大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 126『鬼かしま決戦・2』

2023-06-13 16:39:46 | ノベル2

ら 信長転生記

126『鬼かしま決戦・2信長 

 

 

 城の大手門は南西にあったが、本丸の表門は北東にある。

 

 北東は丑寅の方角であり、古来不浄の方位と云われ、城であろうと館であろうと表門を構えることは禁忌とされる。

『丑寅に表門を構えるとは、鬼とは申せものを知らぬな』

 思金(おもいかね)が憐れむ。

「丑寅は鬼門と言うではないか。それに、大手からは正反対。間には迷路のように貸間が続いて妨げになっている。防御の構えとしても間違ってはおらん」

『さすがは信長、縁起や吉凶には無頓着じゃ』

「それに、アッチャン、いや草薙熱子も面目躍如のようだぞ」

 本丸方向からは、鬼の傀儡と化した浦島太郎たちの怖れの声と悲鳴がかまびすしい。

 3D映像のような熱子には何を仕掛けても無効だ。

 切ろうが突こうが蹴り倒そうが、手ごたえがあるはずもない。

 それどころか、なまじ大勢で仕掛けては味方の矢玉に倒れる者も出る。なんせ実体が無いのだ、熱子の体を突き抜けた槍や刀や矢が反対側の味方に当る。恐怖と混乱の中、同士討ち同然になっているのが本丸の堀端を走っていても分かる。

 おお!?

 鬼門にたどり着くと、事態は予想を超えていた。

 鬼門はすでに開き、隙間から浦島太郎たちがまろび出て丑寅の方角に遁走し始めている。

『おお、熱子の数が増えておる!』

「……違うな」

『なぜじゃ、ざっと見ても五六人の熱子が見えるぞ』

「左上を見ろ」

『左上?』

 視界の左上に二桁の数字が映りこんでいて、30~36の値でチラチラと上下している。

『なんじゃ?』

「鬼貸間のfpsだ」

『エフピーエス?』

「"frames per second"」

『ますます分からん』

「動きが早い。120fpsほどでなければアッチャンの動きは連続しては映せないんだ。俺たちもスピードを上げるぞ!」

『お、おお!』

 速度を上げると、あっという間に鬼門の前に出てしまった。

 ウワアアアアアア! アワワワワ!

 文字通り浦島太郎どもは浮足立って、大方が逃げ散って、それを掻きまわすように熱子が追いかける。

 鬼門を潜って踏み込むと、本丸はもぬけの殻。

 あちこちに夜戦を覚悟して据えられたかがり火がパチパチと音をさせて燃えているだけだ。

 

 今度は俺が戸惑う番だ。

 

 天守や櫓、逆茂木や盾の後ろに気を飛ばすが、まるで気配が無い。

 二の丸から見上げた本丸には慌てふためく浦島太郎たちに紛れて、確かに鬼の気配があった。

 さすがに頭目だけあって、その気配は根性なしの家康ならウンコを漏らしただろうぐらいに強烈だった。

 万一漏れたら「これは味噌じゃ(;'∀')」……いや「これはカレーじゃ(^_^;)」……さすがに、これは無し!

 こめかみを汗が伝い落ちる。

『……その大かがり火の傍に寄れ』

 思金が鳩尾の骨を伝って囁く。

『背後の地面に映る影に、跳躍して、この儂を投げつけよ』

 それまでの頼りないスケベジジイではなく、凛とした男神の声だ。

 天照大神でさえ、危急の時には耳を傾けたと言われる高天原の御意見番の声だ。

 

 セイ!

 

 振り向きざま、跳躍しつつ後ろを向き胸の勾玉を投げつけた。

 

 グエ!

 

 すると、影は忽ちのうちに立ち上がって鬼の姿を現した。

 勾玉が左目に当ったのか、鬼は左手で目を庇いながらも憤怒の右目で睨み据え、腰の太刀に手をかけた……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ)

  

 

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RE・かの世界この世界:126『荒地の万屋』

2023-06-13 06:26:44 | 時かける少女

RE・

126『荒地の万屋』テル  

 

 

 

 それは荒地の万屋だった!

