大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・135『やっと進路希望調査票を書く』

2024-10-26 11:23:17 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
135『やっと進路希望調査票を書く』   




 ちょっと考えた。


 進路よ、進路。

 毎日、令和から昭和の宮之森高校に通ってる。

 動機は制服。

 去年の春に開校以来の制服がモデルチェンジして、どこにでもある今風の制服に変わった。気づいたのは合格者説明会。部活とかに来てる在校生は旧制服だったけど、パンフに出てたのは『新制服』でビックリしたんだ。

 絶対昔の制服の方がいい!

 それで、昭和の宮之森に通って、もう二年。

 授業はつまらないけど、学校は楽しい。

 中学じゃ、最後まで名前と顔の一致しないクラスメートが居たけど、今はクラス全員……どころか、よそのクラスにも友だちが居る。

 ロコ、 たみ子、 真知子、佳奈子、演劇部の牧内さん、みんな一生の友だちになりそう。

 男子だって、10円男の加藤高明を始め、委員長の高峰君とかは小中学校時代の女友達よりも距離が近い。

 できたら、このまま昭和の学校に通いたい。大学に行って、就職もしてぇ……むろん令和の家から通うんだ。二重生活だね。

 我がままだけど、ドップリ昭和で暮らすのは二の脚。

 理由は何だと思う?

 ネットが無いから? スマホが無いから? あっちこっちでタバコ喫ってるから?

 ううん、トイレですよ、トイレ!

 洋式トイレはめったにないし、ウォシュレットはまだ発明されてないし、一般家庭はまだまだポットン便所だったりする。

 だからね、令和の時代から毎朝、戻り橋を渡って昭和で昼の生活をする。

 我がままかなあ……そう思って進路調査票と睨めっこ。


「いいじゃない、昭和で進学したら」


 テレビを観ながらお祖母ちゃんが言う。

 油断がならない、ちゃんと見てるんだよ、この年寄りは。

「旋(まわり)なんか、火星で暮らすつもりなんだしさぁ……」

 これは、お母さんへの皮肉だ。あの人はNASAの訓練所に行ったきり音沙汰がないからね。

「見てごらんよ、この総理大臣の顔ぉ」

「人を顔とか見かけで判断するのは良くないんだよ、ルッキズムって言ってさあ……」

 テレビを見ると……ああ、この人だったんだ(-_-;)

 おたふく(学校の前のお好み焼き)のテレビで見た総理大臣を思い出した。

 佐藤栄作、よく分からないけど、令和のこの人よりは100倍マシな感じだった。ググってみると、安倍さんの義伯父さんのお父さんだった。

 家系でドーノコーノは反則なんだろうけど、納得してしまった。

 締め切りを二日過ぎた調査書に『文系進学希望』と書いた。

 明日は日曜で総選挙だけど、1971年は大安の水曜日。

 学食のAランチは、クジラの竜田揚げの日。ちょっと楽しみ。



 
☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!42『ストローハットを飛ばされた!』

2024-10-26 09:13:50 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
42『ストローハットを飛ばされた!』 




「ミファ、サンチャゴにこれ」

 ベアおばちゃんがミファに包みを渡しやがる。

 気になる包みだけど、ここで聞くのはヤベエ気がしたぞ。ささいな疑問や質問を口にしたとたんに、全部が崩れてしまいそうな危なさがしやがるんだ。

 たとえばよ、トランプタワー……って、アメリカの元気なジジイじゃなくて、トランプの札を器用に積んでって、ピラミッドとかビルみたいに積むやつな。ちょっと一枚失敗しただけで全部が崩れっちまうって遊びがあるだろ。たいてい何人もでやって賭けにしてやがる。

 魔界でも、いい歳した悪魔のオッサンたちが『エンジェルタワー』って名前つけてやってやがる。崩れたら「奢れえ!」とか、嫌な仕事押し付けたりとかな。

 あのエンジェルタワーみたいな感じ。

 
「その包み、何が入ってんだ?」

 港町の狭い坂道を上がりながらマユは聞いたぞ。

「タバコよ」

「サンチャゴの爺さんにか?」

「うん(-_-)」

「だいじょうぶか(^_^;)?」

「うん。もう自分じゃ喫えないんだけどね、これを焚いとくと、サンチャゴじいちゃんはうなされないの」

「爺さん、かなり悪いんだな……」

「うん。もう何年も寝たり起きたり。近頃じゃ、起きてるのは日に二時間ほど。それも起きてるだけで、なんにも喋らないし、面と向かっても視線も合わない……でも、分かるんだ。瞳の奥には、何か訴えかけてくるような光があるから」

