大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

くノ一その一今のうち・61『商店街の秘密』

2023-06-28 14:59:38 | 小説3

くノ一その一今のうち

61『商店街の秘密』そのいち 

 

 

 商店街に出て、西に下った四辻、昆布屋の角にポストと並んで纏(まとい)が立っている。

 神田祭で神輿が担げない子どもたちが持つような小さな纏で、見通すと、商店街の辻々に立っているようで、おそらくは商店街振興のマスコットのようだ。

「うわあ、かわいい(^▽^)!」

 今や顔文字と並んで世界共通言語であるJK語で賛美の声を上げる。これさえ言っておけば、シゲシゲ見ようが写真に撮ろうが怪しまれることはない。

『先っぽに付いているのは千成瓢箪です』

 えいちゃんがチェックしてくれる。

 パッと見には鈴なりのジャガイモだが、ちょっと身を引いてみて見るとたしかに千成瓢箪。

『やっぱり太閤秀吉との関りを大事にしてるんですねえ』

 それだけではない、ポストと纏の後ろに石碑がある。

――旧町名継承碑――

 碑にはめ込まれた石板には、このあたり現在は谷町7丁目だけれど、昔は南空堀町と表記されていたとある。

 これがもう一つの鍵かもしれない!

 動画を撮るふりをしながら、もう一度観察。

 あ……( ゚Д゚)!

 千成瓢箪は真ん中に大きな瓢箪が逆立ちしていて、その周りを小さな瓢箪が取り巻いているんだけど、後ろの方、取り巻き瓢箪の一つが欠落している。

 これには意味があるはず。

 困った時の風魔の魔石。

 これまでも、草原の国やら甲府城の地下やらで、わたしを救ってくれた。

――南無八幡魔石大明神、我に、このからくりの秘密を解かせたまえ――

 密やかに念じる……んだけど、魔石は沈黙したまま。

 むむむ……魔石は謎解きとかの頭脳戦には向いていないのかもしれない。

『あ、お札の方が!』

 えいちゃんに促されてポケットのお札に触れると、ほんのりと暖かい。

――お願い、大和大納言さま、教えてください――

 念ずると、住居表示の『谷町七丁目』の七が微妙に浮かび上がって来る。

『あれですかね!』

 えいちゃんに促されて、七に触れてみるが何事も起こらない。

 あ、そうか、七はヒントだ……今度は瓢箪が欠落したところが薄く光る。

 ゲームだったら、ここに来るまでにキーアイテムの瓢箪を手に入れていて、ここではめ込む的なフラグが立つんだけど、持ってないから……そうだ!

 瓢箪列の欠けたところから七つ目の瓢箪をグリっと回してみる。

 カク

 ポンプの時と同じ手応え。

 一歩引いて見ると、横のポストの集配扉がわずかに開いている。

 ここだ!

 一瞬、周囲に気を飛ばし、人が見ていないことを確認、同時にポストの扉を全開にする。

 ポストの中は、薄暗く、地下に向かって消防士が出動で使うようなステンレスのバーが降りている。

 セイ!

 飛び込むと同時にバーを掴んで滑り降りる。

 カチャ

 同時に頭上の扉が閉まる音がする。

『キャ』

「大丈夫、人には見られていない」

 感覚的には三階分ほど下って、足が石畳を認識する。

 目を凝らすと、商店街の真下を通っている地下道のようで、横方向にいくつかの枝道が伸びて、立派な地下通路になっていた。

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
  • 杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
  • えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
  • 豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟

 

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RE・かの世界この世界:141『絶体絶命!』

2023-06-28 06:32:04 | 時かける少女

RE・

141『絶体絶命!』タングリス 

 

 

 

 マーメイド号の最高速度は15ノットでしかない。

 
 パラノキアの巡洋艦と融合したクリーチャーは33ノットで迫って来る!

 33ノットは巡洋艦の最高速度だ。このままではすぐに追いつかれてしまう!

