大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

勇者乙の天路歴程 029『生麦事件・1』

2024-10-22 16:54:07 | 自己紹介
勇者路歴程

029『生麦事件・1』 
 ※:勇者レベル4・一歩踏み出した勇者




 やっぱり居た!


 いや、居たどころの騒ぎではない。生麦村に続く街道沿いの田畑、あぜ道、林の際、鎮守の境内、沿道の百姓家の庭先などに結構な人間が集まっている。

 さすがは幕末に屈指の雄藩として名をはせた薩摩の大名行列。在地の百姓や町人、街道をゆく旅人たち、数は少ないが横浜居留地の外国人たちも混じって行列が通りかかるのを待っている。

 待ってはいるが、みな、この時代の作法を心得ていている。街道よりも高いところで待っている者はいない。

 田畑やあぜ道は街道の路面よりも低く、普通に立っていれば見下ろすというような無作法なことにはならない。人家の二階や屋根や築地の上から覗くような者も居ない。わんぱく盛りが二三人木に登ろうとしていたが、周囲の年かさたちに叱られて降りていく。外国人たちも、そういう日本人の作法を見て笑いながらも倣っている。

「この分なら大丈夫なんじゃないですかねえ」

 白兎が楽観的なことを言う。

「課長代理、姫の事以外はいい加減じゃない?」

 スクナが意地悪を言う。

「そ、そんなことはない!」

「そう? なんか緊張感なくない?」

「ないよ! そうでなきゃ、裏街道をここまで全力疾走なんかしないよ!」

 そう、我々は始まりの村を通過している大名行列を避けて、裏街道を駆けに駆けてここまで来たんだ。行列が差し掛かるには、もう少しありそうだ。

「ちがう! もう始まっているぞ!」

 ビクニが駆けだした。

「ビクニ!」

 来たばかりの裏街道を駆け戻る!

 裏街道は表街道に並行しているわけではない、いま駆け抜けてきたところは弓形になっていて、二つ目の張り出しを過ぎたところで混乱が見えて来た。

 馬に乗った四人の英国人が行列を縫って先に行こうとしている。

 そうだ、英国人たちは散歩のついでに大名行列を見物しようとしたんだ。

 当然、先触れの侍は「脇へ寄れぇぇぇぇ…………」と声を上げながら進んでくる。言葉は分からずとも、避けるか退避すべきと思うはず。

 しかし、彼らは、そのまま行列を遡行するように進んでしまい、久光の籠近くまで近づいた。
 お供の薩摩藩士の殺気にようやく怖気を振るって馬首を逆さにして戻ろうとし行列を乱してしまう。

 産婆と飛脚以外は横断してはいけない大名行列を乱してしまったのだ。それも、日本一勇猛で知られた薩摩の行列だ!

 チェストー!

 薩摩示現流の裂ぱくの声が聞こえたかと思うと、一丁先の行列の中で血しぶきが上がった!

 ヒヒーーン! ウワァアア! キャーー! オオ!

 人馬の悲鳴と雄たけびが響く!

「英国人たちを助けるぞ!」

 叫びながら走った。

 生麦事件では死者二名負傷者一名が出て大騒ぎになる。英国は、この事件の損害賠償を求めて明くる年には薩英戦争が起こる。

 いや、誤解のために起きようとしている惨劇、今なら間に合う。

 止めなければ!

 
☆彡 主な登場人物 
  • 中村 一郎      71歳の老教師 天路歴程の勇者
  • 高御産巣日神      タカムスビノカミ いろいろやり残しのある神さま
  • ビクニ        八百比丘尼  タカムスビノカミに身を寄せている半妖
  • 原田 光子       中村の教え子で、定年前の校長
  • 末吉 大輔       二代目学食のオヤジ
  • 静岡 あやね      なんとか仮進級した女生徒
  • ヤガミヒメ      大国主の最初の妻 白兎のボス
  • スクナ        ヤガミヒメの新米侍女
  • 因幡の白兎課長代理   あやしいウサギ
  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!38『赤ずきんと狼男』

2024-10-22 08:15:37 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
38『赤ずきんと狼男』 