「光……」

 そこで二人は、坂道の上に出てきた。

「うわぁ……!」

 カリブの海が一望に開け、吹き上げる潮風が心地よく髪をなぶっていく。ストローハットが飛ばされないように反射的に頭をおさえたぞ。「キャ」なんて声上げちまって、その仕草が自分でも可愛くって――こんなのマユじゃねえ!――と戸惑っちまう。

「ウフ」

 ミファが笑いやがって、ますますオタつくぜ(#'∀'#)。

「う、うわー、すごいね、ここの眺め。100%の海だ( ゚Д゚)!」

 わざとビックリして誤魔化すんだけど、ほんとに感動してっから、ますますオタついちまう!

「晴れているときは絶景だけどね、海が荒れたときは、すごい風で、小さい子なんかは、とても通れたもんじゃないんだよ。この道をちょっと行ったとこの岬の先にサンチャゴじいちゃんの家があるの……ほら、あそこ」

 ミファが、道の先を指した。三百メートルほど先の岬にくすんだ小屋が見えた。

「お、ミファじゃないか」

 潮風に鍛えられた声が間近にして、二人は驚いて振り返った。驚いた拍子に、マユはストローハットを飛ばしてしちまった。

「いや、すまん驚かせてしまったな」

「町長さん!?」

「たまには、サンチャゴの様子を見ておこうと思ったんだけど、ミファ、行ってくれるところだったんだね」

「うん、ベアおばちゃんとこで時間くっちゃったけど」

「そっちのかわいい子は?」

「あ、従姉妹のマユ。休暇で訪ねに来てくれたの」

「そうかい。じゃ、わしが行くこともないな。よろしく頼むよ。マユちゃん、帽子すまなかったね」

「いいえ、たいしたもんじゃありませんから(^_^;)」

 よそ行きの言葉は口がムズムズするぜ。

「じゃ、わしは、これで。ちょっと日が高くなっちまったけど、漁にに出てみるよ」

「大きなカジキマグロでも釣れるといいね」

「ああ、サンチャゴにあやかってなあ」


 町長は、ベアおばちゃんと同じように、瞬間マユの顔を見つめて坂道をもどっていきやがった。


「ねえ、さっきも、そうだったけど、どうして従姉妹になっちまうんだ?」

「サンチャゴじいちゃんの家に着いたら話す……ああ、マユ( ゚Д゚)!」

「え……ああ(゚Д゚;) !」

 体が透け始めていやがる! 

 ミファの姿や景色もぼやけ始め、学校のトイレの個室が浮かんできた。だれかに魔法をかけられたとピンときたので、大急ぎで記憶を巻き戻した。

 ベアおばちゃんのカフェで飲んだソーダにアラームが点いていた。

――まだ時間がたっていない。間に合う――

 マユは、ソーダを飲むところまで戻ってみた。

「大人は世話をしないんですか?」

 マユがソーダを一口飲んで聞いた。一瞬目が光って、ベアが続けた。


 41章の、そこまで戻ると、こう変えた。


「みんなでお世話してるんですね」

 マユはソーダを飲もうとした手を止めてお愛想を言ったぞ。ベアは一瞬残念な目になって続けた。

 景色は、ほとんど学校のトイレの個室に戻っていた。

 手遅れかと思ったら、青いモヤを吐き出している便器の中から手が伸びてきた。とっさに手を掴むと、もとの坂道に戻された……握った手の主はミファだった。

「危ないところだったね」

「従姉妹じゃないってことバレてるみたいだな」

「ううん、半信半疑ってとこ。マユが、この世界の人間だったら、ソーダの魔法は効かないから」

「そうか、じゃ、まだしばらくは大丈夫だな」

「でも、ベアおばちゃんまで、あいつらの仲間だとは思わなかった」

「急ごう」

「うん」


 二人は、岬のサンチャゴじいちゃんの小屋をめざして足を速めたぞ……。 


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • 狼男
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  

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