大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・131『今日は文化祭!』

2024-10-05 17:04:45 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
131『今日は文化祭!』   




 だらし内閣とはうまく言ったもんだ。

 組閣の記念写真を見ていたお祖母ちゃんが一人ごちる。

 大臣たちを従えて下段の真ん中にいる新総理……ちょっとねえ。

 モーニングのズボンはずっちゃって、逆に式服用の襟高シャツはずり上がってメタボっぽいお腹が覗いて、なんだか顔もだらしない。


 登校前だったんで、お祖母ちゃんの溜息には付き合わないで家を出る。


 なんたって、今日は文化祭の本番なんだ!


 保健室を通路代わりに使い、支度用にその隣の教室二つを借りている。本当は準備用の教室は一つしか使えないんだけど、クラス24人の女子が花嫁衣裳を着るのには狭い。メイクや結髪も同時にやると、どうしても教室二つは要るんだ。

 判断したのはわたし。やっぱり結婚式場でバイトをやってるのが役に立つ。


「え、それって!?」


 廊下で着替えてる男子を見に行ったたみ子が声を上げた。

 たみ子は、あちこちチェックしてから最後に着替えるんだ。いちおう取り組みの責任者だしね。

「え、なになに?」

 ドアから顔だけ出して、わたしも驚いた。他の女子も寄って来る。

 介添え役で出る男子のコスがマチマチだ。

 総理大臣と同じ燕尾服もあれば、紋付袴のもあるし、宝塚の男役みたいな白やらシルバーのタキシードみたいなのもある。べつに新総理みたくだらしないというわけじゃない。サポートに来てくれている式場スタッフのおかげで馬子にも衣裳。

 でもね。

 男どもは分かってないけど、燕尾服以外は全部花婿のコスだ!

 ウワア! キャー!

「ええと、なんかまずいのか?」

 委員長の高峰君がビシッと決めた羽織袴で首をかしげる。10円男の加藤高明も羽織袴で収まってやがる。

 式場も貸衣装屋さんも、地元高校の文化祭だし、赤口でヒマな日だし、面白そうだし、ノリノリでやってくれてる。

 こっちのイメージでは、男子は花嫁を花婿に引き渡す男親、あるいは仲人のおっさんという設定だった。

「いやあ、だってみんな若いんだもん、花婿になっちゃうわよ(^^♪」

 コーディネーターのMさんが笑顔でVサイン。

「じゃあ、あとは辻本さんとグッチだね」

 いよいよ自分の番だよ!


「え、なんでですか!?」


 いざ支度にとりかかると、ただ一人和服の花嫁衣裳にしてたたみ子のサイズが合わない。

「ああ、あたしノッポだからなあ(^_^;)」

 で、数とサイズに余裕のあるウェディングに変更した。

 そして、その花嫁衣裳がわたしに回ってきた!

 本格的にやると、カツラや化粧で大変なんだけど、そこは文化祭のイベントなんで略式。

 いちおう白塗りにして紅をさす。カツラは着けないで、髪をバレッタでまとめる。

 アハ( ´艸`)

 なんだか、フランスのパントマイムの人みたいで笑ってしまう。

 そして、髪をバレッタでまとめて、角隠しに綿帽子を着けると


 なんということでしょう! 驚異のビフォーアフター!


 うわああああ((((((( ゚Д゚)))))))!


 みんなもわたしもビックリ! 三国一の花嫁の姿が家庭科から借りて来た姿見に映っていた!

『ただいまより、2年3組全員によります取り組み【ウェディングパラダイス】を本館南の斜面にて行います』


 放送部のアナウンスが入っていよいよ本番!


 タ~ンタ~カタンタンタンタン♪

 タイアップした吹部がウェディングマーチを奏で、2年3組のみんなは保健室から伸びたバージンロードをカップルで進んで行く。

 ピカ! ピカピカ!

 演劇部の牧内さんが、あちこちに仕込んだスポットライトを後輩部員といっしょに操作してくれる。

 カシャ カシャカシャカシャ!

 あちこちで写真のシャッターが切られる。直美さんは『報道』の腕章とかつけて、堂々と真ん前から撮ってるし、うわさを聞き付けたのか、日ごろは顔を見せない校長先生やらPTAの会長やらもカメラもってしゃがんでるし(#^_^#)。

 かわいい! きれい! お嫁さんだぁ! 日本一! 世界一!

 いろんな声やら溜息やら(^_^;)

 うわああああ(# ゚Д゚#)!

 ひときわ大きな歓声というかため息が漏れる……て、みんなの視線がみんなわたしのほうに来てるんですけど(# ゚Д゚#)!

 お似合いねえ(n*´ω`*n)! お似合いだわあ(#^〇^#)! すてきだわぁ(#^◇^#)!

 PTAのおばさんたちがちょっとちがう歓声やら感想やら……お、おい、10円男! 顔赤くするんじゃねえよ!

 なんだか、自然の流れで、わたしと10円男がセンターに来てしまって主役みたいになってきた。

 あ、ええと……(;'∀')

 綿帽子の中で焦っていると、グラウンドの方から人が上がって来る気配。

 気配は、子どものように一段一段刻むように上がって来る……これは、神主や巫女さんが拝殿とかの階(きざはし)を上がる時の所作……と思ったら、スセリヒメの御神楽さん!

