大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・250『ボートを出て密かに観戦』

2024-09-26 11:02:18 | 小説4
・250

『ボートを出て密かに観戦』 メグミ 




 露蒙騎馬軍団の衝突は五分五分に見えた。

 むろん、ボ-トを出て草原の窪地に身を潜めての印象だから戦場全体が見えているわけではないけど、西之島戦争や天狗党での経験が、そう判断させる。

ハナ:「くそ、身震いしちまうぜ!」

メグミ:「用を足すなら、あっちの茂みでやってよねぇ」

ハナ:「ち、ちげーよ! 武者震いだ(>▢<)」

メグミ:「これは他人様の戦争だよ」

ハナ:「わ、分かってるよ(;'▭')。でもよ、青銅の騎士は反則じゃねえかぁ……」

 戦争に反則も無いんだけど、ハナの感覚では人の10倍はあるだろう青銅の騎士の戦闘力、防御力は反則めいて見えるんだろう。

マイ:「テムジンは綻びを探してるのよ。いや、綻びを作っている。走り回っていれば、敵も味方も流動化せざるを得なくって、流動化してしまえば、おのずと隙ができるわ。騎兵戦闘ではモンゴルに一日の長がある、隙ができる確率はロシア軍の方が大きい」

 さすがはマイさん、いや児玉元帥。

ハナ:「よくジレねえなあ劉宏も」

メグミ:「漢明は見ているだけよ。ああやって元帥であり大統領である劉宏が出張っていることが最大の抑止力になるのよ。ね、よく見てみ、劉宏の軍団には闘気が感じられないでしょ」

ハナ:「そ、そうだな。メグミもなかなかの読みじゃねえか(`^´)」

 マイさんの視線が目の前の戦闘からハンベに移った。何を見ているんだろう……今のモンゴルではパルス機器は使えない。偵察衛星も軍事に関する情報はほとんどブロックされているはずだ。

マイ:「経済情報は伝わるのよ」

ハナ:「ええ、ここは戦場だろ?」

マイ:「ドンパチやるだけが戦争じゃないのよ。見てごらんなさい」

ハナ:「え、グラフとか数字とかはカラッキシなんだぞ(^△^;)」

メグミ:「え……ルーブルがメチャクチャ下がってる!」

マイ:「劉宏が手持ちのロシア国債を売りに出した。漢明だけじゃない、世界中が売りに出してる。劉宏が手を回したんでしょうねえ。化石燃料も半分以上取引停止にして、各国も追随しつつあるみたいよ」

メグミ:「ロシアは長期戦には耐えられませんねぇ」

マイ:「ええ、このモンゴルの戦闘が最初で最後になるでしょうねえ」

 わざわざ西之島からボートを飛ばしてきたけど、意外にあっけない。

ハナ:「あ、漢明の方から誰か駆けてくるぞ!」

 ハナが目を剥いて指さした方角。漢明の隊列から二騎駆けだしてきた。

メグミ:「あれは……朱元尚……後ろはフーちゃんだ!」

マイ:「まずいなあ……」

 マイさんの心配はすぐに状況の変化として現れた。

 露蒙両軍の一部がこれに気づき、モンゴルは無視したが、ロシアは数瞬で敵認定し、十数騎が二人に向かった。

 今の今まで眠ったように静かだった漢明軍にも、いっせいに緊張が走った!



☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!12『知井子の悩み・2』

2024-09-26 07:01:48 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 悪魔だけどな(≧▢≦)!

12『知井子の悩み・2』 




 知井子が決心をしやがった。

 たいそうな決心じゃねえ。

 じつはな。この半年近くで、身長が五センチも伸びたんで、新しい服を買いに行く決心をしやがったんだ(^_^;)。

 それがなぁ、縦には成長したんだけどよ、横には、それほどに成長してねえんで、服はずっとそのままでいたんだ。
 しかし、さすがにミニスカートがマイクロミニになりかけて、階段の上り下りに気を遣うようになっちまってよ。で、思い切って服を買い換えることにしやがったんだ。


 まずは制服だ。毎日着る物なんで、これが最初になった。


「入学の時、少し大きめのを買ったのにね」

 知井子のお母さんは、そう言いながらも制服を買い直してくれた。不足そうな言い方だったけどよ、娘の成長は嬉しい。単に身長が伸びたことだけじゃなくて、何事にも自信を持ち始めたことが嬉しいんだな。

「他の服も買い直さなくっちゃなあ(^▽^)」

 お父さんが、嬉しそうにお小遣いをくれた。


 マユは知っていたぜ。


 落第天使の利恵がかけやがった白魔法が効いてきたんだ。片岡先生の事件の前に、利恵が知井子のコンプレックスを知って、お気楽にかけた白魔法だ。

 マユはな、知井子が魔法で身長を伸ばして得る自信はにせものだと思った。

 知井子の身長が伸びると、知井子は思いもかけない苦労をしょいこむって分かってた。だからよ、対抗して知井子の身長が伸びない黒魔法をかけたんだ。伸びる魔法は苦手だけどよ、伸びない魔法は使えるんだ。

 でも、結果は、半年で5センチも背が伸びるという、育ち盛りの小学生並の成長になっちまった。

 利恵は10センチ伸ばす気でいやがったから、思ったほどに知井子の背が伸びないことに不満。マユは自分の黒魔法が利恵に勝てなかったことに不満だったぜ。

 実際のとこは、オチコボレ天使と小悪魔の魔法は相殺されてよ、知井子の背が伸びたのは、あくまでも自然な成長だったんだけどな。

 影響があったとすれば、英語の片岡先生が、メリッサ先生と恋人同士になるドラマチックな展開を目の当たりにしたことだと思うぜ。ウブなJKなら、あんな恋をしてみてえとか憧れるよな。

 マユには見えていたぜ。街に服を買いに行ったら、どういう展開になるか(3『知井子の悩み』に書いてある)。

「なあ、知井子、明日いっしょに街に出ねえか?」

 マユの方から声をかけてやった。知井子は沙耶や里依紗もいっしょ行きたかったけど、あいにく二人は検定試験で出かけられない。むろんマユはそれを見越して、声をかけたんだけどな。未熟小悪魔のマユは、人数が多いと、これから起こる問題をさばききれねえと思った。


「ねえ、キミお茶しない?」


 イケメンくずれのお笑いタレントみてえなオニイサンが声をかけてきやがった。

 多少くずれていてもイケメン。知井子は人生で初めて男の人に声をかけられたんだ。中学生のとき、ディズニーランドでスタッフのオニイサンが「迷子になったの?」と声をかけてくれたのを例外としてな。

 予想通り、知井子はゴスロリの店で服を買った。あたりを歩いているヒラヒラのゴスロリじゃなくてよ、シックな二十世紀初頭のイギリスのお嬢さんて感じのワンピ。

 で、イケメン崩れには「いいえ、けっこうです」とは言えなかった。

 なんせ、人生で初めてオトコから声をかけられたんだ。で、ディズニーランドのスタッフのオニイサンとかじゃねえしな。

「え……あの、あの……」

 後の言葉が続かねえ。このままではイケメンくずれの軽いナンパに引っかかっちまう。

 マユは、知井子自身に断って欲しかったぜ。でも、予想通り、知井子は声も出せないでやがる。

「だからさぁ、気楽にさぁ、そっちの子もいっしょにどう?」

 あきらかに、ついでに言われていることにむかついて、マユは、ヒョイと指を横に振ったぜ。


 とたんに、イケメンの口は閉じたチャックになっちまいやがったぜ(`ー´)。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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