 前回の戦いでは、かろうじて勝てたが。今度の敵の本性はクリーチャー。こちらの船は一万トンの貨客船シュネーヴィットヘンではなくて200トンそこそこのフェリーボートのマーメイド号なのだ。

 まっすぐ突っ込まれてくると、全速力で逃げても相対速度18ノット(時速32キロ)で追われることになる。サッカーのフォワードが全速力で小学生を追い回すようなものだ。

 できることなら戦いたくないが、戦闘配置だけはとっておいた方がいいだろう。

「テル、戦闘配置だ!」

「もう完了している!」

 デッキの四号は、クリーチャーに向けて砲口を指向しているところだ。これまでの戦闘でみんな慣れてきたんだ、戦闘配置をかけるまでもなく、自分で目的をもって行動できるようになった。

 しかし、こんな小さな戦闘集団の技量が上がっても、目の前のクリーチャーに太刀打ちできるものではない。

「姫、逃げることを専一にします。緊急時以外は発砲しないでください!」

――分かっている。操舵は任せた、逃げ切ってくれ!――

 ブリッジのスピーカーに姫の声が響く。

 

 おや、あいつ……?

 

 クリーチャーは全速で追ってはくるのだが、時おり速度が落ちて頭がふらついている。

 

 クリーチャーは我々を襲うよりも、どう変態していいかを試すことに熱中し始めた。巡洋艦のパーツを様々に組んでは解している。その様子は、子どもが新しい玩具に夢中になっているような。或いは巨大なナメクジがファッションに目覚めてしまったようで、見ようによってはユーモラスでさえある。

 マーメイドを追いかてくる方向も、かなりのブレが出てきた。我々を敵だとは認識しきれていないのかもしれない。追ってくるのは、クリーチャーの習性なのだろう。時間が停まった洋上では、動いているものは当のクリーチャーの他は、我々のマーメイド号だけなのだ。

 ニ十分ほどもすると、クリーチャーは空飛ぶ武装クジラの姿に固定され、ゆっくりと海面を離れ、それ以上変異することをやめた。

――タングリス、間合いを取ってくれ!――

 直ぐに姫が反応する。

 気持ちは分かる。空を飛ばれては四号の主砲を最大仰角でかけても狙えないのだ。

 しかし、15ノットの速度ではいかんともしがたい!

 悪いことに、変態に飽きたクリーチャーは本気でマーメイド号を指向し始めた。

 もう、出来ることは、奴の指向とタイミングを見計らって突っ込まれる寸前に舵を切るしかない。

 ザザー 

 ザザー

 二度は躱したが、次は危ない……舵輪を握ぎる手に力が入る……今だ!

 奴の微妙な姿勢変化に進路予測をして、その反対方向に舵を切る!

 ザザ

 しまった!

 敵は右に回るフリをしたが、鼻づらを左に向けると、体をよじってきれいなカーブを描いて突っ込んでくる。

 読まれていたのだ!

 尻尾を勢いよく振ってさらに進路を修正すると、真っ直ぐに迫ってきた!

 絶体絶命! 

 まるでモビーディックに迫られたキャッチャーボートだ。

 このままエイハブ船長のように海底に引きずり込まれるのか!?

 
 ザザーーーーー!

 ドッゴーーーン!!!

 
 一瞬黒い影が過り、砂を噛んだ時のような音が響いたかと思うと、マーメイド号の左舷に巨大な水柱が立った!

 今のはなんだ!?

 首を巡らすと、四時の方角、高さ200メートルのあたりに、抜いた剣を緩やかに下段に構える姿があった!

 背後に空飛ぶ戦車隊を引き対れ、果敢にクリーチャーを追うムヘン方面軍総司令官トール元帥の雄々しき姿が!

 

☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーヒール(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル (寺井光子)   二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼馴染 ペギーにケイトに変えられた
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 小さいが人化している
 ペギー         荒れ地の万屋

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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