 いつもの巫女服の上に羽衣みたいなのを羽織って幣とかも持ってるし。

「かけまくも かしこき大神のお前にかしこみかしこみ申さくぅ……」

 結婚式で神主さんがあげる祝詞みたいなのを唱え始める……式場じゃ、このあと固めの杯……と思ったら、幣を持ち替えたスセリヒメは三方に載せた盃をささげる!

 え、まあイベントなんだからと盃を手にする。すると、今度は水引の付いた銚子でお神酒を注いでくれる。

 勢いというか流れのままに……これって三々九度なんですけど。

 溜息やらシャッターやら拍手やらが沸き起こると、これも式場でお馴染みのアレが聞こえてくる。

 高砂やぁ~この浦舟に帆を上げてぇ~月もろともに出で潮のぉ~

 高砂がフェードダウンしてくると、たまにキリスト教式でやる時の牧師さんが現われて「それでは、滞りなく式もお開きとなりますので、ブーケトスの儀を執り行います。新婦のみなさん、ブーケをお持ちになって後ろをむいてくださ~い(^▽^)」

 いつの間にか、女子は全員ブーケを持っていた。

「それでは、ワン……ツー……スリー!」

 エイ! トー! ヤー! ソレ!

 好き好きに掛け声と共に24個のブーケが宙を飛び、グラウンドの半分を埋め尽くした生徒やらお客さんやらが歓声を上げながらブーケを取り合う。

 吹部が仕込んだのか、チャペルの鐘が鳴り響いて、学校は文字通りのウェディングになった!



 
☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  

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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!21『知井子の悩み・11』

2024-10-05 07:31:00 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 悪魔だけどな(≧▢≦)!
21『知井子の悩み・11』 




「浅野さんと桜井(知井子)さんには驚きました! いいものを見せていただきました、ありがとう!」


 大石クララの賛辞は本物だった。その証拠にマユへの誉め言葉は、一つも無かったぜ(^_^;)。

「ありが……」

 拓美の返事が完全に言い終える前に、クララは続けた。

「浅野さんのパフォーマンスは特にすごかった! 全身全霊で唄って踊って……なんだか、もし世の中に天使がいるんだとしたら、こんな風なんだろうなあって思ったわ!」

――天使って、そんなにいいもんじゃねえぞ(おちこぼれ天使の雅部利恵のドヤ顔が浮かんだ)と、思いつつ、マユはクララの素直な感動はよく分かったぞ。

「う~ん……天使じゃ言い足りないわね」

 いい感想だ(雅部利恵のドヤ顔がズッコケた)。

「天使みたいという点じゃ、桜井さんも同じ。浅野さんのは……なんてのかな。命賭けてますってのか、ここまでできたら死んでもいいや! そんなスゴミ感じちゃった!」

――おお、するどい! 本人も、そう思ってやったんだぜ!――

 拓美は、すごく嬉しそう。この世から消える直前、それも数時間後には誰の記憶にも残らねえパフォーマンス。それを、心から感動してくれる大石クララ。いま出会ったばかりなのに、何年も付き合った心の友のように思えて、メアドの交換までやってしやがった。

――やれやれ、これで消去しなければならないものが一つ増えちまったじゃねえか――


 長引いた審査も、昼食後三十分ほどしてようやく終わりやがった。


 審査員の心を読まないように苦労したぜ。読まないようにしていても、審査員の興奮はダイレクトにマユの心に伝わってきやがる。新聞の号外を目の前に広げられて、見出しを読まないぐらいの苦労がいったぜ。

「マユ、なにブツブツ言ってのよ」

 知井子が、面白そうに聞いてきやがった。

 マユは無意識のうちにダンテの「神曲」を暗誦していたんだ。

 ダンテの「神曲」は、小悪魔学校二年の必修で、暗記しなきゃならねえんだ。マユは、この暗記が大嫌いでよ、自分から進んで暗誦したことなどなかった。それを無意識に唱えちまうんだから、マユの緊張もかなりのもんだったんだぜ。

 で、マユは感じたんだ……審査員長の心に迷いがあることを……。

「では、審査結果を発表します。長橋さん、よろしく」

 名目上の審査委員長が、先輩アイドルユニットのリーダーを促した。

「はい、では、発表いたします。HIKARIプロ新ユニット合格者十六名の方々の受験番号とお名前を……」
 
 長橋みなみが全十六名の名前を読み上げると、感激と落胆のオーラが等量に感じられた。それはメチャクチャ強くってよ、頭が痛くなって、マユ思わずしゃがみこんじまった!

「マユ、しっかりしてよ。マユも、わたしも、拓美ちゃんも、さっきのクララちゃんも合格だわよ!」

「え……わたしまで」

 視線を感じた、その視線にはメッセージが籠められていた。


――いま、いまよ! この幸せの絶頂でわたしを送って!――


 向けた視線の方角に拓美の泣き笑いの顔があった。想いは残ったけどよ、これを外したらきっかけを失う! 

 今だ!

 ここにいる全員の記憶を消去するために、両手を後ろに回して悪魔クロスを作り、マユは密かに呪文を唱えた始めたぜ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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