銀河太平記・254
ええと……解説の続きっす。
読者の中には気づいてる人もいるかもっスけど、マーク船長のねぐらは、うちらの火星基地の裏側にあるっす。
うちらの基地を畳むときには「もう少し様子を見る」ってことで残ってたっす。
規模が小さいのと、大海賊アルルカンが退避した後ならかえって目立たないってことなんすけど、横着で面倒くさいからだと船長もヒンメルの乗員も思ってるっす。
うちらは、超宇宙戦艦ヒンメルを使って銀河系レベルで活躍する大宇宙海賊。言ってみりゃ巨大企業なんすけど、マーク船長はファルコンZってボ-トみたいな宇宙船で、チマチマと太陽系の中を走り回ってる零細企業。
その巨大企業のボスのアルルカンと零細企業のマーク船長は、表面はカタキ同士みたいなんすけど、根っこのところでは仲がいいっす。
だから、駆逐艦松のブリッジに隠れていて、姿を現した今も「き、貴様ぁ、ファルコンZのマーク船長(;・`д・´)!」とか言いながら嬉しそうに松のデッキに上がって行ったっす。
「いやぁ、ちょっと事故っちまってファルコン・Zオシャカにしちまってな。他に船もねえから、冥王星のコレクションの中に忍び込んでお待ち申し上げていたってわけだ」
「不埒なやつめ! でも、よく松に乗り込んだもんだなあ。冥王星のコレクションは300隻はあるぞ」
「あはは、長い付き合い、アルルカンの趣味と事情は分かってるさ。お前なら、きっと松竹梅を選ぶってな」
「いや、ほんとはナガトを持っていくつもりだったんだぞ」
「でも、ツナカンやアルミカンに反対されて、妥協の末に松竹梅。図星だったろう?」
アハハハハハ(ᵔᗜᵔ* )
「笑うなツナカン!」
「マーク船長、そっちのクルーはどうしたんすか?」
「ああ、竹と梅にな……」
船長が指差すと、竹のデッキにバルスのおっさん、梅のデッキにミナホとポチが出てきたっす。
「おお、みんな元気にしてるっすかぁ(^▽^)/」
思わずゲストのココちゃんたちと手を振ったっす!
『おーーい!』『元気かぁ!』『ワン!』
向こうも元気に手を振ってくれたっす!
「あらあ、でも、みなさん顔や服が汚れてぇ……」
ココちゃんが気づいて、うちらも、ちょっと気になったっす。
「ああ、密航してるだけじゃヒマなんでな、あっちこっち弄ってスペック上げといたんだ」
「ええ、わたしのコレクション触ったのか!?」
「映画の道具にされてた船だけど、レプリカのナガトと違って元々は現役の軍艦だ。触ってみたくもなるぜ……んな顔すんなよ」
「なんだか、自分の娘が好きにされたみたいだぞ」
「ちょ、マジで泣くなよ!」
「ググ、でも、マーク、なんでお前の服や手はきれいなまま……あ、そうか、いちばんオキニの松だけは触らなかったんだな!」
「いや、あいつらは興が乗っちまって、内火艇とかもいじってたからな」
『もう、ギンギンにチューンしました!』『ミナホもがんばりましたぁ!』『ワン!』
「ああ、目まいがぁ……」
「あ、船長!」
「アハハハ(≧ε≦*) 」
ショックのあまりガラにもなくよろめく船長、反射神経で介抱するココちゃん、爆笑の周温雷。殿下(森ノ宮親王)と胡蝶さんは、さすがに微笑むだけっす。
うちら乗組員は――ああ、またかあ――って感じなんすけど、これで挫ける船長じゃねえんす(^_^;)。
でも!
これ以上の話しは、このツナカンをもってしても心臓に悪いんで、この次にするっす(-_-;)。
☆彡この章の主な登場人物
- 大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
- 穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
- 緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
- 平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
- 加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
- 姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
- 扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
- 本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
- 胡蝶 小姓頭
- 児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
- 孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー
- テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
- 森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
- ヨイチ 児玉元帥の副官
- マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
- アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
- 氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
- 村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
- 主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
- 及川 軍平 西之島市市長
- 須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
- 劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
- 王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
- 胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
- 朱 元尚 大佐 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
- 扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
- カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
- グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
- 扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
- 西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
- パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
- 氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
- ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
- 奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