 
「「「「「ペギー!」」」」」

 みんなの声が揃った。

「いやあ~、あんたたちだったのか!?」

「ペギーさんて、魔法が使えるの!?」

「いやはやいやはや……」

 ペギーは目をまん丸くして慌てたペンギンのように両手をパタパタさせて下りてきた。

「あんたたちは大得意さんのカテゴリーに入ったみたいだねえ(^▽^)」

「大得意?」

「ああ、大得意さんになるとね、ピンチの時は転送されるんだよ。さあてっと……ここはヘルムの島……神域の入り口に差しかかったところだね……それも、かなり深刻だ。神域が俗域と分断されてしまっているよ」

「分かるんだ」

「伊達に荒地の万屋やってないからね……おやおや、これから大変な戦いになろうってのに戦車を金ぴかに塗っちゃダメでしょ」

「金ぴかに塗ったんじゃなくて、金ぴかのピカ抜きにされたんだ」

「ピカ抜きの……って、この戦車、ゴールド!?」

「ああ、主神オーディンの娘にして堕天使の宿命を背負いし漆黒の姫騎士であるわたしでも使えぬ錬金魔法だ」

「……純度99.6!」

 さすがは荒野の万屋、一瞥しただけで純度を見抜いた。

「でも、純金の戦車ってダメなんだぞ、重くて柔らかすぎて使い物ならないんだぞ」

 ロキが仕入れたばかりの知識をひけらかす。

「ああ、そうだよ。そういう相手だから、子ども二人は連れて行ってもらえないというところかねえ」

「ああ、我々の武器も純金に変えられてしまって、使い物にならない」

「それで、この荒れ地の万屋が転送されたというわけなんだなあ」

「そうか、ちょっと品物を見せてもらおうか」

 やっと、我々も思い至ってペギーの品ぞろえを見せてもらうことになった。

 わたしは勇者の剣、タングリスは魔弾のワルサー、ヒルデは賢者のシュシュ、そして、それぞれのレベルに見合った魔法の福袋。

「支払いはカードでいいか?」

 タングリスがカードを取り出すと、ペギーは困った顔になった。

「悪い、転送販売はカード使えないんだよね……」

 三人とも手持ちのギルはそんなにはない。ギルや経験値を稼げるバトルはシュネーヴィットヘンに乗船している時にパラノキアの巡洋艦と戦って以来やっていないのだ。

「そうだ、戦車の装具を一ついただけないかね、小さなのでけっこう。なんたって純金なんだから」

「そうだ、それがいい!」

 グルッと見渡して、予備キャタピラ一枚で手を打つことになった。

 しかし、一枚で十キロを超える重量の純金キャタピラだ。リボ払いまで完済したがおつりが大変だ。

「じゃ、いろいろアイテム付けとくから、残りは、次会ったときということで……」

 回復系やプロテク系のアイテムをしこたまもらった。

「それじゃ、みなさんなのご武運を祈ってるわ。怪我しないようにがんばってね!」

 やっぱり商売人、取引が成立すると嬉しそうに立ち上がった。

「ペギーさん、どうやって帰るの?」

 ケイトが根源的な質問を投げかけた。

「そりゃ、もと来た道を……あ、そうだった」

 そう、ここはヘルム本島から突如切り離された神域の島。

 ペギーが現れた空間のシミのようなものも消え失せて、帰れなくなってしまったのだ。

 

☆ ステータス

 HP:13000 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他アイテム多数 所持金:8000万ギル(リポ払い残高0)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓) 魔弾のワルサー 賢者のシュシュ
 憶えたオーバードライブ:シルバーヒール(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル (寺井光子)   二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼馴染 ペギーにケイトに変えられた
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ラーテの搭乗員 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ラーテの搭乗員 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 1/12サイズで人化している
 ペギー         異世界の万屋

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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