大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・034『水泳授業始まる』

2023-06-20 11:44:26 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

034『水泳授業始まる』   

 

 

 得しちゃった!

 

 ほら、須之内写真館のアルバイト。

 しばらく仕事は無いんだけど、土曜の放課後、写真館で機材の説明やら取材に行った時のあれこれをレクチャーしてもらった。

 レクチャーだったけど、ちゃんとギャラに反映されるらしい。

 現像室は、なんだか錬金術師のアトリエみたいだったり、夏には万博の取材があるとか、ウキウキ時めく話があるんだけど、それは、また今度。

 

 今日は、そのウキウキだとか時めくだとかを吹き飛ばしてしまうほど嫌なことがあった。

 

 今日から水泳の授業が始まる、始まってしまった! 

 ちなみに、水泳は大の苦手。

 

 制服に憧れて、53年前の宮之森高校に越境入学。

 ちょっと浅はかだったかもしれない。

 校舎は令和の校舎と変わらなかったから油断していた。いや、同じ校舎だからこそ、令和のころよりもピカピカでで、ラッキーとさえ思ったよ。

 でもね、トイレは和式だし、体育はブルマだし。

 今日から始まった水泳はスク水だよ、スク水!

 令和のスク水は、パレオが縫い付けてあったり、膝丈だったり、無駄に肌を露出しないようにできている。

 それが、昭和45年の宮之森は完全無欠の、元祖スク水ですよ!

 ハイレグでこそないけど、股ぐりはパンツ同然。

 せめて水に入るまではジャージを着ていたい、上じゃなくて、下よ、下の方!

「上の方なら始まるまで着ていていい」

 お許しが出たんだけど、上だけ着るとかえってヤラシイ。

「さすが、一年生。遅れてくる者はいなかったけど、万一遅刻したら水着でグラウンド走らせるからね!」

 のっけにカマシテくる宇賀先生。

 ちなみに、普段の体育はイトハチって男の先生。

 伊藤八郎って名前なんだけど、縮めてイトハチ。

 水泳がイトハチなら凹むなあと思っていたら、女の先生。

 体育大学を出たばっかりという新人さんなんだけど、ちょっと怖い。

「じゃ、準備運動から。水泳の準備運動は大切だからね、今日は先生が見本見せる。体育委員も前に出て、先生見ながらやりなさい。次からは体育委員にリードしてもらうからね。さ、みんな上脱いで!」

 率先垂範、宇賀先生は、チャチャッとジャージの上下をパージ!

 

 おお( ゚Д゚)!

 

 口にこそ出ないけど、先生のプロポーションに感嘆のため息が漏れる。

 なんというか、体を動かすたびにキュキュっと音がしそうなくらいに引き締まっていらっしゃる。

 

 さて、授業の本番。

 

「みんなの能力知っておきたいから、これから全員に25メートル泳いでもらいます。泳ぎ方は自由。出席番号順で五人ずつ!」

 飛び込みは禁止、先生のホイッスルでヨーイドン!

 ピ!

 バシャバシャバシャ……

 盛大な水しぶきを上げて出発! 泳法は得意……ではないけど、自分ではマシだと思ってるクロール。

 水しぶきの割には進まなくって、途中で平泳ぎに切り替える(^_^;)。

 

「時司、こっちこい」

 

 全員が泳ぎ終わって、わたし一人名指しで呼ばれる。

「途中で泳法変えたのはいいことだ」

 なんだ、良かったんだ(^_^;)

「でも、クロールも平泳ぎも39点」

 ウ、早くも欠点か。

「平泳ぎは泳ぎの基本、時司、そこに横になれ」

「は、はい」

「仰向けじゃない、うつ伏せだ」

「は、はひ!」

 ちょっと恥ずかしい。

「平泳ぎは泳ぎの基本で、そのまた基本は、脚の捌き方だ」

 そう言うと先生は、ムンズとわたしの足首を掴んだ。

「……こういう具合に、水を蹴る! いいか、この時の動きは……向きが悪いなあ」

 すると先生は、足首を引っ張ってみんなの方にお尻を向けさせた!

「いいか、こんな感じ、いち、にい……さん!」

 みんなの視線が下半身に集まる。特に「……さん!」てところで大股開きになって、なんとも恥ずかしい。

 こ、これなら、いっそカエルにでもなった方がマシだ(#'∀'#)。

「足先を外に向けて~~エイ! もう一回、足先を外に向けて~~、ここだよ! エイ!」

 

 オーーーー!

 

 みんなからどよめきが起こり、何人かからは「え!?」という声も漏れる。

 へ?

 見ると、一瞬、伸ばした手が緑色になって指の股に水かきが現れた。

「うん、一瞬だったけど、ほんとにカエルみたいに水を蹴られたね。いまの忘れずに、がんばってね!」

 次に二組の子が呼ばれてクロールの指導を受けて、もう一度泳ごうかという時に時間になる。

 

「うん……最後の……キックはよかった……」

 トントンと水抜きジャンプをしながら佳奈子。

「宇賀先生、イメージさせるのがうまいよね!」

 真知子は宇賀先生の信者になりかけてる。

「一瞬カエルになってました!」

 頭を拭きながらロコが目を輝かせる。

 

 五六人、わたしがカエルに見えたという人が居る。

 わたし自身、一瞬そう見えたし。

 

「いざという時に力は出せるようにはしてあるんだけどねえ……ひょっとしたら、メグリの魔法少女適性はかなり高いのかもしれないよぉ」

 晩ご飯、水泳の授業のことを話すと、お祖母ちゃんはお箸を持つ手を休めて、見つめてきた。

「あ、いえ、そんなのはいいから、水泳も一学期で終わりだし」

 二学期の水泳は男子の番だ。ちょっと辛抱したら終わりだし。

 

 お風呂に入って、平泳ぎのことが頭をよぎる。

 お風呂なら、いっしゅんカエルになってもだいじょうぶ。

 でも、家のお風呂で泳ぎの練習なんてできない。

 

 カエルになることは無かった。

 え!?

