大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・035『高校生集会とシャンプーと』

2023-06-26 10:39:52 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

035『高校生集会とシャンプーと』   

 

 

 正しく漢字でと書くと時司巡なんだけど、初見で読める人はめったにいない。

 

 じし・じゅん? とき・しじゅん? とか読まれる(^_^;)。

 たまに苗字の方を『ときつかさ』と正確に呼んでくれても、名前は『じゅん』と読まれてしまう。『じゅん』という読み方は男にも女にもあってかっこいいんだけど、正しい読み方じゃないので凹む。

 時司というのは、ご先祖が朝廷で時間の管理をする役職に就いていたので、遥か昔に役職名が苗字になったんだって。

 一族の女子は名前が一字。

 お祖母ちゃんは応(こたえ) お母さんは旋(まわり) わたしが巡(めぐり)

 小学校の時、交通安全の指導に来た女性警察官のおねえさんがカッコよかったので、将来は女性警官になろうと思ったことがある。

 でも、時司巡巡査……きっと誤植と思われる。

 で、その日のうちに諦めた。

「ねえ、せめてさ、巡里とか巡梨とかにしたらよかったのに、だったら『めぐり』って読んでもらえるよ」

「気にすることないじゃない、お祖母ちゃんの同僚で小林って苗字の一佐がいたんだけど。本人も面白がってたよ」

「え、どうして?」

「だって、小林一茶と同じになっちゃう」

「こばやしいっさ?」

「ほら、俳句読む人、『やせ蛙 まけるな一茶これにあり』とか『雀の子 そこのけそこのけお馬が通る』とか詠んだひと」

「なに、その俳句おもしろーい!」

 お祖母ちゃんは人の気持ちを誘導するのがうまい。

 それからは、友だちは「ときつかささ~ん」ではなくて、だんだん「めぐり」とか「メグ」とか「メグッチ」とか呼んでくれるようになった。ひょっとしたら、お祖母ちゃんが魔法をかけたのかもしれない。

 

 入学して三か月、その呼ばれ方が微妙に変わってきた。

 

 まあだいたい「メグ」って呼ばれるんだけど、時どき「グッチ」と呼ばれる。「メグッチ」から「メ」が取れたかたち。

「ねえ、グッチ、グッチ」

 最初に「グッチ」を考案したロコが、目を輝かせてわたしの席に寄ってきた。

「真知子さんが……」

 言われて、真知子の席に目をやると「あっちです、でも、ガン見しちゃダメですよ」と注意され目の端で捉えたのは、委員長の高峰君と楽しそうに語り合ってる本邦初公開の真知子のツーショット。どちらも普段はクールな優等生って感じなんだけど、とってもフレンドリーで話が弾んでる。

 

「高峰君が来てるとは思わなかったわ」

「分科会ハシゴしてたし、ちらっと見えて似た人だなあって思っただけだから」

「私服だったしね」

「横田さんは、ずっと、あの分科会だったんですか?」

「うん、安保とかベトナムとかは重いでしょ、それで、今度はサブカルチャーにしてみたの」

「ぼくは、ああいうのには疎くて、あの賑わいは羨ましかったけどね」

「こんど、高校生集会とは別に鑑賞会とかやろうって話になってるの、ギターとかも持ってくる人いるから、きっと盛り上がる」

「へえ、発展してるんだなあ」

「ほら、今度はね……」

 メモ帳を出して楽しそうに説明する真知子、遠慮しながらも、それを覗き込む高峰君。

 あの近さだと、シャンプーの香りとかモロだよ(^△^;)。

「真知子さんはエメロンですぅ」

「え、メロン?」

「アハハ、エメロンですよエメロン!」

「あ、そかそか(^_^;)」

 適当に合わせる。

 だって、ロコの笑い声が大きいので、真知子も高峰君もこっち向いたし(n*´ω`*n)。

 

 休み時間に階段の踊り場で、スマホをチェック。

 高校生集会は、意識高い系の高校生たちが集まっていろいろ討論とかお話をする、たぶん、左翼政党系のらしくて、令和の時代でもやってるっぽいけど、よう分からん。

 エメロンはエメロンシャンプーとかリンスとか、昔は絶大的に流行ったらしい。ハニー・ナイツ「ふりむかないで」とかいう歌が出てきて、聴いてみると壮絶に面白い!

 泣いてぇいるのか~笑っているのか~♪ ふりむ~かないで~○○のひ~と~♪

 

 ヤバイ! つぎは水泳だ!

 

 着替えを持って更衣室へ!

