馬鹿に付ける薬 《気まぐれアルテミスとのんびりベロナの異世界修業》
022:『子犬に名前を付ける』
「連れていくんだったら名前を付けてやれ」
前を歩くプルートがボソリと言った。
ヒュドラの黄金のリンゴを手に入れて、三人は街道を北に歩いている。
「名前はケルベロスだろ」
「元々の名前だし、だめかしら?」
アルテミスはプルートの背中を見て、ベロナは腕に抱いた子犬をモフモフしながら話を続ける。
「それは魔犬の時の名前だ。再生したことだし別の名前を付けてやった方がいい……それに、ケルベロスというのは微妙に長い」
「でも、カッコいいぞ」
「そのままだと、また首が三つになるかもしれんぞ」
「「それは困る!」」
ワン!
「まあ、急ぐことでもない、ゆっくり考えろ」
まあ、これも長い旅の慰めだろうと二人は考え始める。
「あれ?」
半時間ほど考えて歩いていると、道を行く自分たちの影が一つ増えていることに気づくアルテミス。
いつの間にかカロンが後ろを歩いている。
ワンワン
「カロン(^_^;)」
「い、いつの間に(;'▭')」
「さあな」
「何かあったのか?」
プルートは気づいていたようで、振り向きもせずに普通に聞く。
「この先に関所ができた」
「「「関所?」」」
「イリオス王プリアモスの息子でパリスという若造が冒険者たちに旅の目的を聞いている」
「イリオス王の息子?」
「誰だ、それ?」
アルテミスとベロナが聞くと子犬も倣って首をかしげる。
「女神共に難儀な判定を迫られている若者だ。どうやら、まだ答えられずに冒険者相手に練習しているようだな」
「そんなの無視して行けばいいんじゃないのか?」
「ここで旅をやめて帰れるか、アルテミス?」
「できるわけないだろ」
「それと同じだ、パリスもゼウスに頼まれたんだ無下にはできん。二人とも、今のうちに考えとけ」
「あぁ、ちょっとぉ」
子犬が肩の上でモソモソして持て余すベロナ。
「あ、首に札が付いてるぞ」
「え、いつの間に?」
「名札だ、ハチって書いてあるぞ」
「ハハ、カロンのやつだな」
「勝手に名前つけんなよ……あれ?」
「あら、もう居ないわ」
「さあ、犬の名前も決まった。先を急ぐぞ」
道の先に人だかりが見えて来た、どうやら、それがパリスの関所のようだ。
☆彡 主な登場人物とあれこれ
- アルテミス アーチャー 月の女神(レベル10)
- ベロナ メイジ 火星の女神 生徒会長(レベル8)
- プルート ソードマン 冥王星のスピリット カロンなど五つの衛星がある
- カロン 野生児のような少女 冥王星の衛星
- 魔物たち スライム ヒュドラ ケルベロス(再生してハチ)
- カグヤ アルテミスの姉
- マルス ベロナの兄 軍神 農耕神
- アマテラス 理事長
- 宮沢賢治 昴学院校長
- ジョバンニ 教頭