大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語2・077『魔王子トバルと御息所の激闘』

2024-10-14 11:01:52 | カントリーロード
くもやかし物語 2
077『魔王子トバルと御息所の激闘』 




「ミヤスドコロぉ?」「 なんだ、その観光地の休憩場所みたいな名前はぁ?」

「ふん、哀れなな異世界王子よ。読み仮名だけ拾っても妾(わらわ)の値打ちは分かるまいぞ」

「なにを……ぼくは世界中の言語を理解する力があるんだぞ」「六条御息所……か、フフ、休憩所どころか京都の公衆トイレみたいな字面ね」「トバリヤクモは容赦ないね」「あなたは力でおしていきなさい」「ああ、リアルメイソンと同じ力だからね」「その意気よトバルメイソン」

 トバルヤクモとトバルメイソンが交互に反論してくる。

「フン、では、その公衆トイレに勝ってみよ!」

「「望むところ!」」

「あぶない、御息所ぉ!」

 ブン! ブブン! ブン!

 姉のトバリと同じような音をさせて御息所に攻撃を仕掛ける二人の分身トバル。

 フワリ フワフワ  

 ブブン! ブン!  

 フワ  

 ブブン!  

 フワリ

 トバルヤクモとトバルメイソンに分身してるんで敵わないかと心配になったけど、けっこう身軽に躱していく御息所。

「なかなかやるじゃないか、おチビちゃん」

 悪気無く禁句を使って応援するメイソン。いつもだったら「おチビちゃん言うなあ!」と文句を言うんだけど、黙々と異世界王子の攻撃をかわしていく御息所!

 ブン! ブブン! ブン! 

 フワ フワ ヒラリ フワワ 

 ブブン! ブン! 

 フワリ フワフワ ヒラリ

「頑張ってるけど、なんだか躱してばかりだなあ……だいじょうぶか?」

「だいじょうぶ、なにか考えがあってのことだと思う」

「フワフワ逃げてばかりいないでぇ」「かかってこいぃ!」

 ブブン! ブン! 

 ハラリ フワフワ ヒラリ

『よし、もうこのくらいで良いであろう』

「「なんだと?」」


 呆気にとられるトバルを尻目に両手を広げてトバリの周囲をグルリと回る御息所。
 その入っている手袋からはハラハラと星くずみたいな花粉みたいなのが振りまかれ、二人のトバリは急速に眠くなってきて一つになって元の一人トバリの姿になったよ。

『トドメじゃ!』

 ウワァアアア!

 トバルは目をつぶったまま恐慌状態になって、叫び声をあげると逃げるように急上昇した。

 ズゴン! ギャフン!

 衝撃音と悲鳴があがる。

 急上昇したトバルは、そのまま結界の頂点にいた姉のトバリに激突して消えてしまった。


 ピ~~ピピ~


 ヒバリの声だけがして、あたりは元の穏やかな草原に戻ったよ。


 でも、メイソンも他の仲間も姿が見えない。

 時間切れになったんだ。

 メイソンも言ってたし、ちょっと寂しいけど……まあ、仕方がない。

「ねえ、どうやってやっつけたの?」

 御息所に聞いてみる。

『あれはね、あいつがこれまで見た悪夢をぜんぶ思い出させてやったのよ』

 もう通常モードになって、それだけ言うとポケットの中に戻ってしまう御息所。

 ZZZZ……ZZZZ……ZZZZZZ……

「疲れちゃったんだね……しかたない、一人で行くかぁ」

 メイソンたちが持ってきてくれた食料の中からチキンラーメンを出して、ボリボリ齧りながら先に進んだ。

 ゲフ

 一袋まるまるかじって食べたら、けっこうお腹がいっぱいになった。


 キーストーンを取り返す旅はまだまだ続いていきそうだ……。



☆彡主な登場人物 
  • やくも        ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド  メイソン・ヒル  オリビア・トンプソン  ロージー・エドワーズ  ヒトビッチ・アルカード  ヒューゴ・プライス  ベラ・グリフィス  アイネ・シュタインベルグ  アンナ・ハーマスティン
  • 先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの  ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王 織姫 間人皇女 マーフォーク(半魚人) トバル(魔王子)  トバリ(魔王女)
 
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!30『情けねえ王子』

2024-10-14 08:42:00 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
30『情けねえ王子』 


 


 薮から棒のような男は、心ここにあらずという顔をしてやがる。


「なんだ、この覗き魔ヤローは!」

「あ、その人だったら大丈夫。わたしなんか目じゃないから」

 麦藁帽を被りながら、レミが言う。

「目じゃねえ?」

 どういう意味だ?

