せやさかい 番外
003『総集編・1・総集編の変な訳』さくら
003『総集編・1・総集編の変な訳』さくら
『いまどき総集編なんだってね、だいじょうぶなのかい?』
相野さんからメールが来た。
相野さんといっしょにやらせてもろてる秋アニメ『オメシグ〔泣いてもω(オメガ)笑ってもΣ(シグマ)〕』が二週連続で総集編になってしもた。
お祖父ちゃん:「なんや、いつのまに最終回やってんなあ?」
オメシグのファンになってくれてるお祖父ちゃんが不思議な顔をする。
テイ兄ちゃん:「お祖父ちゃん、アニメの総集編いうのはなぁ……」
そろそろ三十路やいうのに、若者文化にドップリのテイ兄ちゃんが説明する。
お祖父ちゃんはNHKのドラマの感覚なんや。
総集編いうのは番組がめでたく最終回を迎えて――あの感動をもう一度!――ちゅうノリで放送する特別番組。大河ドラマなんかは、総集編というだけで年末の気ぜわしさとお正月の予感がするめでたいもんや。
お祖父ちゃん:「ええ、放送に間に合わんから、しょーことなしにやってんのんか!?」
うちもテイ兄ちゃんも「「あははは(^◇^;)」」と笑うしかないねんけど、お祖父ちゃんは、うちが主役の妹の役をやってるんで、ちゃんと観てくれる。ありがたい。
留美:「あれねぇ、動画さんからNGが出たんだって」
遅くに帰ってきた留美ちゃんが報告してくれる。
留美ちゃんは終電に間に合うようなら、たとえ明くる朝にとんぼ返りになっても家に帰って来る。オメシグにもちょっとだけ出てくれてるしね。
留美:「原画の酒巻さん、ちょっとひどいらしいよ」
さくら:「ええ、なんでえ?」
オメシグは江戸川アニメが元請けの秋アニメ。なんか事情はよう分からへんねんけど、他の会社が請けられんようになって、江戸川が急きょ引き受けることになった作品。
留美:「コ▢ナからこっち、アニメって全話完納じゃない」
さくら:「ていうか、それしか知らんかった」
留美:「大人の事情で、社長が引き受けてきて、ムリクリ割り込ませたから無理が出てるっぽいよ」
さくら:「そうなんや……」
留美:「酒巻さんて、すごくていねいな仕事する人でしょ」
さくら:「ああ、うん……」
声優の仕事をしてるのは江戸川アニメがあったればこそ。もとはと言えば先輩の百武真鈴(ももたけまりん)のたくらみやったけど。この仕事に生きがいを感じてるうちには、真鈴先輩は神さまだか悪魔だかのお使いで、江戸川アニメは第二の故郷っぽい。
高校生やった(いまでも、まだ三年生やねんけど)わたしを、陰になり日向になって見守ってくれたのが江戸川の人たち。監督は、いたってどんぶり勘定やけど、それを支えているのがスタッフのみなさん。
とくに酒巻さんは「ていねいにやっていたら、必ず見えてくるものがあるわよ」と、つい監督にのせられてやっつけの勢いで行こうとするのを諌めてくれはった。
留美:「絵コンテのあがりも遅かったんでしょうねぇ……」
そう言いながら、タブレットにオメシグの公式サイトを出す留美ちゃん。監督を筆頭に数十人の名前がスクロールされていく。
さくら:「第一原画の里中智満子って、誰やのん?」
偉大な少女漫画家と似すぎてる名前にひっかかる。所帯の小さい江戸川アニメ、ほぼ全員を知ってるうちには聞き慣れへん名前や。
酒巻さんは第二原画なんで、第一原画さんが描いた第一原画に引っ張られてる。
監督の遅筆がそもそもの原因やろねんけど、この第一原画にもちょっとむかついた。
思わず伸ばした手ぇは虚しく空を掴む。
ああ……空しく手ぇは空気をモフる。
あれから二月……まだダミアロスには慣れへんさくらでした。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍中尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍二等軍曹
月島さやか 中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 酒巻栞(原画)
声優の人たち 花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎
さくらの周辺の人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官) 相野千春(声優の先輩)
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍中尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍二等軍曹
月島さやか 中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 酒巻栞(原画)
声優の人たち 花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎
さくらの周辺の人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官) 相野千春(声優の先輩)