せやさかい・392
春、夏、冬の三つの休みで一番ええのんは春休み。
気候はええし、宿題もないしねぇ~。
その春休みにはまだ間ぁがあるけど、春休みの予告編か体験版かという感じの麗らかな日曜の朝。
朝食と、後片付けの手伝い、本堂やらの掃除も早々と終わって部屋に戻る。
「ちょ、じゃま」
ニャ
ブタネコのダミアを跨いで、ベッドの上に寝転がる。
まあ、朝のルーチン終わって一休み……で、寝てしまう(^_^;)
「そうだったんだ!」
留美ちゃんの声で目が覚める。時計を見ると三十分過ぎてた。
「え……なにがそうだったん?」
「あ、ごめん、起こしちゃったね」
「ううん……なに調べてたん?」
留美ちゃんはパソコンで、なにやら調べてる最中。
留美ちゃんは、時間を大切にする子ぉで、ボンヤリとネットサーフィンとかはせえへん。
「ほら、『犬が西向きゃ尾は東』、先週は中盤までの総集編だったじゃない」
「ああ、せやったねえ、まあ、何回観ても面白いけど(^▽^)」
主役の井上香里奈のキャラ設定が、言うのも恥ずかしいけど、このあたし酒井さくらがモデルなんです(^_^;)
新年早々に真鈴先輩に元請けの江戸川アニメまで連れていかれて、監督やら作監さんやら声優の花園あやめさんやらに会って、面白いやら恥ずかしいやら(379・380『犬が西向きゃ尾は東』)を懐かしく思い出す。
放映の評判も上々で、前半のダイジェストみたいな総集編も、声優さんらのトークとか入ってて面白かった。
「これってさ、実は、進行が遅れて本番が間に合わなくって、苦肉の策らしいよ」
「え、なにそれ?」
「作画が間に合わなかったり監督が途中で悩んだりして納期が間に合わなくって、間に合わせの総集編なんだってよ」
「え、そうなん!?」
確かに、アニメは学校の宿題みたいに時間を掛けたらできるというもんとちゃう。
特に江戸川アニメは監督のこだわりがすごいとかで、リテイクになったり、制作を中断してあたしを呼んだり。素人のあたしが見ても、ちょっと危なっかしい。
監督の宗武真さんは、ドガチャガに見えてても、すごいこだわりのある芸術家なんやと思う。
「ええ!」
「どないしたん?」
「ちょっと、これ!」
スクロールしてた手を停めて画面を指さす留美ちゃん。
『犬が西向きゃ尾は東』制作中止か!? 『犬西東』打ち切り!? 監督逃亡!?
すごいスレッドが立ちまくってる!
「あっちゃあ……(@o@)」
フニャア
ダミアまでコタツに前脚かけてパソコンの画面を睨みよる。
「ちょっとヤバイよねぇ……」
その時、スマホがメール受信のシグナル。
「ちょ、どいて」
ブタネコを押しのけてスマホをとる。
―― これから行く、真鈴 ――
え、なに?
留美ちゃん+ダミアと顔を見交わしてると、山門の前で急停車する車の音。
窓から見ると、車を停めたまま山門に駆け込んできて、敷石にけつまずく二枚目半のおねえちゃん。
「え、真鈴先輩?」
ニャ?
直ぐに起き上がって、玄関に入ったかと思うと、伯母ちゃんと一言二言。
ダダダダ ドダダダ
ガラ!
襖が開いたかと思うと、髪を振り乱して肩で息してる真鈴先輩!
「これから、東京! いっしょに来て!」
有無を言わせぬ勢いで迫って来た!
☆・・主な登場人物・・☆
- 酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
- 酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
- 酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
- 酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
- 酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
- 酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
- 酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
- 榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
- 夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
- ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
- 月島さやか さくらの担任の先生
- 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
- 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
- 女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
- 江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)
- さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん)