大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・256『エキシビジョンレース』

2024-10-27 15:45:01 | 小説4
・256

『エキシビジョンレース』 ツナカン 




 エキシビジョンレースはゲストの人たちのレースっす!


 1号艇=ココちゃん(須磨の宮心子内親王殿下)

 2号艇=森ノ宮茂仁殿下

 3号艇=周温来

 4号艇=ミナホ(マーク船長の部下の美少女アンドロイド)

 5号艇=ポチ(マーク船長の犬型クルー)

 6号艇=桔梗(扶桑幕府所属、ココちゃんのガード)


「み、みなさん、お手柔らかにお願いします(≧▢≦ )!」

 ココちゃんは緊張しまくりで、メッチャ可愛いっす。エキシビジョンだから見る方もやる方も楽しめばいいっす。でも、ココちゃんは根が真面目なお姫さまなんで、こういうお楽しみでも気が抜けないんすね。

 がんばれココちゃーん! 楽しめばいいからあ! 力ぬけえー! 

 温かい声援もココちゃんにはプレッシャーみたいなんすけど、プレッシャー感じた時の表情が可愛いんで、みんな調子にノルっす(^_^;)

「エキシビジョンではあるが、ボートにはブースターが付けてある! ここ一番という時にブーストをかけて、みんなをハラハラドキドキさせてほしい。通過地点には花火を仕掛けてあるから楽しみにな。では、いくぞ!」

 バキューーン!!

 船長がスターターのパルスガンを撃って、全艇いっせいのスタートっす!

「いっけー!」「ダッシュー!」「いけいけー!」「日本一ぃ!」「宇宙一ぃ!」「ココちゃーん!」「ココ姫ぇ!」

 いやあ、他のゲストには悪いんすけど、クルーはみんなココちゃんを応援するっす。

 ここだけの話っすけど、ココちゃんのボートには特性のパルスブースターが付けてあるっす。折り返し地点のところでブーストさせると、すっげードリフトしながら旋回してトップに出るようにしてあるっす!

 折り返し地点のブイドローンには通過速度に応じて派手になる花火が仕掛けてあるんで、メチャ楽しみっす! 

「え、ツナカンもなにか仕掛けたのか?」

「え、なんだ、オデンカンもなんかやったのか!?」

「燃料タンクを大きくしたぞ、ノズルもいじったし」

「ええ、自分は燃料をパルスギに換えたぞ……」

「自分も……」「オレも……」「あたしも……」「実は……」

「ええ、おまえらもかあ!?」

「ええ、船長もっすかあ( ゚Д゚)!!」

 みんな、ココちゃんに肩入れして、ちょっとずつココちゃんのボートに仕掛けをしてたっす!

 ヒンメルの乗員は、こっそり仕掛けをすることにかけては右に出る者がねえってやつばかりっす。ちょっとビビったっす!

「ああ、でも……」

 ココちゃんは、性格がいいので、そういう裏技的なのは使わずに通過点を一つ二つと通過していくっす。

「まあ、ブースト使わなければ、普通の内火艇だからなぁ(^_^;)」

 第三ポイントを通過した時には5番目、6番目が森ノ宮殿下っす。

「意外にのろいのな、森ノ宮さん」

「ちがうぞ、オデンカン、万一のことが無いように、見守っているんだ」

「そうなんすかぁ……ちょっと詰まらねえかもっす」

「いや、折り返しを過ぎて、安心できたらダッシュをかけるつもりなんだろう」

「さすが船長、読みが深いっす!」

「フフフ、それぐらい読めなければ、貴様らのボスは務まらん」

「アハハ、そうっすね(^_^;)」

 
 で、それは、折り返し地点でスピンターンを決めようとした時に起こっちまったっす!

 
 
☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 重要事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟

 


 

 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!43『サンチャゴ爺さん』

2024-10-27 08:52:12 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
43『サンチャゴ爺さん』 




 あれえ?

