大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・084『破られた卒業証書』

2024-03-01 08:39:08 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
084『破られた卒業証書』   




 え(;゚Д゚)(;゚ω゚)(゚ω゚;(゚Д゚;)(゚ω゚;) !?

 
 五人そろって驚いた。

 例えていうと、角を曲がったらバラバラ死体に出くわした感じ。

 死体になんか出くわしたことないけど、体中の体毛が総毛だって、お尻と足の裏がゾワってする感じ。

 こないだは作法室でMITAKAをやったんだけど、卒業式の今日は、仲間五人、教室で女子会をやっている。

 卒業式には、在校生の一部の参加で、わたしたちは関係ない。

 式の最中ぐらいに教室に集まって、学年はじめにもらった年間行事予定表を元に「入学式は……」とか「衣替えのころは……」とか「試験の最終日にぃ……」とか言って懐かしんでた。

 ただ単に「この一年振り返ってぇ」とか言うよりも、行事に則した方が記憶も思い出も生き生きしてくる。
 
 ほら、二学期のテスト中に『フォークの集い』ってやったじゃん。15分だけのミニライブだったけど、短いからこそ人が集まったし、テストの後の、ちょっとしたコーヒーブレイクという感じで評判が良くて、自然な盛り上がりができて『イブの集い』に結びついた。

 そんな感じで思い出を引っ張り出せるから、みんな同じテンションで語り合える。

 真知子は、こういう、みんなで話すことに関しては上手いよ。将来は、テレビのプロディユーサーとかやったらいいんじゃないかと思ったよ。

 十時半ごろに外が賑やかになって、どうやら卒業式もお開き。

 卒業式後の独特な解放感に満ちたざわめきに、わたしたちも教室を出た。

 そして、見てしまった(;゚Д゚)!

 式場の体育館前に、数人分の卒業証書がビリビリに破られているのを!

「あ、みんなぁ」

 演劇部の牧内さんが腕組みしたまま、寄ってきた。

真知子:「これ、どうしたの?」

牧内:「卒業生の男子たちがね、なんか、雄たけびあげて卒業証書破いて帰って行った」

たみ子:「ええ、なんでそんなことぉ」

牧内:「なんだか、いきっちゃってて」

佳奈子:「ひどいなあ」

ロコ:「伊藤……武田……牧村……みんな、体育祭でデモやってた人たちですよ!」

たみ子:「こんなことするくらいなら、式に出なきゃいいのに」

 わたしたちだけじゃなく、周囲にいる生徒たちも同じように、この狼藉の跡を見てるんだけど、その狼藉の跡を片付けようという者がいない。

 破ってしまえば、ただの紙屑なんだけど、なんというか、釘が刺さったままの藁人形見るような感じで手を出さない。

 先生たちだって知ってるはずだ。式後の解放感と卒業証書を破った時の雄たけびと、それにビックリした人たちの声。職員室も生徒指導室も、すぐそこの本館一階だし。

佳奈子:「片づけよっ、五人でやったらすぐだ」

 さすがは、バレー部、行動的だ。

ロコ:「箒とちり取り持って来ましょうか?」

真知子:「破られても卒業証書なんだから、手でやろう、みんなでやったら直だ」

みんな:「「「「うん」」」」

 わたしたちがやり始めると、他の子も手伝ってくれて、牧内さんは部室から段ボール箱を持ってきてくれて、五分後には、それを持って生活指導室に行った。

ロコ:「……誰もいませんねえ」

 生活指導室に行くと、ムッとするようなな暑さ。ストーブが点いたままで、載せたヤカンが盛んに湯気を吐き出していた。

佳奈子:「切っといたほうがいいね」

 カチ

たみ子:「しょうがないわねえ、生徒にはうるさく言うのに」

 それから、職員室に。

 職員室は式服着た三年生の先生と、出勤している先生たちが、生徒ほどではないけど解放感にしたって談笑したり、早弁したり。
 ちなみに、お弁当はお祝い二段重ねの特別仕様。

「あ、そんなことやってたのかぁ、しょうのない奴らだなあ……まあ、そこ置いといて」

 お弁当のお箸でゴミ箱の横を指す生指の先生。

「あ、はい」

 佳奈子が返事して、言われた通りにして「「「「「失礼しましたぁ」」」」」と言って部屋を出る。

「なに、あれ」

 珍しく吐き捨てるように言う真知子。

 卒業証書を破られて平然とお弁当を食べられる神経はいけないと思う。

 三年生が反抗した気持ちが、少しだけ分かったような気になった。


「ちょっと、あんたたち!」


 もう、おたふくでお昼にしよう!

