大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・134『演劇部の部室で昼ご飯』

2024-10-19 15:28:04 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
134『演劇部の部室で昼ご飯』   




「男ってつくづくバカですね」

 図書室へ本を返しに行って戻ってきたロコがしみじみ言う。

「え、どうしたの?」

「思わず人生の真理を呟いたハムレットみたい」

 二つ目の言葉(最初のは真知子、二番目は牧内さん)で分かったらえらいんだけど、今日のお昼は演劇部の事実上の部室である図書分室でお昼を食べている。

 二年の二学期にもなると、学校の様子は分かってるし、マンネリもやだから、時どきイレギュラーなところでお昼にする。

ロコ:「え、あ、商店街の自販機でカップヌードルを買った話をしてたんですよ三年の男子が」

たみ子:「カップヌード(''□'')?」

ロコ:「あはは、そういう間違い方ですよ」

牧内さん:「ああ、銀座のホコ天で、あれ食べながら歩くのが流行だってテレビで言ってた」

 他のカップ麺に比べて割高なカップヌードル。わたしはあまり買わないけどね。

 そのカップヌードルが発売になったのが今月なんだ。人によって認知度がちがって、ロコ以外は牧内さんが知っている程度。ロコがスクラップ帳を広げて説明すると、カップ麺だけに食いつきがいい。

ロコ:「商店街の酒屋が自販機置いたんですよ」

たみ子:「え、インスタントラーメンの自販機!?」

ロコ:「並みの自販機と違って洋服ダンスくらいに大きくて、通行に邪魔になるんで、酒屋は横に入ったとこに置いたんですよ。それをなにか勘違いして……」

メグリ:「アハハ、ヌードに引っ張られたわけだ」

ロコ:「いやはや、男って言うのは……」

佳奈子:「でも、わざわざ自販機で買うようなものなの? スーパーとか、それこそ酒屋の店先でだって売ってるでしょ」

真知子:「メーカーの陰謀じゃないのぉ。カップヌードルって、男の想像力を刺激するかも?」

たみ子:「でも、ヌードルって、英語で麺類一般だからねえ」

佳奈子:「値段はいくら?」

ロコ:「それが、220円!」

みんな:「高っかー!」

 ああ、だよね。学食のラーメンだったら二杯食べてお釣りがくる。

ロコ:「いや、それが、お湯まで注いでくれて食べられる状態で出てくるんですよ! 取り出した瞬間は、ちょっとした幸福感に浸れます!」

メグリ:「あ、ひょっとして、ロコ、自分でも買ってみたんだ?」

ロコ:「え、あ……アハハハ(^_^;)」

 こういうところは、ロコの愛すべき好奇心だ。

 
 でも、我々はヨタ話をするために演劇部の部室でお昼を食べているわけではない。


 みんなの目の前には同じB5のプリントが置かれていて、そのプリントには氏名の他に記入欄が三つある。


 文系志望   理系志望   その他(就職、各種学校、その他)


 そう、中間テストも終わって、二年生全員に進路希望調査票が配られたんだ。


 五人のうち、ハッキリボールペンで(つまり清書)書けているのは牧内さんだけ。彼女はハッキリと劇団〇〇付属研究所と書いていた。



 
☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 

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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!35『七人の小人と赤ずきん』

2024-10-19 07:22:10 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
35『七人の小人と赤ずきん』 




 鉱山から戻ってきた小人たちは、自分たちの家が見えてきたところでビックリしやがった! 

 無理もねえ、白雪の歌声が聞こえてきたんだからな!

「てっきり白雪姫が生き返ったと思ったじゃないか( ' ^ ' #) !」

 おこりんぼのグランピーが鼻息荒く言った。

「でも、そのバラ色のくちびると声は白雪姫だ。ま、いいじゃないか(^_^;)」

 照れ屋のパッシュフルが、頬を染めてため息をついた。

「でも、これって、どういうこと(´^`) ?」

 おとぼけのドービーは、まだ分かっていねえ。

「だから、今言ったろ、これはだなぁ……ハーックション( >ω<) !」

 知ったかぶりのスニージーがテキトウに解説を加えようとして大きなクシャミ。

「つまりだな、ここにいる魔女のマユが、魔法でなんとかしてくれるってことだ……ってぐらいは、なんとなく分かった(''◇'')」

 リーダー格のドックが、とりあえずまとめやがった。

「だーからぁ、明日の朝、アニマ王子がやってきて、白雪のくちびるをした赤ずきんにキスして……それで、うまくいくってことなんだ! 文句ねえだろが(>▢<)!」

 マユはキレかかったぜ。

「ま、どうにかなるんだから、どうにかなるんだろ。ハッピーじゃないか(^▽^)!」

 ポジティブなハッピーが素直に喜んで、やっとドワーフたちは納得しやがった。めんどくさいやつらだ!