 サンチャゴじいちゃんの小屋は、近くで見ると意外に大きいぜ。

 岬の一軒家なんで、比較になる建物がねえことや、作りがザックリしているんで小さく見えてるんだろうけど……家の前に立つと、自分が小さくなったんじゃねえかと錯覚するほどに大きいぜ。


「お早う、じいちゃん」


 ミファのあいさつに応えははなかった。そんなことにかまわずに、ミファは中に進んでいきやがる。

 教室ぐらいの部屋に寝室や台所がついているだけのようなシンプルさ。漁具や海で拾ってきたガラクタがあちこちに散らばってやがるけど、足の踏み場もねえ……というわけでもねえ。

「来るたびに片づけているから、まあまあだけどね……ベッドにはいない……ということは」

 サンチャゴじいちゃんは、教室ぐらいの部屋の海側に面した大きな窓辺、そこのロッキングチェアで眠ってやがった。

 色あせた横しまのシャツにオーバーオール。骨太だけど、しぼんだ風船みてにに萎えてやがる。漁師特有の赤茶けた顔には深いしわが刻まれ、頬から下は真っ白な無精ひげ。

 戦場で迷子になって、もう一歩も動けねえジジイの兵隊みてえだ。

「サンチャゴは、海の上が一番似合うんだ。さあ、潮風を入れようね。ちょっと手伝ってくれる」

「おお、いいぞ」

 大人が二人両手を広げたぐらいの窓は、ごっつい樫の木でできている。ひとマス三十センチほどの格子のガラスは厚さが一センチほどもあって、横引きのシャッターを開けるくらいの力がいりそうだ。

「よいしょ!」「せーの!」

 ガラ ガラガラガラ!

 トロッコが走るみてえな音がして窓が開いたぜ。

「うん、これくらいでいいよ」

 ミファがOKを出すと、潮風が海鳥の声や波音といっしょに入ってきたぜ。

「さあ、タバコに火を点けるよ」

 ミファが、タバコの用意をしている間、ジジイの薄く開いた目を見た。白目は歳相応に濁ってやがるけど、瞳は、海の色をそのまま写したように青くて、ちょっと見とれちまったぜ。

 その瞳は動くことはなかったけど、瞳孔は、なにかを見つめてるみてえに絞り込まれてやがる。
 

 戦う男の瞳だと思ったぞ。


 小悪魔の歴史の授業で習った、プルターク英雄伝のサラミスの海戦、その中のデメトリオス一世の瞳と同じだと思った。

――退屈な授業を聞かせるより、こういう実物を見せた方がよっぽど分かりやすいぜ――

 マユは、自分の不勉強を棚に上げて感心したぞ。

 と……次の瞬間、青い瞳は死人みてえに力を失い、鋭く絞り込まれた瞳孔は、だらしなく緩んじまったぞ。

「ミファ、タバコを消せ!」

「え……?」

「いいから早く!」

 ミファにタバコを消させ、魔法で窓を全開にした……!

「こんなことをしたら、じいちゃんの体に悪いよ」

「悪くなんかねえよ。じいちゃんの瞳を見てみろ」

「……あ!」

「分かった……?」

「……うん」

「サンチャゴじいちゃんの目は戦う男の目なんだ。でもサンチャゴじいちゃんは起きることは無ぇ……んだろ。瞳は絞り込まれているけど、体は緩んだまま」

「これって……」

「たぶん……オンディーヌの呪いだ」

 ゾワ( ゚Д゚)


 そのとき背後に人の気配を感じた。


 いつのまにか、入り口のところにベアおばちゃんが立ってやがる。

「やっぱり、その子は魔女、いや、ひょっとしたら魔法少女!?」

「ちがうわ!」

「いま、たばこを消して、窓を魔法で閉めただろ。あんたたちみたいな子どもでなきゃ、サンチャゴの世話はできないけど、いつか、こんなことになるんじゃないかと心配もしていた。サンチャゴの夢を知りたがるんじゃないかって」

「ベアおばちゃん、やっぱりなにかあったのね。サンチャゴじいちゃんを起こしちゃいけないなにかが」

「ミファ、その子から離れるんだ。いま封じ込めてやるから!」

「おお( ゚Д゚)!」

 ベアおばちゃんは一枚のカードをかざしやがった。元プリマドンナだから、めちゃくちゃカッコよくて、思わず感動の声が出たぜ。

 けど、この小悪魔マユをどうこうできるシロモノじゃねえ。

「魔女封じの宝珠か……そんなもんでマユは封じられねえぞ」

「レアもののカードなのに……」

 パチ  ボ!