 でも、いっしゅんお風呂がプールの大きさになる。

 フルフルと頭を振ると、プールは、すぐに元のお風呂に戻った。

 

 

彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。

 

 

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RE・かの世界この世界:133『擬態の考察とスキルアップ』

2023-06-20 06:53:09 | 時かける少女

RE・

133『擬態の考察とスキルアップ』ブリュンヒルデ  

 

 

 

「「「「「わたしが本物だから!」」」」」

 
 そう主張するユーリアたちは、八メートルほどの間隔を開けて、それぞれにこんぐらがっていた。

「ハーネスを切って!」「下ろして!」の声も前後して五人分聞こえる。

「うかつに下ろせないぞ……」

 タングリスの言う通りだ、クリーチャーの中には擬態するものがある。

 ムヘン川の川辺やローゼンシュタットに出現したメデューサは美少女に擬態していた。さっきの美容院も擬態だったし。エスナルでは周りの風景を含め、泉そのものが擬態したものだった。

 五人のうち四人のユーリアは擬態したクリーチャーだ、下ろしたとたんに襲い掛かって来るだろう。

「早くして! 頭に血が上る~!」

 ほとんど逆さになったユーリアが顔を赤くしている。

「腕が千切れそう~!」

 右腕を絡み取られたユーリアの指先が痙攣している。

 他の三人ももがいているうちに増々苦しくなっていく。

「ウグッ!」

 一人が蔦を首に絡ませてしまった!

「じっとしてろ!」

「待て、テル!」

 タングリスの制止も間に合わずテルが飛び出した。わたしもタングリスも飛び出す! 万一の時はテルを助けるためだ。

「来るな!」

 叫びながらテルは地面を蹴る! 

 セイ!

 ユーリアのすぐ脇を通る瞬間に剣を抜き放って蔦を切断した!

 万一クリーチャーであっても絡めとられないように用心しているんだ。

 自由になったユーリアは地面に落ちる寸前に大きな蜘蛛に変身、いや、本来の姿になった。

 
 シャーーーーーーー!

 
 たった今までユーリアだったそれは、溶けた飴のように糸を引きながらテルを追いかけ回す!

「いま助けるぞ!」

 地面を蹴った! 瞬間でクリーチャーに追いつきツィンテールを振り回して、そいつの背中をたたっ切る! わずかに届かなかったが、引きずった糸を切断した。

 ベチャ!

 糸の切れたクリーチャーは、その瞬間のエネルギーの方向にすっ飛んで木の幹にぶつかって四散した。

「姫!」

 タングリスの叫びを最後までは聞かなかった。視界の端に迫りくる三体のクリーチャーを認めたからだ!

「セイ!」

 横っ飛びにジャンプ! 旋回しながらツインテールの一閃をくれてやる! クリーチャーの伸びきった糸を切断! さっきのと同じように地面に激突すると四散した!

 空中で一回転! 次に供えようとしたら、テルとタングリスも一体ずつ倒していた。

 

「……ということは、こちらが本物か」

 

「ありがとう、低空を飛んでいたら、急に触手のようなのが伸びてきて絡み取られてしまって(^_^;)」

 見えない敵に四の字固めをくらったような姿勢で礼を言うユーリア。

「いま、助けるから。テル、そっちを、姫は頭の方を」

 三人で囲むようにしてユーリアに絡まったハーネスやら蔦を切り取る。

「ありがとう、やっと助……」

 その瞬間、ユーリアは手足を広げたかと思うと八畳敷きのチューインガムのように広がって三人を包み込んだ!

 グシュッ グシュグシュ グシュッ

 数秒で捕らえた三人を圧縮すると、圧縮に反比例して地面が口を開ける!

 ズボッ!

 瞬間の吸引力で吸い込まれると、地面は閉じてしまって静寂が訪れた。

 

「もういいですよ……」

 

 ポチの声がかかって、我々は茂みから顔を出した。

 ちょっと信じられない光景だった。四体のクリーチャーをやっつけて、振り返ると、わたしを含めた三人がユーリアを助けようとしているところだった。「隠れて」という囁きで身を隠していたら、いまの顛末になったのだ。

「ポチ、いまのは空蝉の術だったな」

「なんか、とっさにやっちゃった……」

 どうやら、ポチの新しいスキルが覚醒したようだ。

「少し後退しよう」

「後退?」

「すれば分かります」

 タングリスの言うままに。密林の中を五十メートルほど後退した。

 ズズズズーーーーーン

 くぐもった地響きがしたかと思うと、次の瞬間、それまで居た密林が山のように膨らんでから爆発した!

 
 ズッボーーーーーーーーーン!!

 
「自分(ポチ)の空蝉に思念爆弾を仕掛けたの(^_^;)」

「わたしも、何かを仕掛けた気がする。もう少し下がろう」

 みんな知らないうちにスキルアップ! なんか面白くない!

 

 ドッガーーーーーーーーーーン!

 

 前の数倍の爆発が起こり、我々も吹き飛ばされたが、空中で二回転して着地した。

 密林の中、野球場ほどに木々がなぎ倒され、その中央はクレ-ターとなって口を開けていた。

 目的の場所、ヤマタの居場所は、このクレーターの向こうのようだ……。

 

☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーヒール(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル (寺井光子)   二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼馴染 ペギーにケイトに変えられた
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 小さいが人化している
 ペギー         荒れ地の万屋

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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