「山から帰ったばかりで、お腹空いてるでしょう。今夜は、わたしが晩ご飯を作ってあげるから」

 レミが、とりなしやがる。

「ああ、お腹空きすぎて、眠いのも忘れちまったよ」

 ねぼすけのスリーピーがうなづくと、七人のドアーフたちのお腹が、いっせいにグー……と鳴りだし、みんなで大笑いになったぜ。

「でも、今日は、山で働きすぎて、燃料の薪を集め損なったな!」

 おこりんぼのグランピーが腕を組んで、右足で地面をドンドンした。

 すると、さっきから、三人娘たちが盛大にまき散らした『!』や『?』や……が、ピョンピョン跳ねだした。

「これは、いい薪になるよ。純粋な『!』や『?』だ、グランピーのは不完全燃焼になるんで使えたもんじゃないけど、これなら、今夜のぶんの薪には十分だ」

「どれも、よく乾いていて、いい種火になりそうだ」

 ドックとハッピーが『!』や『?』を集めはじめた。

「アチチ、この『!!』は熱すぎるぞ!」

 グランピーが拾ったのは、白雪姫が最初に言ったやつ。「ああ、もう、やってらんないわよ!!」の『!!』でだったぜ。


 にぎやかな晩ご飯が終わって、マユは赤ずきんを庭に連れだしたぞ。


 庭は、月のやつも満腹になったのか、まん丸の満月で、ひっそり話すのにはぴったりだったぞ。

「なにか、お話でもあるの?」

 赤ずきんが白雪姫の声で訊いた。

「最初に現れたとき、なんだか顔色が冴えないって感じて……でも、こちらのお願いは喜んで引き受けてくれて……なんか、あるんじゃねえかって思ってよ」

 マユは、切り株のベンチに、赤ずきんをさそった。

 月の光に縁取られた赤ずきんの姿は、マユがびっくりするほど美しかったぞ。

「わたし、思ったより大人だったでしょ……」

「おお。十歳くらいのガキンチョかと思ってたぞ」

「わたし……時間の流れが、他の物語の登場人物と違うの」

「え……?」

「お婆ちゃんを、オオカミさんから助けて、それで、わたしの物語は終わるはずなんだけど、終わりにならなくって……気がついたら、こんな……多分十八歳ぐらいの女の子になってしまって。なんだか、芝居が終わったのに、まだ幕が下りない役者さんみたいに戸惑ってるの」

 赤ずきんは、足もとの松ぼっくりを、そっとけ飛ばした……松ぼっくりは、コロコロ転がって、白雪姫の棺の下まで転がっていった。

 自然に二人の目は、白雪に向けられたぞ。

「同じファンタジーの、それも同じグリム童話の仲間。その役にたてたら、それで、わたしはいいの……」

 バランスが悪かったのだろ、いったん停まった松ぼっくりは、コトリと音を立ててこけた。

「アイデンティティーのない主人公って、なんだかね……」

「アイデンティティーとか、レーゾンデートルの問題だけじゃねえように思えるぞ」

 マユも足もとの松ぼっくりをけ飛ばした。松ぼっくりは、見事に赤ずきんの松ぼっくりに当たった。

「ビンゴ……?」

「明日……白雪さんのことがうまくいったら……ああ、やっぱりダメだ」

 赤ずきんは、うつむいてため息をついた。

「ねえ、あの松ぼっくりたち、なんだかお話してるみたいだよ」

「ほんとだ……」

 そう言いながらも話がまとまらねえ今日一番の功労者。

「明日、その気になったら話してよ。赤どぅきんちゃん」

 優しい気持ちになってきたんで、きちんと「ちゃん」付けで言ってやったぞ。

「いま、赤ドキンちゃんって言った?」

「え、そう聞こえたかぁ?」

「わたし、アンパンマンのキャラじゃないんだからね」

「アハハ、そうだよな。赤どぅきんちゃん」

「ほら、また!」

「そうかぁ?」

「もう……」

 赤ずきんがふくれた。

 マユは、手を伸ばして、赤ずきんのホッペをつついた。

「プ」と音がした。

「アハハハ」

「やっと笑った。赤どぅきんの負け。この件が終わったら話してくれよな」

「はいはい。さすが小悪魔ですね」

「おちこぼれだけどな」

「「アハハ……」」
 
 二人を照らすお月さまの光が柔らかくなったような気がしたぜ……。

 人の気配に気づいて振り向くと、七人のドワーフたちが、白雪姫の棺の周りにあつまり、口々に「お休み」とささやいていきやがる。

 ドワーフたちは、白雪姫への「お休み」が終わると、小屋へと帰っていく。
 小窓から、レミがドワーフたちの優しい「お休み」のあいさつを見守っていたぞ。

――明日は、たのむよ――

 リーダー格のドックが、メガネをずらして、マユの方を向いた。

――まかしとけ――

 想いをこめてうなずくと、ドックは、ニッコリ笑って、小屋の中にもどっていった。

 あいかわらず、お月さまは星どもを従えて、柔らかく微笑んでいやがった……。


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  


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