 マユが指を鳴らすと、カードに火が点いた。

「うわ、アチチ……!」

 ベアおばちゃんは、慌ててカードを手放しやがった。

 カードは意思あるものみてえにワンカートンのたばこの包みの上に落ちた。

「マユは、魔女でも魔法少女でもねえ、小は付いても悪魔なんだぞ。そんなヘナチョコカードにゃ負けねえぞ!」

 ブスブスブス

「グ、だれがブスだ! え、ちがうのか?」

 たばこの包みがくすぶり始めた。気を取り直して話してやったぞ。

「サンチャゴには、すでに、精霊オンディーヌの呪いがかかっていて、目覚めることはねえよ。その上ハバナたばこの煙……この煙を嗅ぐと仮死状態になって目の光りまで失ってしまうんだ。そうだろベア!」

「そ、それは……」

「うそだよ、そんなこと。だったら、いっしょにいるミファたちも仮死状態になっちまうじゃないか(;'∀')!」

「このたばこは、大人しか効き目がねえんだろ。だから子どもにだけ世話をさせてるんだ」

「グヌヌ……」

「消すぞ、ベア」

 くすぶるたばこに息を吹きかけてやった。煙はベアの顔を包み込むようにわだかまって、ベアは、あっけなくくずおれちまった。

「ベアおばちゃん!」

「だいじょうぶ、寝てるだけだ」

 それでもミファは、ベッドからケットを持ってきてベアに被せてやる。いいやつなんだ……けど、口には出さねえ。

「……そんなにサンチャゴじいちゃんの夢って、怖いものなの?」

「怖いものじゃなくて、危ないものなのかもしれねえぞ」

「……この目で確かめてみたい。この絞り込んだ瞳が見ているものを……でも、無理な相談ね。そのオンディーヌの呪いとかがかかっているようじゃ」


 ボォォォォォ


 開け放たれた窓から汽笛が聞こえてきた。めずらしく大きな船が入港してきたみてえだ。

 ボォォォォォ

 チラッと見ると灰色の軍艦だ。

 ボォォォォォ

 汽笛は、もう一度鳴って、気づくと、サンチャゴの目は汽笛が鳴る度に光が強くなっていってる。

 あれ?

 そして、偶然か、魔法か、坂道で吹き飛ばされたマユのストローハットが、窓から、フワリと小屋のテーブルの上に舞い降りてきやがったぞ。

「じいちゃんを起こすことはできねえけど、夢の中に入っていくことはできるかもしれねえ」

「行ってみたい!」

「どんな夢だか分からねえ。場合によっちゃ夢に取り込まれて出てこれなくなるかもしれねえぞ」

「でも、見てみなくちゃ始まらないよ……お願い」


 ボォォォォォ


 南度目の汽笛が、とどめのように鳴り響いた。


「わかった。じゃ、マユの目を見つめろ……」

 そう言いながら、マユはストローハットを逆さにしたぞ。

「エロイムエッサイム……エロイムエッサイム……」

 呪文と共に、マユとミファの体はどんどん小さくなって、逆さになったストローハットの中に収まった。

「エロイムエッサイム……エロイムエッサイム……」

 呪文は、さらに続く。

 今度は、ストローハットそのものが小さくなり、浮き上がったかと思うと、サンチャゴじいちゃんの青い瞳の中に吸い込まれるように入っていったぞ!


 それは、巨大な青い渦に巻き込まれていくボートみてえだったぞ……。


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • 狼男
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  

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