大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

馬鹿に付ける薬 023『噂のパリス』

2024-10-25 10:24:48 | ノベル2
鹿ける 《気まぐれアルテミスとのんびりベロナの異世界修業》
023:『噂のパリス 




 関所は谷間にあり、両側は崖が阻んで、どうしても関所を通らなければ先に進めないようになっている。

「どうしても通らなきゃならないのかぁ」

 面倒なことが嫌いなアルテミスが口を尖らす。

「あっちを見ろ」

 プルートが顎をしゃくって、手前の分かれ道を指す。

「あ、向こうにからでも行けるんじゃ……あ、橋が落ちてる」

 数歩先に進んだベロナが声を落として立ち止まった。

「元々、橋のある方が本道で、谷間の道は間道だったんだ。あれを避けてたら、道はないぞ」

「「ああ~~」」

 ワン!

 ついさっきまで名無しだったポチが薮の方を向いて一声吠えた。

「なに奴だ!」

 シャラン!

 大剣を構えてプルートが誰何する。ふだん無口なプルートが一喝すると大迫力で「待った待った、怪しい者じゃありやせん(^_^;)」と怪しいオヤジが出て来た。

「じつは、もう一本抜け道がありやす。この薮の向こうなんですがね、ほとんど獣道なんで案内無しでは通れやせん。お一人様5ギルいただけりゃ、ご案内いたしやすよ」

「怪しいぞ、おっさん」

「不躾よ、アルテミス」

「いやいや、面目ない。でも、案内するのは、この先に居るやつらです。要所要所で『右』とか『左』とか声で教えますんで」

「いや、俺たちはそのまま行く」

「でも、旦那、パリスの奴は難儀ですぜ」

「いざとなったら、ぶちのめしてでも通る」

「おお、元気のいいお嬢さんだ。でも、パリスには神のご加護があるようで、あいつを傷つけると……」

「望むところだ、この大剣の錆にしてやる。なんなら、その前に……」

 プルートが剣を構えると「いや、だったら、もうお好きにぃ(;'∀')」と後からやってきた旅人たちを相手にしに行った。


 列に並んでみると、前の方にバスケット選手のように背の高い狩人が、不器用そうに質問している。噂のパリスだ。


「……そうか、商品の仕入れか。じゃあ、なんでその商品なんだ? 別のものでも良かったのではないのか?」

「いや、それは……」

「お婆さん、孝行息子に会いに行くと言っていたけど、かえって息子の邪魔をすることにはならないのかい?」

「そげなことは……」

「きみは、都に受験に行くんだね。その勉強は都でなければできないものなんだろうか? そこのご夫婦は……観光かぁ、なにも遠くに行かずとも。 そちらの若者は……」

「だいぶこじらせてやがるなあ……」

「そうね、質問がどれも疑問形の否定ばっかりね」

「やはり、押し通るしかないか」

「そうだな、プルート、いっしょに突っ込むか!」

「ダメよ二人とも!」

「「ウッ」」

 ベロナが腕を伸ばして遮る。持続力は無いが、ベロナの一言には力がある。昴学院高校の生徒会長を二期務めた力は伊達ではない。仲間に加わったばかりのハチが子犬らしく「クゥン?」と首をかしげる。

「パリスは真剣なのよ。見ていれば分かるわ。旅人と真剣に話をして、そこから何かを学ぼうとしている。髪のご加護もあるようだけど、彼のあの姿勢には正面から応えてあげなければいけないわ!」

 そう言うと、ベロナは真っ直ぐ群衆の向こう、必死のパリスに近づいて行った。


 
☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • アルテミス          アーチャー 月の女神(レベル10)
  • ベロナ            メイジ 火星の女神 生徒会長(レベル8)
  • プルート           ソードマン 冥王星のスピリット カロンなど五つの衛星がある
  • カロン            野生児のような少女  冥王星の衛星
  • 魔物たち           スライム ヒュドラ ケルベロス(再生してハチ)
  • カグヤ            アルテミスの姉
  • マルス            ベロナの兄 軍神 農耕神
  • アマテラス          理事長
  • 宮沢賢治           昴学院校長
  • ジョバンニ          教頭
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!41『ベアおばちゃん特製カリビアンソーダ』

2024-10-25 08:12:57 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
41『ベアおばちゃん特製カリビアンソーダ』 




 レミが言った「急場の問題」がキューバのナゾであることに気がついた……ファンタジーの世界は駄洒落で回ってんのかぁ?……そういや、レミの次に現れたのは目の前のミファ、この次はファソとか。まさかな(^_^;)


