているようじゃダメなんだ!」

「だからって、おまえが鬼になってしまうこともないだろ。せっかく貸間に浦島太郎を住まわせても、嫌がらせや城の兵隊にしてるだけじゃ実りが無いだろ、みんな逃げちまってるし」

「オレにはオレの考えがあったんだ……」

「おまえ、バケツ谷の時もむちゃくちゃだったけど、なにか突き抜けてたぞ。真っ直ぐ突き抜けてた。いまのおまえ、グニャグニャにこじれて……」

「うるさい!」

「桃太郎……」

「だ、だから、それは鶴ちゃんがああ!」

 ノドチンコを震わせ顔中口にして迫ってくる桃太郎!

『『ダメだ!』』

 二人の神が叫ぶのと、桃太郎の口がトンネルのように広がるのが同時だった!

 

 パク!!

 

 危うく呑み込まれそうになり、辛くも二人の神に引っ張られ宙を飛んだ。

 強烈なGがかかってブラックアウトとホワイトアウトを繰り返し、意識が飛ぶ寸前に着地した。

 

 ドスン!

 

 狭まった視野の中に星がとびまくり、荒い呼吸を数十回繰り返して、ようやく視界が戻る。

 

 傍らで思金が畏まり、あっちゃんは草薙の剣になって芝の上に静もっている。

 

 芝は百坪ほどの広がりがあって、真ん中には頭ほどの石が座っている……どうやら御山に戻ってきた。

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ)

  

 

 

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RE・かの世界この世界:138『動いていたものは動かせない』

2023-06-25 06:49:55 | 時かける少女

RE・

138『動いていたものは動かせない』ブリュンヒルデ  

 

 

 自分(車長)とケイト(装填手)の間にシートを付けた。

 

 シートと言ってもパイプ椅子の上半分をくっ付けたもので、横のハッチから出入りするときは折りたたむ。

 まあ、小柄なわたしとケイトの間なので、なんとか収まる。

「お客さんで乗っているのも申し訳ないですから、仕事を教えください」

 ユーリアの申し出ももっともなので、取りあえずはケイトと交代で装填手をやってもらうことにした。

 装填手というのは弾を込めるだけの仕事で地味に見えるが、戦闘中はいちばん運動量が多い。

 車内のあちこちに格納されている砲弾を車長の命令で取り出し、迅速に砲尾に籠めるのが仕事だ。

 4号の75ミリ弾は一発で7キロ近い重さがあって、足もとのラックから取り出して籠めるのはけっこうな運動だ。弾は装填と同時に尾栓を閉じるので、籠める時は手をグーにする。指を伸ばしたままで籠めると尾栓を閉じる時に指を挟まれてしまうからだ。日常生活で手をグーにして物を収めることなどほとんどやらないので、うっかりすると、すぐに指を伸ばしてしまう。

 発射の時は砲尾が反動で後座してくる、リコイルというやつだ。ボンヤリしていると、砲尾がまともに腹に当るので、腰を曲げて砲尾を避ける。

「アハハハ((´∀`))」

 この練習をすると、ユーリアは笑ってしまう。

「なんか、めちゃくちゃへっぴり腰(#^▽^#)!」

「そ、そうか(#'∀'#)」

「なんか可笑しい~」

 アハハハハハ

 今まで平気だったケイトも意識して顔を赤くする、狭い車内に笑い声が満ちて、これならやっていけるだろう。

 そして、日中はともかく、寝る時は窮屈すぎるので納屋の中からシートを出してゲペックカステン(砲塔後部の物入れ)に括り付けた。夜間は砲塔を横に回し、シートを伸ばしてテントにすることにした。これも一度練習「キャンプみたいで、夜が待ち遠しい!」と喜ぶユーリア。

 ユーリアの明るさ、多少の不便や苦労は楽しさに変換してしまう姿勢というか個性は天性のもののようだ。

 この弾みの良さが、ヤマタ神の電池としてのエネルギーだったのかもしれない。

 神々は美しいだけではなく、こういう明るく充溢した精神を好む。それは、我が父のオーディンも例外ではあるまい。

 翻って見ると、わたしは、父に対していささか刺々しかった。いやな娘だったかもしれない。

 譲れない相克があってのことなのだが、もし、父と和解する時が来たら、少し気を付けようかなどと思ってしまう。

 不思議な少女だユーリアは。

 

 二時間ほどで準備を整えると出発だ。

 

 ユーリアは眠ったように時間の止まっている母のアグネスと兄のヤコブに別れを告げた。

「では行くぞ、ユーリア」

「…………はい!」

 ふっきるようにユーリアが乗り込むと、四号は、取りあえずの目的地であるヘルム港を目指した。

 乗って来たシュネーヴィットヘンはドックに入ったままだ。たとえ動いたとしても、この人数では一万トンを超える輸送船を動かすことは出来ない。なんとか四号を載せられて、外洋を航行できる船を見つけなくてはならない。むろん、四号の乗員だけで操縦できる小型の輸送船、あるいはフェリーボートだ。

「ヘルムには大小六つの小島があって連絡船が通っています。運が良ければ、出港前の船を掴まえられると思います」

 港に舫っている連絡船が居ることを願うばかりだ。

「あそこに居ます!」

 ゲートを潜って岸壁沿いに走り出したところでユーリアが指差した。一つ向こうの桟橋に二百トンあまりの連絡船が見えたのだ。舳先がはね橋式になっていて車が乗せられるタイプだ。

「……だめだ」

 連絡船は出港ししたばかりで、舳先のゲートは閉じられ、二メートルほど海に乗り出している。

「おいらが飛び乗って停めてやる!」

「よせ!」

 ロキが飛び出し、砲塔の上からジャンプした。

「うわ!」

 勢いよく飛び移ったところまでは良かったが、舳先の上でバランスを崩して海に落ちてしまった。

「「「ロキ!」」」

 ポヨヨーン

 なんと、連絡船の周囲の海面はゼリー状に固まっている。ロキは、そのまま歩いて岸壁に上がってきた。

「動いているうちに時間が止まったものは固まってしまうんだろう、周囲の海面も影響を受けて固まっているんだ」

 そう言うと、タングリスは石ころを海に投げた。

 船の周囲は、ちょっと弾んで、石は海面に載ってしまう。数メートル離れた所では、普通に石は沈んでいくのだ。

「時間が止まった時に動いていたものは動かせないんだ」

「しかし、停まっている連絡船はあるのか?」

「……そうだ、ドックに行けば!」

「シュネーヴィットヘンは動かせないよ」

「違うんです、小型船舶用のドック。きのう皆さんを出迎えた時にメンテナンスの終わった船があったんです!」

「行ってみよう!」

 

 港の外れのドックに向かうと、乾ドックにメンテナンスを終えたばかりの連絡船マーメイドが鎮座していた。

 

☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーヒール(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル (寺井光子)   二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼馴染 ペギーにケイトに変えられた
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 小さいが人化している
 ペギー         荒れ地の万屋

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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