大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

くノ一その一今のうち・60『空堀商店街』

2023-06-22 13:40:50 | 小説3

くノ一その一今のうち

60『空堀商店街』そのいち 

 

 

 大手門を出て南に走る。

 少し走ると地下鉄の駅が見える……谷町……四丁目?

 

『空堀商店街はもう一つ南です、谷町六丁目!』

 えいちゃんが注意してくれる。

「阿吽の呼吸だね」

『カバンの中にスマホがありましたから』

「しかし、外堀と惣掘の間が駅一つ分、巨大な城だったんだな」

 先日の甲府城も小さくはなかったが、目算でも甲府城が四つぐらいは入りそうな広さだ。

『北の端は天満橋ですから、南北で二キロ近くあります』

 二キロ四方……ちょっと手こずるかもしれないが、やるしかない。

 

 空堀商店街の入り口は、谷六駅のさらに南100メートルのところだった。

 

 アーケード入り口、向かって右がたこ焼き屋、左がパン屋。

 いかにも日常の生活に根差した商店街。アーケードの看板も『はいからほり』とダジャレめいていて好ましい。

『ちょっと身構えてしまいます(;'∀')』

 えいちゃんの気持ちは分かる。

 商店街は西に向かっての下り坂になっている。

 むろん、アーケードの中には十分な照明があるんだけど、途中で縦にも横にも微妙に曲がっていて西側の出口が窺えない。これから木下家の、おそらくは本拠地に足を踏み込むのかと思うと、えいちゃんでなくても身構えてしまう。

「行くよ」

 身構えていては怪しまれる。

 時間はほど良く三時半、高校の授業が終わって、平均的な高校なら全生徒の半分は所属している帰宅部がそぞろ下校する時間帯。

 フッと拳一つくらいの息を吐いてアーケードに入る。

 地元民以外にも、軽観光という感じの者もチラホラ。沿道の店々も戦前からあったような古寂びたものから、占いやらカフェやら原宿めいたものも見えて、シャッターが閉まったままという店は一軒も無い。商店会の努力や情報発信が実を結んでいる感じで好ましい。

「高校生も歩いている、溶け込みやすい」

『近くに空堀高校があります。駅に行くには少し遠回りですけど』

「少し遠回りでも、下校途中に寄ってみようって気にさせるんでしょ。上出来の商店街」

 ふと、この程よい賑わいは木下家が関わっているせいかと思ったが、気の回し過ぎだろう。これまでの木下の動きを見てもリアルの世界には一歩身を引いているはずだ。

 しかし……商店街の端が見え始めたというのに、怪しい気配が無い。

 ここが本拠地の入り口であって、木下の手の者の出入りがあるのなら、どこかに気配や残滓があるはずだ。

 それを見逃さない程度には猿飛たちと渡り合ってきている。

『少し戻ったところに惣堀の遺構があります』

「よし、行ってみよう」

 ゆっくり振り返って、チラホラ歩いている空堀高校生の空気に紛れる。

 呼吸と歩速を合わせれば、少々の制服の違いなどは気づかれない。

 

『ここです』

 

 途中、下り坂の路地が見えて、えいちゃんが知らせてくれる。

 あたかも、この先に自分の家があるという感じで路地に入る。下り坂は石段になっていて、降りた先の左側に高さ5メートルほどの石垣の遺構がある。隙間をコンクリートで埋めているが様式的には野面積と打込接の混在で戦国の名残を感じさせる。

 それに、微かに木下のにおいを感じる。甲府城稲荷曲輪の井戸、甲斐善光寺の戒壇巡りで感じたのと同種のにおいだ。

「なにかある……」

 視線を石垣から下ろすと手押しポンプが目に入った。

『これですか?』

「ああ、そうなんだが……」

 手押しのクランクは囲いがされて動かすどころか触れることもできないようにしてある。

『触れませんねえ……』

「いや、そうでもない」

『え?』

 ポンプの蛇口を捻ってみる。

 

 カク

 

 小さく手ごたえがある。角度にして1度ほど動いた。

 しかし、それは鍵のあそびのようで、実際にはもっとはっきりと手ごたえがありそうに思えた。

 おそらくここだ。

 しかし、鍵を開くにはもう一つ別の鍵があるような気がした。

「もう一度、商店街に戻る」

『はい』

 石段を一段飛ばしに商店街に戻った。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
  • 杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
  • えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
  • 豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟

 

 

 

 

 

 

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RE・かの世界この世界:135『ヘルム島のイメージ』

2023-06-22 06:23:57 | 時かける少女

RE・

135『ヘルム島のイメージ』タングリス  

 

 例えばこれなのです。

 
 ヘルム神の頭上に郵便ポストほどの大きさの懐中電灯が現れた。

「懐中電灯というのは、機能別に表現すると、こうなります」

 懐中電灯は、三つに分かれた。

 
 ボディー  電球   電池

 
「ほかにスイッチや配線やレンズ等もありますが、それをボディーに含めると、この三つです」

 ボディーと電球と電池は、いったん元の懐中電灯に戻ってから、また三つに分離した。小学生に説明するように分かりやすく、こういう授業めいたことが苦手な姫もしっかりと頷いておられる。

「ボディーにあたるものがヘルムの島です」

 ボディーの下にヘルム島のイメージCGが現れた。

「電球がわたくしです」

 分かりやすく神という文字が現れた。

「そして、電池が少女です」

 電池が少女の姿になった。

 

 ボディー=ヘルム島  電池=少女  電球=ヘルム神

 

 そして、もう一度三つのものが合体し、懐中電灯が点灯し、やがて、電球の輝きが弱くなって消えてしまった。

「電池が切れました……切れた電池は廃棄されて、新しい電池が入れられます」

 少女の姿が消えて、新たに少女2が現れた。

 懐中電灯のお尻の蓋が開いて、少女2の電池に入れ替えられる。

 
 そういうことか……。

 
「そう、生贄の少女たちは、この電池なのです。だが、誤解しないでください。神は電池を少女の姿でお遣わしになるのです。電池は十七年かかって島の人たちに愛しまれることによってフル充電されます。そして、いま入れ替えられようとしている電池が……」

 またも電池が入れ替わって、少女2はユーリアの姿になった。

 

 しかし……電球は一度灯ったきりで消えてしまった。

 

「……お分かりになったでしょうか」

 姫が、感に打たれたように立ち上がると、かすれた声でおっしゃった。

「それ、電球に寿命がきたということだろうか?」

「はい、灯りが灯らない懐中電灯に存在理由はありません」

「それって……懐中電灯全体が意味をなさなくなったと言うことなんだろうか?」

「はい、ですので、電池はお返ししますね」

 

 説明のためのオブジェが消えると、エメラルドの上のヘルム神の姿がダブった。

 その片方がハッキリとユーリアの姿になって我々の前に降り立った……。

 

☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーヒール(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル (寺井光子)   二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼馴染 ペギーにケイトに変えられた
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 小さいが人化している
 ペギー         荒れ地の万屋

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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