「ついてきて(^▽^)/」


 ミファは笑顔で言うと歩き出した。生まれながらの友だちに言うような気楽さだぜ。

 道を少し行くと、声をかけられた。

 横っちょの年季の入ったカフェでオバハンが手を振ってやがる。

「ミファー、今日は連れがいるんだねえ」

「うん、従姉妹のマユ。休暇で遊びにきてんの、昨日から」

「そりゃあ、気がつかなかった。こっち寄って、ジュースでも飲んでいきなよ」

「ありがとう、ベアおばちゃん」

 いくらも歩いてねえのに、ベアおばちゃんの飲み屋兼カフェに立ち寄ることになったぞ。

 テラスのテーブルに収まると、港が一望だ。小型の漁船やフェリーが舫っていて、ゆったりと波に揺られている。マストの間を器用に海鳥たちが飛び回って、こぼれた小魚をとったりして、豊かじゃねえけど、いい感じの港町だぜ。

 不思議に思った。ミファは、なぜ自分のことを従姉妹なんて言ったんだろう。またベアおばちゃんも、簡単に信じ込んでんだ……。

「はい、ベアおばちゃん特製のカリビアンソーダ」

「ありがとう。これにアルコールが入るとカリビアンリキュールになるんだよね」

「今日もサンチャゴのとこ行くんだろ」

 ソーダを勢いよく、かつ一滴もこぼさずにテーブルに置きながら、ベアおばちゃんが聞いた。

「うん。今日は、あたしの番だから」

「サンチャゴって?」

「ああ、ポンコツの漁師。若い頃は遠洋航路の貨物船なんか乗ってたんだけどね、近頃は飲んだくれては、寝たり起きたり。身の回りのこともできなくなっちまって、ミファみたいな子供たちが交代で世話してんだよ」

「このごろは、寝たり、寝たり、寝たり、起きたり、寝たりだよ」

「いよいよかねぇ……」

「よいよいだけど、まだまだ」

「大人は世話をしないんですか?」

 よそ行きの言葉で聞いた。一瞬目が光ってベアが続けた。

「サンチャゴは大人が嫌いでね。たまに正気になると大げんかになったりするから、ミファに頼んでんの。ま、マユもゆっくりしていきな」

「うん、ありがとう……勢いもいいけど、姿勢のいいおばちゃんだな」

「昔は、踊り子やってたの。プリマだったんだよ。ほんとうはベアトリーチェって名前なんだけど、このお店開いてからはトリーチェを取りーちぇ」

「アハハ、女の人なのにベアなんて熊みてえな名前で変だと思ってたぞ」

 ビュン!

 感心しているマユの目の前を新聞が飛んでいった。

「びっくりするじゃないのよ!」

 ミファが怒鳴った。

「かわいい子といっしょだからよ。紹介してくれよ!」

 テラスの下で、日焼けした新聞少年が吠えやがった。 

「あたし、ミファの従姉妹でマユ。あんたは?」

「おれ、ジョルジュ。今夜空いてる?」

「マユには婚約者がいるの。あんたなんか足もとにも及ばないような!」

「今はバイトの途中だから、終わったら、そのテラスぐらいには足は及ぶぜ」

「油売ってると、ボスに言いつけちゃうぞ!」

「ヘヘ、じゃ、またミファのいないときにな」

 口笛を吹いて新聞少年は行っちまった。

「あたし、いつ婚約なんかしたんだ?」

「そういうことにしておかないと、直ぐに虫が寄ってくるからね」

「……どうして、従姉妹て設定なんだ?」

 マユがミファの耳に口を寄せて聞くと、奥で新聞を読んでるオッサンが驚いた。

「白雪姫の国が内戦状態だってよ!」

 マユは、オッサンたちの輪の間に顔を入れて、新聞のおおよそを読んだぞ。


 ええ、なんだこりゃ!?


 白雪姫の国は、王妃側と白雪姫側に別れて内戦状態。そこにアニマのゲッチンゲン公国が絡んで、眠れる森の美女の国が仲介。でも失敗して争いに巻き込まれやがった。そして、マユが、この港町に一瞬で来たような気がしていたけど、実際には一週間かかっていたことを知ってしまって……ファンタジーの世界のゆがみは広がっていくばかりだ。

 スマホで確認すると、リアル世界の時間では半日すぎてやがる「ここでの一年はそっちじゃ十秒ぐらい」とレミは言ってやがったけど、それほどでもねえみてえだ。

 でも、まあ、もう少しなら大丈夫か。
 


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • 狼男
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  


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