――ああ、ここにいたのか――


 振り向くと、楓(かえで)の葉っぱが一枚宙に浮いていやがる。

「そんなに気を遣わなくてもいいわよ、風邪をひくわよぉ(-_-;)」

 赤ずきんが、葉っぱの方を見ないようにして言いやがる。

――でも、姿を現したらキミが辛いだろう――

「もう、気持ちの整理はついたから。それに透明になって身を隠すんだったら、その楓の葉っぱはよしたほうがいいわよ」

――透明でも……ここだけは、きまりが悪くって――

「葉っぱがユラユラしてるの、かえっていやらしいわよ」

――そ、そっかなあ――

「エヘン……あのな、マユはぜんぶ見えてるんだぞ」

 葉っぱの1メートル上のところを見ながら言うと。葉っぱがびっくりしたように落ちてしまって、さすがのマユも真っ赤になっちまったぜ(#'∀'#)。

――ほ、ほんとか( ゚Д゚)!?――

「ああ、ほんと」

 大あわてで、葉っぱが元の位置にもどると道の向こうにすっ飛んで、薮の中に隠れてしまいやがった。

「ごめんねぇ、情けないとこ見せちゃって」

「あれが、赤ずきんタソガレの原因なんだな」

「うん……あいつが戻ったら、説明するわね」


 少しすると、気配が服を着て現れた。

 マユは斜め向かいに別のベンチを出してやったぞ。

「ひょっとして、キミがウワサの魔法使い……おっと、危ない。このベンチ、崖のすぐ間際だよ!」

「そう、事と次第によっては、ベンチごと崖下に落してやるからな」

 ふーっと息を吹きかけると、ベンチが後ろに傾いた。

「ワ、アワワワ(''◇'')!」

「ああ!」

 イケメンが吉本のお笑いみてえに慌てやがる。意外な反射神経で赤ずきんがそいつの脚を掴んで、危ういところを引き戻しやがった。

 それから、そいつ九割、赤ずきん一割ぐらいで事情を説明しやがる。

「……と言うわけ」

「……なのよ」

「エ――( ゚▢゜)!?」

「ウワァアアーーー(≧◇≦) !」「キャーーー(≧⊿≦) !」

 マユは慌てて口を押さえたけど、漏れた息で、イケメンは手を伸ばした赤ずきんごと落ちていきやがった!

「あ、ごめん……」

 ふたりはバラエティーで罰ゲームをうけた二線級アイドルみてえな引きつった笑顔で戻って来て、話の続きをしやがった。

「じゃ、なに、赤ずきんは、この狼男。それをそうだとは知らずに好きになった。で、この狼男は、狼になったときに、知らずにお婆ちゃんと赤ずきんちゃんを食べちまったってわけか!?」

「「うん……」」

 二人がそろってうなづいた。

「で、でもよ……どうして、そのことが分かったんだ!?」

「……それは……ね……この人の裸を見たら、お腹に大きな傷があって」

「ボクは、腎臓結石をとったときの傷だと思っていたんだ。だってお母さんがそう言ってたから」

「わたしも、それで納得したんだけどね。デートが終わって、名残惜しいものだから、ずっと彼が帰っていく姿を見ていたの。そうしたら峠を越えた向こうで狼の遠吠えがして……てっきり彼が狼に襲われたと思って、怖さも忘れて駆けつけたの……」

「そうなんだ、赤ずきんちゃんは、自分も裸だったのにもかかわらず、ボクのことを心配して駆けつけてくれたんだ」

「すると、そのとき、雲がお月さまにかかって……この人が、ちょうど人間にもどりかけているところを見てしまって、思わず叫び声をあげてしまったの。マユほどじゃないけど、わたしの叫び声もすごくて、あのとき、わたしを助けてくれた猟師さんが駆けつけて『そいつは、こないだお婆ちゃんと赤ずきんちゃんを食べた狼だ。その傷はわたしが縫ったんだから!』なって」

「ボクは、なにも知らなかったんだ。そのとき、初めて自分が狼男だったってことが分かったんだ……(-_-;)」

 マユは眉をつり上げて聞いたぞ。

「でもよ、そうだったとしても、自分のお腹にいきなり大きな傷ができて、なんとも思わなかったのかよ!?」

「ボクは、子どものころから記憶がまだらなんだ。血だらけで帰ったり、服がボロボロになっていたり……そのつど、お母さんが説明してくれて……」

「そうか……でもよ、そんな夕暮れ前に、なんで二人裸でいたんだ……?」

「それは……(-○-;)」「ねえ……(-,-;)」


 見交わす二人の目から☆が出て、ぶつかって、大きなハートマークになっていきやがった!


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • 狼男
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする