大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・133『are so』

2024-10-13 15:56:57 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
133『are so』   




 ちょっとやり過ぎたかなあ。


 殊勝なことを言ってるけど、たみ子の目はへの字だし、いっしょに写真を見てるお仲間は、みんなニヤニヤしてる。

 さすがに教室だと差しさわりがあるので、昼休の中庭、藤棚の下で体育祭の写真を見ている。ほら、最後のプログラムだった着せ替えリレー。

 何十枚もある写真の中で一番人気が10円男の女装写真。

 もともとスレンダーな優男なんだけど、めちゃくちゃセーラー服が似合ってる。
 パンツ以外は全部女物で、走っているとスカートの中のスリップやら、揺れる襟から覗くブラ紐なんかがリアルに雰囲気。
 そして、髪は女子のボブってくらいに伸ばしてたから、違和感がほとんど無い。

 そして何より表情。

 最後まで嫌がってたんで、眉根にキュっと力が入ってるとこが、健気でカワイイ(^▽^)

「山口百恵みたい!」

 思わず口走って、みんなが『?』な顔をする。

 しまった、この時代、まだ山口百恵はデビューしてないか!?

「あ、ちょ……」

 佳奈子が声を上げる。ちょうど通路から10円男が友だちとやってくるところだ。

 アワワワ(''◇'')

 真知子が慌てて写真帳を挟んでいたスクラップ帳ごと落としてしまう。

 仕方が無いので、スクラップ帳ごと拾ってスクラップ帳を観てるふりをする。

 写真帳もスクラップ帳もロコのもので、開いたところは今月のニュース。

「なんだ、ヒロヒトの写真なんか見てんのか……」

 捨て台詞を残して、男どもは学食の方に行ってしまう。

「そうだ、天皇陛下、そろそろ帰って来るんだねぇ」

 記事の写真を見ながらたみ子が話題を変える。 

 
 史上初めて天皇陛下がアメリカに行った。


 この時代の天皇陛下は令和の天皇陛下のお祖父ちゃん。

 令和の天皇陛下も、わたしの感覚じゃお爺さん。愛子様はわたしより四つも年上なんだけど、その愛子様はひ孫になるんだからすごいよ。

「おもしろいエピソードがあるんですよぉ(^▽^)」

 さすがはロコ、新聞をスクラップするだけじゃなくて、ネタを仕込んでるよ。

「「「なになに?」」」

「あっちじゃ、いろいろご歓談になってるんですけど。あ、陛下は日本語で通訳が入るんですけどね」

「でしょうね、天皇さんが英語喋ってるのは見たことない」

 真知子は『天皇さん』と呼ぶんだ。

「あの人、英語しゃべれるよ。皇太子のころにイギリスに行って国王とさしで喋ってるの見たことある」

 たみ子は『あの人』だよ(^_^;)

「で、どんな英語」

 英語が苦手な佳奈子が話題を戻す。

「それがですねぇ、人が喋り終えると『are so』って言われるんです」

「『ああ、そう』って日本語でしょ」

 わたしが普通の反応をするとESSの部員でもあるたみ子がピンときた。

「あ、そうか! 言うよ『are so』って、日本語に訳しても『ああ、そう』だ!」

「are so なんだ( ゚Д゚)!」

 あ、アハハハ(^〇^)

 ギャグをかましたと思われて、笑われてしまった。


 うちへ帰ってお祖母ちゃんに話をした。


「ああ、あれはすごいことだったんだよ」

「are so?」

 ポコン

「イテ」

 新聞丸めたので叩かれる。

「国家的規模の敗戦で潰れなかったのは日本の皇室だけなんだ」

「え、そうなの?」

「イタリアなんかムッソリーニが処刑されて、一応王制は残ったんだけどね、国民の総スカンくらって国外追放になった」

「え、イタリアに王さま居たの?」

「居たよ。第一次大戦じゃドイツとロシアの帝政が廃止されたし、中国の清朝も日清戦争に敗れて滅んじゃったし。ナポレオンもロシアに負けてコルシカ島に流されたしね」

「ああ、そうなんだ」

「それに、昭和天皇はあの戦争が起きた時の国家元首だからね、その陛下が敵国だったアメリカに国賓で行かれた意味は大きいよ」

「そうなんだ」

「エリザベス女王が来日された時の記者会見でね『来日の目的はなんでしょう?』って質問をした記者がいたんだけどね、女王のご返事は『天皇陛下に教えを請いにきました』だったよ」

「ええ、リップサービスじゃないの?」

「女王の訪日は、陛下の訪米の四年後だよ。それに、その時、裏の警護責任者をやってたのは……」

「え、お祖母ちゃん!?」

「そうだよ、向こうの影のSPとも親しくなってね。お祖母ちゃん、あくる年にその人からプロポーズされた」

「ええ、うっそー( ゚Д゚)!?」

「で、シュミレーションしてみた」

「え、どんな?」

「孫娘が生まれたら、どんな子になるかって……ほら、こんなの」

 お祖母ちゃんが指を回すと、ソファーの向こう側にわたしを100倍可愛くしたようなクォーター美人が現われた。そいつ、長い足を組んでピースサインをしやがったよ(^_^;)。

 明日から中間テスト、がんばろう。



☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 


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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!29『藪から棒』

2024-10-13 07:25:19 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
29『藪から棒』 




「とりあえず、その服なんとかしねえとなあ(^_^;)」

 エルフの王女レミは、マユの叫び声で着替えたばっかのフンワリワンピを吹き飛ばされて。取りあえず、そこら辺の落ち葉をかき集めて蓑虫みてえになってやがる。

「いいのよ、あの驚きっぷりで、あなたの魔力のスサマジサも分かったから」

「んでも、その格好じゃあんまりだろ。マユが魔法で服を出してやっから」

「アハハ、そうしてくれたら嬉しいんだけどね(^_^;)」

「あんまりファッションのセンスには自信ねえんだけどな……とりあえずファッション雑誌でも見て考えようよ」

 マユは、とりあえずローザンヌにあった最新号を出したぜ。

「このタンク付きトロピカルTシャツに花柄フレアースカート、ストローハット付きなんてどうだ?」

「……あの」

「じゃ、このゴスロリモテカワ系なんかどうだ。知井子ってやつがこんなの着てんだけどよ、あ、こっちのもいいかも……ん、どうかしたか?」

 レミは、じっとうつむいてやがる。

「……やっぱり、あなたを騙すことなんてできないわ」

「騙す……どういうことだ?」

「マユが、魔法で服を出してくれたら……もう契約成立ってことになるの」

「え……マユをハメようとしたのか!?」

「……うん」

 アホー

 鳴き声がしたかと思うと、上を飛んでたカラスが糞を落としやがってレミのホッペに命中させやがった。レミは、一瞬ドキリとしたけど、そんなに驚いてねえ。なんか間が抜けててマユはクスっと笑っちまった。

「…………」

「あぁ、ごめん笑ったりしてよ……」

 マユは、ティッシュを出して拭いてやろうとした。レミは、のけ反りやがる。

「なんだよお(`△`)」

「それもダメ……わたしのために何かしようとしたら、それも契約したことになる」

 アホーとカラスが、また鳴いた。

 シャクに障ったんで、カラスを石にしてやった。

 ポト

 カラスは「アホー」の「ホ」の口をしたまま落ちてきやがった。

「あ……それ、お父さんの監視用のカラス……ヤバイよ」

「ハァ、もういいよ」

「え……」

「とりあえず、レミの味方になってやんよ」

「ほ、ほんと( ゚Д゚)!?」

 思わず立ち上がるレミ。

 その勢いで、身にまとった落ち葉が、いっせいに落ちてスッポンポン。でも、それにも気づかないほどレミの驚きと喜びは大きいみてえだ。

 ちょっとクセのあるやつみてえだけど、悪い奴じゃなさそうだ。

「あぁ……とりあえず、その格好、なんとかしよう」

「……あ(;'∀')」

「えい……あれ?」

 とりあえず、ファッション誌最新号に載ってた服を着せたんだけど、服はタグが付いたままレミの前に置かれた状態だぜ。

「これ、着ちゃったら、もう後戻りできないよ……」

「いいから、早く……着ろって言ったら、さっさと着ろヽ(`Д´)ノ 」

「あ……ありがとう(;'∀')!」

 レミは、大急ぎで服を着やがる。

 そのとき、マユが木の葉を吹き飛ばして出来た半径10メートルほどの森の広場。その向こうの薮で人の気配がした。

「だれだ、そこに居やがるのは!?」
 
 マユは、レミを庇うように立ちふさがったぞ。


 薮から……棒みてえな男が現れやがった。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  

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