 速攻で着替えたんだけど、点呼に遅れてしまう。

「トキツカサメグリ! グランド一周してこーい!」

「あ、やっぱし……」

 宇賀先生は、正確にわたしの名前を呼んで罰則の『水着でグランド一周』を命ずる。

 相方組の六組の女子にも遅刻の子が居て、ふたりでグランドを走る。

 校舎の方からも、素通しフェンス越しの道路の方からも視線を感じながら走ったよ。

 六組の子はプロポーション抜群だし、8割は、そっちを見てる。

 令和だったら、ぜったいセクハラ、パワハラ。

 お祖母ちゃんみたいだったら、ステルス魔法で見えなくできる。

 ほんと、走り終わってプールに戻るまで本チャンの魔法少女になろうかと思ったよ。

 

 昼休み、真知子と高峰君を中心に高校生集会とかの話題で盛り上がる。

 10円男の加藤高明が鼻で笑ってる感じ。唯一爽やかだった髪も伸びてきちゃってさ、ちょっと、感じ悪い。

 こんど、みんなで真知子の言ってる鑑賞会というのにいってみることになる。

 ちょっと楽しみ。

  

彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。

 

 

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RE・かの世界この世界:139『みんなで協力……なんだけど』

2023-06-26 06:50:36 | 時かける少女

RE・

139『みんなで協力……なんだけど』タングリス  

 

 

 

 乾ドックに海水を満たし、マーメイド号のエンジンを始動。

 

 ドド ドドドド ドドドドドドドドドド

 
 二百トンのマーメイド号は一万トンのシュネーヴィットヘンとは比べ物のならないほど振動する。

 ア・ア・ア・ア・ア・ア・ア・ア・ア・ア・ア・アハハハ……((^O^))

 ロキが振動で声を震わせて喜んで、ポチは甲板の振動をお尻で受けて煎り豆のように弾んで遊んでいる。

「もう、二人とも子どもなんだから・ら・ら・ら・ら・らららららら~((^▽^))/」

 二人に呆れたケイトも、語尾がトレモロになってくると、陽気に『ら』を転がして可笑しがっている。

「水位が海と同じになった」

 機械小屋のランプがグリーンになった。珍しモノ好きの姫がテルといっしょにポンプを操作しているのだ。

 ドックに水を満たし海面と同じ高さにしなければ、船を海に出せない。

 

「マーメイドも準備OKです! ゲートを開けてください!」

 操舵室からメガホンで叫ぶ。数秒、ウィーンというモーターの音がしたが、ガクンという音がしてモーターは停まってしまった。機械小屋で、二人が焦っているのが分かる。二度三度と試してみるが、モーターは直ぐに停まってしまう。

「あれって、安全装置が働いているんじゃないかしら?」

 ユーリアが眉を寄せて推測する。

「どこかで負荷がかかり過ぎているのだろうか?」

 時間が止まってしまっているのだ、予期せぬ不具合が起こっているのかもしれない。ひょっとしたら、我々の船出を喜ばない者たちが妨害しているのかもしれないとまで思った。なんせ、ヘルムの守護神であるヤマタの力が消滅してしまったのだ。なにが起こるか知れたものではない。

 手分けしてドックの周囲を警戒してみよう……そう思った時、ポンとユーリアが手を打った。

「ゲートにも注水しなくっちゃ!」

 
 あ!?

 
 盲点だった!

 

 最大三千トンの船が入れるドックはゲートもいかつく、幅が二十メートル、高さが十メートル、厚みが一メートルもある。しかし、中はガランドウで、ドックに水を張れば浮力を持ってしまう。そのためゲートの回転部分に異常な力が加わって開かなくなってしまったのだ。

「ゲートの注排水ポンプはありますかーー!?」

 メガホンで聞くと姫が×印のサインを返してきた。

「タングリス、あれじゃないかなあ?」

 ケイトがゲートの横を指さすとロキがポチに指示を与えて調べさせに行かせる。

「なにか、スイッチがあるの~(^▽^)/」

「それだ!」

 機械小屋を飛び出した姫とテルがドックの縁を周って制御盤に取りついた。

 構造は簡単なようで、すぐにスイッチが入れられ、くぐもった音がしてゲート内部のタンクに海水が満たされていく。

 

 三十分後、満水になったゲートを開き、無事にマーメイドは海に乗り出した。

 

 これからは、なんでも、この六人とポチでやっていかなければならない。なんせ時間が停まって、動けるのは我々だけなのだ。協力しあわなければな。

 あらためて船を岸壁に着け、四号を載せて本格的に海に乗り出す。

「陽が落ちたら、交代でブリッジに立とう」

 日没から日の出までを五つに分けて当直を決める。それまでは、わたしが舵輪を握る。

 あと一時間ほどか……そう思ったが、いっこうに日は傾かない。

 

 そうだ……時間が停まっているのだから、日が暮れるわけがない……。

 

 ずっと太陽に照らされっぱなし、それが海面への照り返しと相まって光の強さは陸上の比ではない。目的地のある航海なので雲の陰ばかり拾って行くわけにもいかないだろう。なるべく短時日で着かなければならないし、小型船には不慣れな者たちばかりだ。

 ああ…………

 ドッと疲労感が押し寄せてきた。

 

☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーヒール(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル (寺井光子)   二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼馴染 ペギーにケイトに変えられた
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 小さいが人化している
 ペギー         荒れ地の万屋

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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