「アニマ……今日もダメだったんだね」

「……あ、レミか。いつもと服装が違うから分からなかった……ああ、似合ってるよ」

 後ろの「似合ってる」は取ってつけたみてえで心が籠ってねえ……と思ったら、弱っちい女みてえに手で顔を覆って泣きやがる。

「な、情けないやつだよボクは!」

 ベルベットのマントにシルクの袖なんかかがゆったりしたドレスシャツ。乗馬ズボンに、金の鎖が付いたサーベルなんか付けていて、見るからに、ハイソな坊ちゃん。顔も、泣いてさえいなかったら、ディズニーアニメの王子さまが務まりそうなイケメンなんだけどな、自分で言ってる通りに情けねえ。

「紹介しとくわ。この人、ゲッチンゲン公国の王子さまで、アニマ・モラトリアム・フォン・ゲッチンゲン。こちら、わたしのお友だちで味方のマユよ」

 現金なもので、レミは、もう十年来のお友だちの感覚でいやがる。

「よ、よろしく、アニマって呼んでくれていいよ」

「ああ、小悪魔のマユだ。覚えとけ」

「え、あ……悪魔(◎△◎)!?」

「そーだ。ウジウジしてっと呪い殺すぞ」

「ヒーー(>□<)!」

「ああ、それくらいにしてやって、マユ(^_^;)」

「フン」

「今日もダメだったのね……」

「う、うん……」

「強い心で踏み出さなきゃ、いざという時に王子としての義務が果たせなくなるわよ。いすれは、国王にならなきゃいけないんだからね」

「ボ、ボクには、そんな資格はないよ。あの愛しい人一人救えないのに」

「じゃあ、その愛しい人のところに連れていってくれるかしら、現物見てもらった方が分かり易いから」

 え、マユに振んなよ(^_^;)!

「ああ、そうだな。見てやってくれたまえ。そして、ボクに知恵と勇気を与えてくれたまえ。このファンタジーの世界の程よいヒーローとしての勇気を」

「もう、ココロザシが低いんだから。ヒーローってば一番に決まってるでしょうが! 程よいなんてありえないわよ!」

 レミは、鼻息荒くアニマを叱りやがる。

「そういう帝国主義的なヒーローは、趣味じゃないんだ」

「そうやって、言葉でごまかして責任逃れするんだから」

「あ、立派な馬……」


 王子の後ろから立派な白馬が現れた。


「やあ、僕ハイセイコー。アニマ王子の専用のお馬さんだよ」

「馬が喋った!」

 驚いた。魔界でもケルベロスとか喋るけどよ。そういうのは見ただけで分かる。この馬はカッコはいいけど普通の馬だ、こいつには『喋ります』ってオーラがねえ。

「ここは、ファンタジーの世界よ。カラスが監視カメラにもなるし、馬だって、喋って当たり前」

「……でも、ハイセイコーって、どこかで聞いたことあるなあ」

「三十年前に、ここに来たんだ。そっちの世界にいたころは競馬場で走ってた(*´ω`*)」

 ちょっとはにかみながら、ハイセイコーが言いやがる。

「あ、伝説の競走馬!」

 マユの頭の悪魔辞典にも答えが出てきた。

――ハイセイコーは日本の世界的競走馬。1970年代の日本において社会現象と呼ばれるほどの人気を集めた国民的アイドルホース。第一次競馬ブームのヒーローとなる。1984年、顕彰馬に選出され、銅像にもなっている!――

「あ……そんなに感動してくれなくっていいから」

 ハイセイコーは、チラッとアニマ王子に目をやった。

「ハイセイコーは、この世界に来てからは、兄のアニムス・ウィリアム・フォン・ゲッチンゲンの乗馬だったんだ。兄が亡くなってからは、役目上ボクを乗せてくれているんだけどね」

「アニマ王子、僕は、キミに乗ってもらって光栄だと思ってるんだよ……そりゃ、お兄さんも偉い王子さまだったけど」

「そうだよ、兄貴は立派だったさ!」

 こいつ、だいぶ病んでやがる。

「ま、とにかく、ここで落ち込んでても、なんにもならんないから、行くとこに行こうよ!」

 レミが、キッパリと言った。


 それは、さらなる森の奥にあったぜ。


 丘を超えて小川を渡ったところが、テニスコートほどに開けた芝地になっていて、そこここに、マユには分からない花がいっぱい咲いてる。お花畑っていうやつだ。

 そのお花畑の真ん中に棺が安置されてやがる。

 近づくと、それはガラスの棺ってやつだ。


 棺の中で眠るように横たわっていたのは……まるで白雪姫だったぜ。
 


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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