せやさかい 番外
004『総集編・2・中割り』さくら
004『総集編・2・中割り』さくら
アニメいうのは、ザックリいうと、監督の絵コンテから始まる。
絵コンテいうのは、アニメのキャラクターの動きや構図なども含めてシーンごとにカット割りの絵にしたもの。
これができてないと、ほかの作業がいっさいでけへん。
大手は専業のコンテマンがいたりするけど、零細企業の江戸川アニメは監督が絵コンテを描く? 書く?
A4の紙の左側が五つにコマワリされてて、そこにワンシーンずつのおおよその絵が描かれる。まあ、5コマ漫画みたいなもん。右側には、セリフとか注釈が書かれてて、 その絵コンテをもとにいろんな作業が始まるわけ。
いろんな作業の始まりで、いちばん重要なんが原画。
原画は……そう、たとえば人物がジャンプするシーンやったとする。原画マンは、①ジャンプする直前 ②ジャンプの途中 ③着地したとこ。最低この三つ。たいていは、その間にもう二コマほどの絵を入れて描く。
原画マンには、ザックリした第一原画ときちんと描いた第二原画がある。まあ、ラフと清書いう感じやね。
その第二原画が動画さんとこに周って、じっさいの撮影に使われる動画を描く。ジャンプが三コマとか五コマでは間に合えへんから、動画さんは原画の間を繋いで中割りと呼ばれる絵をたくさん描く。
原画がええかげんやと、絵と絵の間がうまく繋がれへんで、場合によってはグチャグチャな作画崩壊ということになってしまう。
ひどい場合は「中割が描けない!」っちゅうことで突き返されることがある。
酒巻さんは、まさに、この突き返しにあったわけやねん。酒巻さんは第二原画やから、第一原画の里中智満子がヘボやったんやと思う。
目玉焼きにかける醤油をとろうとしたら、醤油さしをくれながら留美ちゃんが言う。
「里中智満子って、酒巻さんの別名なんだって」
「え?」
「酒巻さん、第一原画も第二原画もやってたんだよ」
「そんなぁ」
留美ちゃんは、夕べあれから江戸川の知り合いにスマホで連絡をとってたんや。分かれへんこと、心配なことにはソッコーで対応する。ズボラなうちにはでけへん能力の高さ。中学の頃は、しょっちゅう立ち止まってばっかりの子やったけど、どうも抜かされてしもたみたい(^_^;)。
「でも、今日からはよそから助っ人が入るみたいで、来週は総集編にしなくてすみそうだって」
「そうなんや……」
「あ、お醤油!」
「あ、あわわわ!」
かけすぎた醤油はご飯にかけて、さっさと食べると、二人で学校に向かった。
二人とも五日ぶりの学校。
むろん出席日数が足りひんようなことはないけど、ちょっとね。
「がんばろうね」
吊革につかまって、相棒は見透かしたように一人ごちる。
「第二原画みたいな登校しかできてないんだからね」
「せやなぁ、中割でけへんようなことにはならんように」
「気を付けようね」
学校に着くと、教室のあちこちに島ができて盛り上がってる。
え、なんやろ?
横目で覗くと、みんなスマホの写真でキャーキャー言うてる。
あ、せや。先週の金曜日は高校最後の遠足やったんや!
せやさかい、みんな思い出をいっぱいつくってきたんや。
そう気づいたら、ちょっとみんなの中には入っていきにくくなってしまう。
ああ、中割がでけへん(^_^;)。
しゃあない、自分の人生、原画も中割も自分でせんとあけへんしね。
そんなウチに合わせてくれたわけやないんやろけど、窓から吹いてくる風は、まだ夏の匂いと熱を残してた。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍中尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍二等軍曹
月島さやか 中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 酒巻栞(原画)
声優の人たち 花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎
さくらの周辺の人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官) 相野千春(声優の先輩)
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍中尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍二等軍曹
月島さやか 中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 酒巻栞(原画)
声優の人たち 花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎
さくらの周辺の人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官) 相野千春(声優の先輩)