 昇降口に向かっていたわたしたちを呼ぶ声。

 振り返ると、体育科でいちばん年かさの早瀬先生が袴に黒紋付の姿で追いかけて来た。

「話は聞いた、本当にありがとうね。卒業証書を破るなんて、言語道断! 先生たちにはわたしから言っとく」

「あの、それで、どう対応されるんですか?」

 プッツンした真知子は、お礼を言われても食い下がる。

「三年生の先生たちで話し合う、必要なら他の先生たちともね。あなたたちも残念で腹立たしいだろうけど、ちょっとだけ信じて」

「……はい」

 真知子が返事して、少しだけ足を緩めて昇降口で下履きに履き替えたよ。



 
☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  教頭先生  倉田(生徒会顧問)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹        
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 7組) 上杉(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
  

 


 
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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第96話《さつき今日この頃・4》

2024-03-01 07:27:09 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第96話《さつき今日この頃・4》さつき 




 恩華は四ノ宮家でアルバイトすることになった。


 忠八クンが雇うわけではない。以前よりは実家にいるとは言え冴えない文二の東大生。学校とアルバイト、そして、アパートと実家での二重生活に違いはなかった。

 お嫁さんの文桜さんのアイデアで、バイト料は忠八クンの親が出す。

 ちなみに忠八クンのバイトも、工事現場のガードマンから、実家である四ノ宮家の蔵書の整理と、PCによる電子管理化をやることに変わった。

 四ノ宮家には、10万冊余りの史料や書籍があり、その整理をやっていれば、おのずと日本とC国の近現代史が、国家機密のようなものまで分かるようになる。

 孫桜さんは考えた。恩華は経済的に安定し、史料・資料を整理している間に、きっと自分の国と日本との関わり方の過去と現在。そして未来が見えるくらいに聡明な女性であると。

 ただ良くも悪くも人のいい忠八クンが恩華に気持ちが傾斜しないように注意する。それも二人に気づかれないようにやるという仕事が増えた。

 いちおう目出度し。


 日曜日の昨日、久々にタクミ君から電話があって、神宮外苑の森のビヤガーデンで会うことにした。

 男性 4000円、女性 3700円で飲み食べ放題。

 ビルの屋上ではなく地上にあるビアガーデン。 神宮外苑の落ち着いた雰囲気の中で飲める 文字通り地に足の着いたビアガーデン。
 大阪のS駐屯地以来の出会いだけども、あんなに毎日顔を突き合わせていたので、都心の緑の中、気楽にビールが飲めるぐらいのノリだったが、会ってみると、とても懐かしかった。

「どうかした?」

 ビールの泡を口に付けながらタクミ君が聞いた。

 タクミ君て、こんな顔、こんな声だったんだろうか? と、不思議な気がした。

「なんだか、とっても久しぶりな感じがして……こんなの初めて」

「ボクは、今日のさつきちゃんが……」

「あたしが?」

「怖くない」

「怖かったのかなあ、あたしのこと?」

「うん。いつも心の中を覗かれているようで……さざれ石のお蔭かな?」

「ハハ、かもね。あの石のお蔭で、東京に戻って普通の生活ができるようになったんだもんね。今も……」

 あたしはカットソーの襟をくつろげてペンダントを出した。

 タクミ君の顔が赤くなった。どうやら胸の谷間が見えてしまったよう……あんなに切れ者なのに純情なんだとおかしくなった……そして、おかしくなった。

「ハハ、タクミ君も、こうやって会うと、ただの少年なんだ」

「少年はないだろ。これでも24歳の三等陸曹だぞ」

「そうだね……あれ?」

 ペンダントを開けてみると、中に入れていた「さざれ石」が無くなっていた。

「おかしいなあ……ペンダントの中に入るようにしてもらってから、一度も開けてないのに」

「……実は、自分のも無いんだ。認識票といっしょにパスケースに入れていたんだけど。今日会ってもらったのは、これを確かめたくて。さつきに心が読まれる可能性がある間は、ボクは本来の任務には戻してもらえなかったんだ」

「不思議だけど、これで二人の関係は、渋谷で事故って以来の関係に戻るってことよね」

 安心してるはずなのに、なんだか寂しい。

「うん。でも……」

「……なに?」

「えと……ちょっと歩こうか?」

 二人で外苑の森の中を歩いた。ほとんど喋ることもなかったけど、今までで、いちばんお互いを近く感じた。


 五か月かかって、やっと普通のスタートラインに立てたような気がした。


 スタートラインというと、C国で独立を宣言した南部三省は連合政府を樹立した。これには世界各地に散った華僑の人たちの働きが大きかったからだと言われている。じっさい華僑が多い東南アジアの国々はいち早く、この独立を承認。

 その大物華僑の筆頭に上がっていたのが孫文章、それが文桜さんのお祖父さんだと気づくのは、少し遅れてからだった。



☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  由紀子       さくらの母 ペンネーム釈迦堂一葉(しゃかどういちは)
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
  • 坂東 はるか        さくらの先輩女優
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査
  • クロウド          Claude Leotard  陸自隊員 
  • 孫大人(孫文章)      忠八の祖父の友人 孫家とは日清戦争の頃からの付き合い
  • 孫文桜           孫大人の孫娘、日ごろはサクラと呼ばれる
  • 周恩華           謎の留学生
 
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